IT業界での適職ガイド 2025
IT業界における職種を探求します。
いまは「AI前提のIT」。開発・運用・データ・セキュリティ・プロダクトの各職種がAIとクラウドを前提に再定義され、人材の“向き不向き”も変わりつつあります。本記事は、2025年の最新動向を踏まえつつ、あなたの適職を見つけるための地図とコンパスを提供します。
3つの要点(TL;DR)
- AI×クラウドの素養は多くの職種で“リテラシー”として必須に。求人票にもAI活用スキルを示す企業が増えています。
- 急伸領域はAIエンジニア/AIコンサル、プラットフォームエンジニア、セキュリティ、クラウド最適化(FinOps)など。
- 言語・ツール選びは“流行”より“目的”。とはいえPythonやJavaScriptなどの基礎は依然強く、AI・自動化との親和性も高いです。
IT職種マップ(2025年版)
つくる(Build)
- ソフトウェアエンジニア / フロントエンド / モバイル / ゲーム
- AIアプリケーションエンジニア(LLM活用・エージェント実装・評価運用)
- データエンジニア / MLOps / LLMOps(パイプライン・Feature/Prompt管理)
ささえる(Run)
- プラットフォームエンジニア / SRE(開発体験・IDP・自動化)
- クラウドエンジニア / インフラ(Kubernetes / IaC / ネットワーク)
- FinOps(コスト最適化・効率改善・ガバナンス)
まもる(Protect)
- セキュリティエンジニア / クラウドセキュリティ / セキュリティアナリスト
- プライバシー / AIガバナンス / セキュリティアーキテクト
とどける(Deliver)
- プロダクトマネージャー(GenAI機能の企画・価値検証)
- データアナリスト / BI / データプロダクトマネージャー
- DevRel / テクニカルライター / ソリューションアーキテクト
参考:日本の**共通キャリア/スキルフレームワーク(CCSF)**は、職種とスキルの棚卸しに有用です。
2025年「伸びる」領域と根拠
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AIエンジニア/AIコンサル
LinkedInの「Jobs on the Rise 2025」分析で、AI関連職が最上位。実務現場でもAI活用前提の職務設計が進展。 -
プラットフォームエンジニアリング(IDP)
DORA 2024は、開発者体験を高める内製プラットフォームの効果と課題を整理。大規模組織を中心に浸透が進む。 -
クラウド&Kubernetes基盤
CNCF 2024調査ではKubernetes採用が企業で広範に普及。運用最適化やデータ管理の課題とともに専門職の需要が継続。 -
FinOps(クラウドコスト最適化)
2024年は「無駄削減」や予約・コミットの管理が最優先テーマに。生成AI導入に伴うコスト管理の重要性も上昇。 -
セキュリティ/AIセキュリティ
生成AI・自動化の普及で攻撃面が拡大、対策人材の需給ギャップが継続。
技術基盤の最新トレンド(短観)
- 言語人気の地殻変動:GitHub OctoverseではAI波によりPythonが存在感を強め、AI関連プロジェクトが急増。Stack OverflowでもJS/Pythonは依然主流。
- 開発のAI化:生成AIは“置き換え”ではなく生産性向上が中心。経営・現場の双方でAI活用が前提化。
自己診断:興味×強みのクイックマップ
- 抽象→具体が得意/仕組み化が好き:プラットフォームエンジニア、SRE、アーキテクト、MLOps/LLMOps
- ユーザー理解と価値検証が好き:プロダクトマネージャー、AIアプリケーションエンジニア、データアナリスト
- 守りと規律が得意:セキュリティ、クラウドセキュリティ、AIガバナンス、リスク管理
- 実装で価値を最短に出したい:フロントエンド/バックエンド、モバイル、ソリューションアーキテクト
代表職種のリアル(仕事像・向き・入口スキル・最初の90日)
AIアプリケーションエンジニア(LLM活用)
- 仕事像:既存業務やUIにLLM/エージェントを組み込み、品質(幻覚、セキュリティ、コスト)を運用で担保。
- 向き:実験→評価→改善の短サイクルが得意/ユーザー価値志向。
- 入口スキル:Python or JS/TS、API設計、プロンプト・評価(RAG、ガードレール、観測)。
- 最初の90日:
- 0–30日:小さな社内業務を自動化(例:FAQ応答・レポート生成)。
- 31–60日:コスト・品質メトリクス(回答率、検証工数、推論費用)を可視化。
- 61–90日:評価基盤とA/Bを整備、PoC→運用に昇格。
プラットフォームエンジニア(IDP)
- 仕事像:開発者が「自分で安全に素早く」デプロイできる足場を作る(テンプレ、CI/CD、権限、自動化)。
- 向き:開発者体験(DX)にこだわり、業務全体をデザインできる。
- 入口スキル:Kubernetes/IaC、CI/CD、観測、ポリシー、SLO。
- 最初の90日:バックログ整理→パスの標準化→セルフサービス化(テンプレート&ガードレール)。
セキュリティエンジニア(クラウド/AI)
- 仕事像:クラウド権限、シークレット、データ流通、AIガバナンスを横断で管理。
- 向き:ルール設計と現実解のバランス感覚。
- 入口スキル:CSPM/CWPP、脆弱性診断、ログ分析、AIモデルのリスク評価。
- 最初の90日:重要資産の可視化→最小権限・鍵管理→ランブック化。
データエンジニア / MLOps・LLMOps
- 仕事像:データ収集→前処理→Feature/Prompt管理→デプロイ→監視のライフサイクルを整備。
- 向き:地道な品質改善と自動化が好き。
- 入口スキル:SQL、Python、パイプライン、評価・モニタリング、データ契約。
- 最初の90日:スキーマ・品質ルール→再現性(パイプライン)→本番監視。
FinOps(クラウドコスト最適化)
- 仕事像:コスト可視化、無駄削減、コミット管理、単価×効率の最適点を設計。
- 向き:数字に強く、交渉・合意形成が得意。
- 入口スキル:クラウド料金体系、タグ/アカウンティング、ダッシュボード、予約/セービングプラン。
- 最初の90日:タグ整備→高コストワークロードの是正→予算予測。
スキルの土台:何から始める?
- プログラミング:Python or JavaScript/TypeScriptのどちらか+基本的なテスト・自動化。
- クラウド基礎:Linux・ネットワーク・HTTP・Git・CI/CD・IaC(Terraformなど)。
- AIリテラシー:生成AIツールの活用、プロンプト設計、出力検証の型化(ファクトチェック、評価指標)。求人側もAI活用をスキルとして重視。
- コミュニケーション:要件定義、ユーザーストーリー、ドキュメンテーション。
30-60-90日キャリア計画(転職/社内異動)
- 0–30日:市場リサーチ→狙う職種を1–2つに絞る(職務記述書から“Must/Good to have”を抽出)。
- 31–60日:実務の縮図を作る(小さなAI/クラウド案件・K8s環境・コスト改善・SLO導入など)。計測とふりかえりをセットに。
- 61–90日:成果物を公開可能なポートフォリオに整理(アーキ図、指標、意思決定理由)。面談では“Before/After”で語る。
ポートフォリオ課題アイデア(職種別)
- AIアプリ:RAG+評価ダッシュボード(回答率・幻覚率・推論コスト)
- プラットフォーム:テンプレから本番までの“ゴールデンパス”をコード化(IaC+CI/CD+ポリシー)
- セキュリティ:最小権限設計+誤設定検出の自動化(ツール比較も)
- データ/LLMOps:データ契約→Feature/Prompt管理→モデル監視までの一貫パイプライン
- FinOps:タグポリシー→可視化→予約管理→節約効果の定量化
学びの進め方(最短距離)
- 求人票ドリブン:応募したい職種の10件をスクレイピングする気持ちで分析→共通キーワードを学習計画へ。
- 実務の写経:業界の事例(DORA/CNCF/Octoverse)から“使われている技術”を真似して動かす。
- 継続の仕組み化:毎週のふりかえり(何を作ったか→指標→次の改善)。
まとめ
- 適職は“役割×環境×伸びしろ”の交点にあります。AIとクラウドの時代、職種の境界は溶けつつも“価値を早く安全に届ける”という本質は不変。
- まずは小さく作って測る。その反復が、どの職種でも最大の差になります。
主要参考:Stack Overflow Developer Survey 2024、GitHub Octoverse 2024、DORA 2024、CNCF Annual Survey 2024、FinOps Foundation Insights、各種ニュース・調査(本文中に出典記載)。