オーストラリア:AI生成による児童性的虐待素材(CSAM)の急増を受けた緊急フォーラム開催の背景と目的
2025年7月14日、キャンベラにて「AI生成による児童性的虐待素材(CSAM)の急増を受けた緊急ラウンドテーブル」が開催されました。主催はオーストラリア国家児童委員会で、以下のような目的で実施されています :
- 現状把握と被害動向の共有
2024年の報告件数が前年から1,325%増の67,000件超に達したという米国Missing and Exploited Children Centerのデータを基に、最新技術を悪用した深刻化の実態を議論。 - 技術的・制度的対策の検討
プラットフォーム事業者との連携やAI検出技術の標準化、法整備の方向性を模索。 - 国際的枠組みの構築
オーストラリア・オブ・ザ・イヤー受賞者グレース・テイム氏、eSafety Commissioner、Bravehearts、Childlight Australiaなど国内外の専門家が集結し、グローバルリーダーシップの確立を目指す。
主要国の対応状況
欧州連合(EU)
- AI ActへのCSAM条項追加
欧州議会は、AI生成CSAMの包括的禁止と、すべての生成ツール・マニュアルの所持・配布を犯罪化する法改正を支持。個人使用の例外を認めない厳格化がトリローグでの最終協議段階にあります 。
英国
- 厳罰化と予防措置の強化
Internet Watch Foundation(IWF)は、2025年前半に検証された1,286本のAI生成CSAM動画の急増を報告。英国政府はAIツールの所持・制作・配布を最大懲役5年の罪に問う法案を成立させました 。
アメリカ合衆国
- 州レベルでの法整備の動き
連邦法は未整備のままですが、少なくとも45州で550件を超えるAI関連法案が提出済み。公共安全やプライバシー保護を目的とした規制強化が中心で、連邦統一基準の必要性が高まっています 。
その他の動き
- カナダ
2025年春に「オンライン児童保護強化法(仮称)」を閣議決定。AI生成CSAM防止を重点テーマに掲げ、通信事業者への検出義務付けを検討中。 - 日本
総務省・e-Govが合同でプラットフォーム事業者向けガイドラインを改訂。AI悪用を含むCSAM検出要件を明記し、違反時の行政制裁(最大罰金5,000万円)を強化。
今後の課題
- 技術進化への追随
AIモデルの高速進化に合わせた検出アルゴリズムとプラットフォーム側の実装体制整備。 - 法的・国際協調
各国間の法体系の違いを越えた情報共有と共同捜査メカニズムの確立。 - 被害者支援
被害画像の流通防止だけでなく、トラウマケアやリハビリテーション体制の拡充。