psycopg2とasyncpgの違い
PythonでPostgreSQLデータベースを操作する際によく利用されるライブラリに、psycopg2とasyncpgがあります。
これら2つのライブラリはどちらもPostgreSQLと接続して操作するためのツールですが、設計思想や用途に違いがあります。
本記事では、それぞれのメリット・デメリット、速度、トランザクションの考え方などを比較して解説します。
1. psycopg2の概要
特徴
- psycopg2は、Python用のPostgreSQLデータベースアダプターとして広く使われており、長い歴史と高い安定性を誇ります。
- **同期型(blocking I/O)**の操作が基本で、スレッドを使用して複数のクエリを並行処理します。
メリット
- 安定性
- 長い歴史があり、実績が豊富。
- PostgreSQLの機能に幅広く対応している。
- エコシステムとの相性
- DjangoやSQLAlchemyなどの主要なPythonフレームワークでデフォルト対応。
- トランザクション管理
- 接続ごとにトランザクションが自動で管理され、
commit()
やrollback()
を手動で実行可能。
- 接続ごとにトランザクションが自動で管理され、
デメリット
- 非同期処理に非対応
- 標準版では非同期I/Oが利用できないため、高負荷なアプリケーションには不向き。
- 非同期対応の
psycopg3
(ベータ版)が開発中。
- 並行処理の制限
- スレッドを用いるため、大量の同時接続が必要な場合はパフォーマンスが低下することがある。
2. asyncpgの概要
特徴
- asyncpgは、Python用に設計された非同期PostgreSQLクライアントライブラリで、asyncioに基づいて動作します。
- 高速かつ軽量で、特に非同期アプリケーション(例: FastAPIやSanicなど)との組み合わせで真価を発揮します。
メリット
- 非同期処理の対応
- asyncioを活用した完全な非同期設計により、大量の接続を効率的に処理可能。
- 高パフォーマンス
- 非同期型I/Oに最適化されており、psycopg2よりもクエリ速度が速い場合が多い。
- 軽量な設計
- クライアント側でのオーバーヘッドを最小限に抑える設計。
デメリット
- フレームワークのサポート状況
- psycopg2ほど広範なサポートを受けていない(ただし、FastAPIやTortoise ORMとの相性が良い)。
- トランザクション管理の手動操作
- トランザクションの管理をコード内で明示的に行う必要があり、手間がかかる場合がある。
- 学習コスト
- asyncioの知識が必須となるため、非同期プログラミングに慣れていない場合は学習コストが発生する。
3. パフォーマンス比較
速度
- asyncpgは、非同期設計に特化しており、シングルスレッドで数千の同時接続を処理する場合に優れたパフォーマンスを発揮します。
- psycopg2は、シンプルな同期クエリの実行では十分な速度を持つものの、スレッド数の増加によるパフォーマンス低下が避けられません。
ライブラリ | 同時接続数が少ない場合 | 同時接続数が多い場合 |
---|---|---|
psycopg2 | 高速 | パフォーマンス低下 |
asyncpg | 高速 | 非同期処理で高い性能 |
4. トランザクションの考え方
psycopg2の場合
- トランザクションはデフォルトで「自動コミットなし」の状態です。
- 明示的に
conn.commit()
やconn.rollback()
を呼び出す必要があります。 - 自動コミットモードを有効にすることも可能です(
conn.autocommit = True
)。
import psycopg2
conn = psycopg2.connect(dsn)
try:
with conn.cursor() as cur:
cur.execute("INSERT INTO table (col) VALUES (%s)", (value,))
conn.commit()
except Exception:
conn.rollback()
finally:
conn.close()
asyncpgの場合
- トランザクションは手動で開始し、明示的にコミットまたはロールバックを行う必要があります。
- コンテキストマネージャーを使って簡潔に記述可能。
import asyncpg
import asyncio
async def main():
conn = await asyncpg.connect(dsn)
try:
async with conn.transaction():
await conn.execute("INSERT INTO table (col) VALUES ($1)", value)
finally:
await conn.close()
asyncio.run(main())
5. 適切な選択の基準
psycopg2を選ぶべき場合
- 既存フレームワーク(例: Django, Flask, SQLAlchemy)を使用している場合。
- 同時接続数が少なく、主に同期的な処理を行うアプリケーションの場合。
- 非同期プログラミングの知識が不要な環境で迅速に開発したい場合。
asyncpgを選ぶべき場合
- 非同期アプリケーション(例: FastAPI, Sanic)を開発している場合。
- 大量の同時接続が必要なリアルタイム性の高いシステムを構築する場合。
- クエリ速度を最大限に高めたい場合。
まとめ
- psycopg2は、同期処理と安定性を重視した従来型のデータベースアダプターで、多くのフレームワークで標準的に利用されています。非同期が不要な環境では依然として有力な選択肢です。
- asyncpgは、非同期処理と高いパフォーマンスを提供する新しい選択肢で、特に大量接続が必要な非同期システムに向いています。
システムの要件に応じて、両者を適切に選択し、高性能なアプリケーションを構築してください。