2024年改正の日本法と2025年6月施行のEUアクセシビリティ法(EAA)をわかりやすく解説
概要サマリー
- 【日本】2024年4月1日施行の障害者差別解消法改正による「合理的配慮義務化」のポイント
- 【EU】EUアクセシビリティ法(EAA)が2025年6月28日に施行、対象範囲と遵守要件
- 両者の狙いと影響:デジタル包摂を通じた社会的責任の強化
- 具体的対応ステップと、事業者が押さえるべき留意点
1. 日本:障害者差別解消法改正(2024年4月1日施行)の要点
2024年4月1日より、これまで「努力義務」とされていた民間事業者への合理的配慮の提供が、法律上の「義務」として明確化されました。Webサイトやスマホアプリも対象となり、視覚障害者向けの代替テキスト提供や、キーボード操作への対応など、具体的なアクセシビリティ確保が求められます。行政指導だけでなく、改善を命じる差別是正命令や公表措置の可能性もあるため、早めの対応が不可欠です。
- 合理的配慮義務化:民間事業者も対象
- 対象範囲:Web・アプリを含むすべてのサービス提供者
- 違反リスク:差別是正命令、公表措置、企業ブランドへの影響
2. EU:European Accessibility Act(EAA)の全体像と2025年6月28日施行
EUアクセシビリティ法(EAA)は、Directive (EU) 2019/882として採択され、加盟国は国内法化を完了しました。そのうえで、2025年6月28日以降、市場に投入・提供される製品やサービスはすべてアクセシビリティ要件を満たす必要があります。
- 施行日:2025年6月28日
- 対象製品・サービス:パソコン・スマホなどのハードウェアから、ECサイトや銀行オンラインサービス、eラーニングまで幅広く適用
- 適用除外:従業員10名未満かつ年間売上200万ユーロ未満のマイクロ企業
- 主な要件:
- ウェブ・アプリはWCAG 2.1 AAレベル準拠
- ユーザーマニュアルに支援情報を記載
- 障がい者向けのカスタマーサポート窓口整備
- 罰則・監視:各国監督当局による調査・報告義務、違反時は罰金や販売禁止措置
3. 両者に共通する狙いと事業者への示唆
日本・EUいずれも「デジタルで誰一人取り残さない社会」を目指し、法制度によってアクセシビリティを義務化しています。単なる法令遵守にとどまらず、社会的責任(CSR)の一環としてブランド価値向上やリスクマネジメントにもつながります。
- インクルーシブな社会実現:情報格差の是正
- CSR・ブランド価値:社会貢献としてステークホルダーからの信頼獲得
- リスク低減:訴訟リスクや市場機会損失を回避
4. 具体的対応ステップ
- 現状分析
- 自社Webサイト・アプリを自動ツールと手動チェックで評価
- ギャップ分析
- WCAG 2.1 AAおよびEAA要件との不足点を洗い出し
- 改善計画策定
- 優先度を設定し、担当者・スケジュールを明確化
- 実装・検証
- コントラスト調整、ARIA属性追加、代替テキスト整備などを実施
- 社内外への周知
- アクセシビリティ方針を社内ポリシー化し、ステークホルダーにも公開
- 継続的改善
- 定期モニタリングとユーザーフィードバックでPDCAを回す
5. 誰に、どんな効果があるのか
- 経営層/CSR担当者:法令遵守とブランド向上を同時に実現し、投資対効果を最大化
- Webディレクター・PM:開発プロセスにアクセシビリティ基準を組み込み、手戻りを削減
- UI/UXデザイナー:インクルーシブ設計の知見を深め、多様なユーザーに寄り添ったデザインが可能に
- フロントエンドエンジニア:実装ガイドラインとテストフローを整備し、品質と生産性を向上
- エンドユーザー(障がい者・高齢者含む):快適で平等なデジタル体験を享受
6. アクセシビリティレベルと対象読者
- アクセシビリティレベル:WCAG 2.1 AA準拠以上を基本とし、可能であればAAAレベルまで目指す
- 対象読者:経営層、CSR担当者、Webディレクター、UI/UXデザイナー、フロントエンドエンジニア、QA/テスター
7. まとめ:持続可能な成長と社会的責任の両立
2024年4月に日本で合理的配慮が義務化され、2025年6月にはEU全域でEAAが施行されます。いずれも「デジタル包摂」を推進し、誰もが平等に情報へアクセスできる社会を目指すものです。事業者は法改正を機に、アクセシビリティを戦略的に組み込むことで、法令遵守と社会貢献、ビジネス成果を同時に実現しましょう。