ウェブサイトの利用者は、多様なデバイスや支援技術を使い、さまざまな状況でコンテンツにアクセスしています。これらすべてのユーザーに対して、等しくコンテンツを利用できるようにするためには、「複数の手段」を提供することが重要です。複数の手段とは、ユーザーが情報にアクセスする際に、一つの方法に依存せず、複数の経路や操作方法を選べるようにする設計のことです。
本記事では、ウェブアクセシビリティにおける「複数の手段」の重要性と、その具体的な実践方法について解説します。
複数の手段を提供する理由
すべてのユーザーが同じ方法でウェブサイトを利用できるわけではありません。視覚障害、運動障害、聴覚障害など、さまざまな障害を持つ人々は、それぞれの状況に応じた異なる手段で情報にアクセスしています。複数の手段を提供することで、どのようなユーザーでもスムーズに目的の情報に到達でき、ストレスなくウェブサイトを利用できるようになります。
以下のユーザーにとって、複数の手段を提供することは特に重要です。
- 視覚障害を持つユーザー: スクリーンリーダーを使用することで、テキストを音声で読み上げる形で情報にアクセスしますが、視覚的に見えるだけの操作方法では十分ではありません。
- 運動障害を持つユーザー: マウスを使うことが難しい場合、キーボード操作や音声入力などの他の手段が求められます。
- 聴覚障害を持つユーザー: 音声を聞くことが難しいため、音声コンテンツに代わるテキストや字幕の提供が必要です。
- 高齢者: 動体視力や手の動きが低下している場合、直感的な操作やシンプルなUIが助けになります。
複数の手段を提供するための実践方法
ウェブアクセシビリティを考慮した設計では、ユーザーが異なる手段でコンテンツにアクセスできるようにするため、以下のような具体的な方法が推奨されます。
1. キーボード操作をサポートする
マウスが使えない場合でも、キーボードだけでウェブサイトを操作できるようにすることが基本です。すべてのインタラクティブ要素(リンク、ボタン、フォームなど)が、キーボードで操作可能であることを確認しましょう。タブキーでのフォーカス移動がスムーズであり、かつエスケープキーやエンターキーで操作できる設計が必要です。
良い例:
- ページ上の全てのボタンやリンクがタブキーでフォーカス可能であり、エンターキーでアクションが実行される。
悪い例:
- 一部のリンクやボタンが、マウスでしかクリックできない。
2. 音声入力やスクリーンリーダーを意識した設計
スクリーンリーダーを使っているユーザーにとって、リンクやボタンに対する明確なラベルがないと、何をクリックすれば良いかがわからなくなります。すべてのインタラクティブ要素には、テキストラベルや代替テキスト(alt属性)が適切に設定されている必要があります。また、音声入力を利用しているユーザーも、ラベルのある要素により正確な操作が可能になります。
良い例:
- ボタンに「送信」や「次へ」といったわかりやすいラベルが付けられている。
悪い例:
- 「ボタン」や「リンク」といった曖昧なラベルのみが設定されている。
3. 音声コンテンツにテキストを併記する
動画や音声のコンテンツを提供する場合、聴覚に障害のあるユーザーや、音声を聞くことができない環境のユーザーのために、テキストや字幕を併記することが重要です。これにより、情報の提供方法が一つに限定されることなく、多くのユーザーが同じ情報にアクセスできます。
良い例:
- 動画に字幕をつける。
- ポッドキャストや音声コンテンツにテキストによるトランスクリプトを用意する。
悪い例:
- 動画に字幕がなく、音声だけで情報が伝えられている。
4. ナビゲーションの複数の手段を提供する
ナビゲーションメニューだけでなく、ページ内リンクやパンくずリスト、サイトマップなど、複数の方法でページを移動できるようにすることが推奨されます。ユーザーが自身の操作しやすい手段を選べることで、サイト全体を快適に利用できます。
良い例:
- サイト内にパンくずリスト、メインメニュー、フッターメニューがあり、どこからでも簡単に目的のページへ移動できる。
悪い例:
- 一つのナビゲーションメニューしか存在せず、そのメニューがキーボード操作に対応していない。
複数の手段に関するアクセシビリティガイドライン
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.1の中でも、「複数の手段」に関する具体的な基準が設定されています。例えば、「2.1.1 キーボード」という基準では、キーボード操作だけでウェブサイトを利用できることが求められています。また、「1.2.2 字幕(音声コンテンツ)」では、動画や音声コンテンツに対して字幕やテキストによる説明を提供することが推奨されています。
これらの基準に従うことで、複数の手段を提供し、誰もが平等にウェブサイトにアクセスできる環境を整えることができます。
複数の手段をテストする方法
ウェブサイトに複数の手段が適切に提供されているかどうかを確認するためには、以下のテストが有効です。
- キーボード操作によるテスト: マウスを使わずに、キーボードだけでページを操作してみましょう。すべてのリンクやボタンがフォーカスされ、操作できることを確認します。
- スクリーンリーダーでのテスト: スクリーンリーダーを使って、リンクやボタンのラベルが正しく読み上げられ、内容がわかりやすいかを確認します。
- 字幕や代替テキストの確認: 動画や音声コンテンツに対して、正しく字幕や代替テキストが提供されているかを確認します。
これらのテストを行うことで、複数の手段が適切に提供されているかどうかを判断し、必要な改善を施すことが可能です。
結論
「複数の手段」を提供することは、ウェブアクセシビリティを向上させるために非常に重要な要素です。異なる方法でコンテンツにアクセスできるようにすることで、すべてのユーザーに対して平等な情報提供が実現されます。特に、キーボード操作、スクリーンリーダーの対応、音声コンテンツへのテキストサポート、そしてナビゲーションの多様性を確保することが、アクセシビリティを高めるための具体的な手段となります。
すべてのユーザーが快適に利用できるウェブサイトを目指して、複数の手段を提供する設計を意識しましょう。
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