symbol of european union on banknote
Photo by Photo By: Kaboompics.com on Pexels.com

欧州アクセシビリティ法(EAA)の免除規定(例外)を徹底解説:対象カテゴリと手続きガイド

1. はじめに

欧州アクセシビリティ法(EAA)では、EU域内で販売・提供される製品・サービスに対し、障がいのある方を含む全ての消費者が利用可能となるようアクセシビリティ要件を義務付けています。一方で、すべての事業者・製品を一律にカバーすると過度な負担となる場合があるため、いくつかの免除(例外)が規定されています。本記事では、EAAの例外規定について以下の点を詳しく解説します。

  1. 免除規定の法的根拠
  2. 主な免除カテゴリと要件
  3. 免除を適用する手続き・証明方法
  4. 日本企業が押さえるべきポイント

2. 免除規定の法的根拠

EAA指令(Directive (EU) 2019/882)第14条「Exceptions and Limitations」において、以下の例外が定められています。

  • (a) 不当な負担(Disproportionate burden)
  • (b) マイクロエンタープライズ(Microenterprises)
  • © 特定個人向けのカスタム製品・サービス(Bespoke solutions)
  • (d) 機密保持上の制約
  • (e) その他、指令適用外とされる製品・サービス

3. 主な免除カテゴリと要件

3.1. マイクロエンタープライズ(Microenterprises)

  • 定義:従業員数が10人未満、かつ年商または貸借対照表合計が200万ユーロ未満の事業者
  • 適用:製品・サービス提供者全体ではなく、その事業者単独で免除を受けられる
  • 手続き:自己宣言で適用可 :contentReference[oaicite:0]{index=0}

ポイント:法的には免除対象ですが、「社会的責任」と「将来の市場展開」を見据え、可能な範囲でアクセシビリティ対応を検討することが推奨されます。

3.2. 不当な負担(Disproportionate burden)

  • 趣旨:対応に過度なコスト/技術的負担が発生し、製品・サービスの性質を根本的に変えてしまう場合
  • 要件
    1. 負担の大きさ(費用・時間)
    2. 事業者の規模・資源
    3. 対象製品・サービスの性質・ライフサイクル
  • 証明:事前に費用見積もり技術的検証レポートを作成し、監督当局へ説明可能な形で保管 :contentReference[oaicite:1]{index=1}

注意:単なる「面倒だから」という理由では認められません。具体的なコスト試算と、代替策検討の記録が不可欠です。

3.3. カスタム製品・サービス(Bespoke solutions)

  • 定義特定の個人または障がいのある利用者向けにカスタム開発された製品・サービス
  • 適用:個別契約や特注品として提供される場合、一般公開版とは別扱いで免除対象
  • 留意点:あくまで個別の1対1提供に限られ、広く販売・提供される版は要件適用 :contentReference[oaicite:2]{index=2}

3.4. 機密保持上の制約

  • 対象:国家安全保障や極秘プロジェクトなど、公開が制限される情報を含む製品・サービス
  • 概要:アクセシビリティ仕様の一部を開示できない場合に限り、例外的に適用可能

3.5. 適用外となる製品・サービス

  • 指令の付属書等でそもそもEAAの対象範囲外とされるカテゴリ(例:完全オフラインの物理製品、非電子的サービスなど)

4. 免除適用の手続きと証明方法

手続き マイクロエンタープライズ 不当な負担 カスタム製品
自己宣言 × ×
ドキュメント要件 企業規模の証明 費用見積・技術レポート 契約書・仕様書
公的機関への事前届出・承認 不要 推奨(保管) 推奨(保管)
定期的な再確認 不要 必要 必要
  1. 自己宣言:マイクロエンタープライズは、自社のステータスを社内規定や公開ポリシーで宣言。
  2. 証明書類の保管:不当な負担やカスタム製品の例外適用には、内部監査で提出可能なドキュメントを整備。
  3. 監督機関対応:国ごとに設置されるEAA監督当局からの要請に応じ、資料を提出できる体制を構築。

5. 日本企業が押さえるべき対応ポイント

  1. 事業規模の確認
    • 従業員数・年商を把握し、マイクロエンタープライズの免除可否を判断。
  2. コスト試算と技術検証
    • アクセシビリティ改修コストを見積もり、「不当な負担」と言えるか評価。
  3. 個別提供製品の整理
    • カスタム品の範囲を明確化し、一般提供版との区分管理。
  4. 内部規定・ポリシー整備
    • 例外適用条件や手続きフローを社内規定に明記し、コンプライアンス文書として保管。
  5. 情報公開と透明性
    • EU向けWebサイトや製品ドキュメントで、アクセシビリティ適合状況および適用例外を明示。

まとめ

  • EAAはアクセシビリティの統一基準を求めつつも、事業者や製品の実態に応じた例外規定を設けています。
  • マイクロエンタープライズ不当な負担カスタム製品機密保持など、主要な免除カテゴリを理解し、適切な手続きと証明を整備しましょう。
  • 日本企業は、EU進出・製品提供の前に免除要件の確認・ドキュメント化・社内規定化を行い、リスクを低減するとともにインクルーシブな社会への貢献を目指してください。
*参考:Directive (EU) 2019/882 Article 14 (Exceptions and Limitations)*  

投稿者 greeden

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)