ウェブアクセシビリティのガイドラインは、全てのユーザーが平等にウェブコンテンツにアクセスできるようにするための重要な基準です。しかし、これらのガイドラインに基づく取組が不十分である場合や、形だけの対応では、逆にアクセシビリティが低下してしまうことがあります。本記事では、ガイドラインに基づく取組が適切でない具体的な例とその改善点を解説します。
1. 形だけの支援機能の提供
問題の例
音声読み上げ機能や文字色変更機能を導入するだけで、アクセシビリティに対応したと考えているケースがあります。これらの機能は、アクセシビリティの一部を補助するものであり、サイト全体のアクセシビリティ要件を満たすものではありません。例えば、音声読み上げ機能があっても、コンテンツ自体の構造が分かりにくかったり、ナビゲーションが不適切であれば、ユーザーの負担は減りません。
改善方法
支援機能の導入だけに頼らず、HTMLのセマンティックなマークアップや適切なラベル付け、キーボード操作のサポートなど、基本的なアクセシビリティ対応を確実に行うことが必要です。ユーザーが支援機能に依存しなくても、自然にアクセスできるデザインを目指しましょう。
2. 一部コンテンツの代替テキスト不足
問題の例
重要な情報を含む画像には代替テキストを設定しているが、装飾画像やバナー広告など、視覚的に目立つが意味を持たない画像にも不適切な代替テキストが設定されていることがあります。これにより、スクリーンリーダーを使ったユーザーが不要な情報を聞かされることになり、ページの利用が煩雑になります。
改善方法
代替テキストは画像の内容や意図を正確に伝えるために使用し、装飾的な画像には空の代替テキスト(alt=""
)を設定するか、aria-hidden="true"
で隠すなどの対応を行い、情報の過剰な提供を防ぐことが重要です。
3. キーボード操作への対応不足
問題の例
ページの一部ではキーボード操作が可能であるものの、モーダルウィンドウやドロップダウンメニューなどのインタラクティブな要素はマウス操作しか対応していないケースです。これにより、キーボードのみで操作するユーザーは特定の機能にアクセスできなくなります。
改善方法
全てのインタラクティブな要素がキーボード操作に対応しているか確認し、タブキーでフォーカス移動が可能であること、エスケープキーでモーダルウィンドウを閉じることができるなどの基本操作をサポートすることが求められます。
4. コントラスト比が適切でない
問題の例
視覚的におしゃれであることを優先し、テキストと背景のコントラスト比が不足しているデザインが選ばれることがあります。例えば、薄いグレーの背景に白文字を使用するなど、視認性が低い組み合わせが多用されると、視覚障害や高齢者にとって非常に読みづらくなります。
改善方法
ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン(WCAG)の推奨するコントラスト比を遵守し、通常のテキストは少なくとも4.5:1、ラージテキストは3:1以上のコントラスト比を確保するようにデザインを調整することが重要です。
5. フォームのラベル付けが不十分
問題の例
フォームのデザインにおいて、プレースホルダーをラベルの代わりに使っている場合があります。プレースホルダーは入力中に消えてしまうため、スクリーンリーダーを利用するユーザーや認知障害を持つユーザーにとっては、入力内容の確認が難しくなることがあります。
改善方法
各フォーム要素には明示的なラベルを設定し、ユーザーがどの情報を入力すべきかが明確になるようにします。プレースホルダーは補助的な説明や例示として使用し、ラベルの代わりには使わないようにします。
6. 動画や音声コンテンツの字幕と説明不足
問題の例
動画や音声コンテンツに字幕や音声説明が提供されていない場合、聴覚障害を持つユーザーや音声を聞くことができない環境にいるユーザーにとっては、コンテンツの内容が全く伝わりません。
改善方法
動画には正確な字幕やキャプションを追加し、音声コンテンツにはテキストによる説明を提供するなど、全てのユーザーがコンテンツを理解できるような対応が必要です。また、手話通訳の提供や複数言語での字幕の用意も検討すると良いでしょう。
まとめ
ウェブアクセシビリティの取組が適切でない例は多岐にわたります。形だけの対応ではなく、実際に全てのユーザーにとって使いやすいウェブを目指すためには、ガイドラインに基づいた実践的な対応が求められます。支援機能の導入だけに頼らず、サイト全体の設計やコンテンツの見直しを行い、アクセシビリティの向上に取り組みましょう。
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