【実務特化】SEOが“確実に”上がるウェブアクセシビリティ8施策と、放置時の法的リスク大全(2025年版)
先に要点(インバーテッド・ピラミッド)
- **Mozの最新解説(中編)**は、検索順位に直結する8施策を具体例つきで提示:①代替テキスト、②色コントラスト、③説明的アンカー、④ARIAの最小適用、⑤見出し・ランドマーク、⑥キーボードとフォーカス、⑦字幕・文字起こし、⑧フォームとエラーメッセージ。**どれも“人にやさしい=検索に伝わる構造”**を増やす施策です。
- 法的リスクは無視できません。EUではEAA(欧州アクセシビリティ法)が2025年6月28日から適用、加盟国は罰則を含む執行体制を整備。日本では2024年4月から民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務となりました。公的サイトはJIS X 8341-3準拠の表明・試験公開が定着しています。
- 最短90分で効かせるなら、主要テンプレのコントラスト修正→alt総点検→リンク文言の差し替え→動画の字幕→見出し階層の整理の5手。離脱率・インデックスの理解・画像検索流入が同時に良くなります。
- 本稿の対象:B2Bの資料DL型サイト、ECの商品詳細、採用/学校/医療/自治体、そして法規制対象になりやすいEU市場向けサイト。SEO×法令順守×ユーザー体験を一気通貫で高めたい方向けに現場でそのまま使えるサンプルを添えました。
1|なぜ“アクセシブル=SEOに強い”のか?——テキストと構造が増えるから
アクセシビリティの多くは、情報の“共有テキスト化”(=人にも機械にも意味が伝わる形に整えること)に集約されます。画像・動画・UI操作の“意味”を代替テキストや説明的リンク、見出しの階層で明示すると、スクリーンリーダーが正しく読み上げられるのと同時に、検索エンジンにも文脈シグナルが渡ります。Mozの中編記事は、SEOに直接効く具体的な8施策を示し、“人の使いやすさ”が“検索の理解しやすさ”に重なることを強調しています。
重要なのは“構造化”の徹底です。見出し(h1–h6
)で論旨を段階化し、<main>
や<nav>
のランドマークで領域の意味を定義、説明的なアンカーで文脈を補う。これらはSEOのインデックス品質(理解・再現性)を底上げし、回遊・滞在にも効きます。
2|8つの施策(1〜4):Mozの中編が推す“まず直すべき”核
施策1:画像の**代替テキスト(alt)**を“目的で書く”
- 画像の役割や意図を短く具体に。装飾は**空alt(
alt=""
)**で読み飛ばし。 - Mozは**「自然で説明的に」「句点で区切りを明示」**といった実践的コツまで触れています(句点は読み上げのポーズに有効)。
良い例
<img src="golden-retriever-fetch.jpg"
alt="公園でボールを追うゴールデンレトリーバー。">
悪い例:alt="犬 画像 可愛い"
(羅列・目的不明)
施策2:色コントラストで“読める”を担保
- テキストと背景のコントラストはAAで4.5:1以上(大きな文字は3:1以上)。読めることは離脱抑制に直結し、結果としてSEOにも良い間接効果をもたらします。
CSSメモ:ブランドカラーは装飾に回し、本文・見出し・リンクはアクセシブルな基調色で固定。
施策3:説明的なアンカーテキストにする
- 「こちら」「もっと読む」卒業。行き先・行為・成果がリンク文そのもので伝わると、支援技術のリンク一覧でも理解しやすく、検索クローラにも文脈が届きます。
書き換え例
- NG:こちら → OK:SEO戦略の立て方(基礎編)を読む
- NG:PDF → OK:2025年度 料金表(PDF, 1.2MB)
施策4:ARIAは“最小で、確実に”
aria-label
やaria-live
でUIの意味や更新を伝える。ただし過剰指定は逆効果。ネイティブHTMLの意味付けを優先し、必要最小限のARIAで補強します。Moz中編は**「Xだけのボタン」にはaria-label
で役割を明示**する例を示しています。
例
<button aria-label="メニューを閉じる" onclick="closeMenu()">×</button>
3|8つの施策(5〜8):構造・操作・メディア・入力まで“仕上げる”
施策5:見出し階層とランドマークで論旨と領域を伝える
h1→h2→h3…
の順序を厳守。見出しは文章の要約に。- ページの構造は
<header><nav><main><aside><footer>
のランドマークで明示。読み上げの見出し一覧や領域ジャンプが快適になり、検索にも章立てが明快になります。
サンプル
<nav aria-label="主要ナビゲーション">…</nav>
<main id="content">
<h1>製品サポート</h1>
<section aria-labelledby="faq">
<h2 id="faq">よくある質問</h2>
…
</section>
</main>
施策6:キーボード操作とフォーカスの可視化
- すべての主要動線をTab/Shift+Tabで移動可能に。
- フォーカス指標(太めのアウトライン・コントラスト十分)を設け、フォーカスが画面外に隠れないように。WCAG 2.2は**“Focus Not Obscured/Focus Appearance”**を新設・強化しました。
CSS例
:focus-visible {
outline: 3px solid #005fcc; /* 背景と十分なコントラスト */
outline-offset: 3px;
}
施策7:字幕・文字起こしと自動再生の制御
- 動画・音声は**
<track kind="captions">
**で字幕を提供。要点見出し付きの文字起こしにすると、検索クローラが内容を理解しやすくなります。 - 自動再生・点滅コンテンツには一時停止/停止/非表示の手段を。集中阻害や発作誘発の回避は、ユーザー体験と評価指標に好影響です。
例
<video controls>
<source src="intro.mp4" type="video/mp4">
<track kind="captions" src="intro_ja.vtt" srclang="ja" label="日本語字幕" default>
</video>
施策8:フォームとエラーメッセージの明瞭化
- 各入力に明示ラベル、必須はプログラム的に伝える(
aria-required="true"
など)。 - エラーは箇所・理由・修正法をテキストで示し、キーボードでエラー先へ移動できるようにします。これにより完了率が上がり、商用KPIとSEO間接効果(離脱抑制)に効きます。
4|“90分の改善”チェックリスト:最小労力で最大効果を狙う
- 本文・見出し・リンクのコントラストをAA相当に修正(4.5:1以上)。WebAIM等のチェッカーで色を決め、ブランド色は装飾へ。
- alt総点検:商品一覧・バナー・サムネの目的ベース記述へ。装飾は空alt。
- リンク文言の置換:「こちら」掃除→行き先と動作が伝わる文へ。
- 動画の字幕と停止手段を追加。
- 見出し階層・ランドマークを正しく付与。
<main>
は1ページ1つが基本。
この“5手”だけでも、直帰率・滞在・CVRに改善が生まれ、検索の理解も安定します。
5|法的リスクと順守ポイント:EU/EAAと日本法の“いま”
-
EU:European Accessibility Act(EAA)
2019年採択→2025年6月28日適用。民間の多くの製品・サービスが対象で、加盟国が罰則や執行の体制を整えます。越境提供やECサイトは準拠設計を前提に。 -
日本:障害者差別解消法(改正)
2024年4月1日から、民間事業者にも**「合理的配慮の提供」が義務化**。店舗・サービス・ウェブ接点で相手方の困難を具体的に軽減する対応が求められます。情報の提供方法(字幕・代替手段・操作代替)を含みます。 -
JIS X 8341-3:2016(国内実務の標準)
中央省庁・自治体を中心に準拠表明・試験結果の公開が常態化。厚労省・デジタル庁の公表例が参考になります。プロジェクトでは**「対象範囲」「達成レベル(AA推奨)」「試験ページ」「結果」を明示して再現性**を担保しましょう。
要点:EU向けEC/アプリはEAA、国内の官公庁/自治体/公共性の高い組織はJIS準拠が実務必須。民間全般も合理的配慮を制度として実装へ。**“アクセシビリティ=法令対応”**の側面を、ガイドラインと監査手順にまで落とし込むことが求められます。
6|読者別“効きどころ”とKPI(とても具体的に)
-
B2B資料DLサイト:
代替テキスト+説明的アンカー→資料名と価値が明確になりDL率が上がる。字幕つき導入動画→意思決定者の滞在が延びる。KPIはDL完遂率/文書回遊/指名外流入。 -
EC商品詳細:
altで色・質感・用途を簡潔に。背景差替え動画に字幕を。フォームのエラー明示で購入完遂率が向上。KPIは画像検索流入/カート放棄率/返品理由のテキスト分析。 -
採用/教育/医療/自治体:
見出し階層/ランドマークで情報探索コストを下げ、キーボード操作とフォーカス可視で誰でも申請・予約が可能に。JIS準拠の表明は監査性・信頼につながります。
7|サンプル集:そのまま貼れる“最小コード”
7-1. 画像とリンク
<!-- 装飾画像は空alt -->
<img src="divider.svg" alt="">
<!-- 内容を説明 -->
<img src="report-2025.png" alt="2025年版の売上推移グラフ。主要3市場を比較。">
<!-- 説明的アンカー(画像リンク) -->
<a href="/case/voicebot">
<img src="case-voicebot.jpg" alt="音声ボット導入事例:一次応答を自動化">
</a>
(目的ベースのaltは検索と読み上げの双方に有益)
7-2. フォーカスとスキップリンク
<a class="skip-link" href="#content">本文へスキップ</a>
<style>
.skip-link {
position:absolute; left:-9999px; top:auto;
}
.skip-link:focus {
left:16px; top:16px; background:#fff; color:#000; padding:.5rem 1rem;
outline:3px solid #005fcc; outline-offset:2px;
}
:focus-visible { outline:3px solid #005fcc; outline-offset:3px; }
</style>
(フォーカスの可視化はWCAG 2.2でも強化ポイント)
7-3. フォームとエラーの明示
<label for="email">メールアドレス <span aria-hidden="true">*</span></label>
<input id="email" name="email" type="email" aria-required="true" aria-describedby="err-email">
<p id="err-email" class="error" role="alert" hidden>メール形式で入力してください。</p>
<script>
const input = document.getElementById('email');
const err = document.getElementById('err-email');
input.addEventListener('invalid', (e) => { err.hidden = false; });
</script>
(箇所・理由・修正法をテキストで案内)
8|運用設計:手戻りを減らす“3枚の標準ドキュメント”
- アクセシビリティ方針(1枚):対象範囲/達成レベル/更新頻度/連絡窓口。表明と同時に試験方法の概要も記載。
- スタイル&コンポーネント規約(1枚):色・余白・見出し・ボタン・フォームのコントラストとフォーカス仕様を図示。
- 編集ガイド(1枚):altの書き方/リンク文言のルール/見出しの作法/字幕の最低要件。Mozの中編で示された**“目的で書く”発想**を全員に浸透。
9|アクセシビリティ評価(本稿&推奨運用)
- 本稿の難易度:中級。AA相当を目指す実務者に向けて、SEOと法令を一体で理解できる構成にしました。
- 達成レベルの目標:WCAG 2.2 AA(コントラスト、フォーカス、操作、代替テキスト、見出し構造、メディア代替、フォーム)。AAAは段階導入を推奨。
- 包摂配慮:字幕・文字起こし、説明的リンク、大きめで可視なフォーカスを標準化。読み書きが苦手な方や視覚・運動の多様性にも配慮し、検索の理解も補強します。
10|“よくある誤解”を3つだけ正す
- 「altはキーワードを詰め込む場所?」
いいえ。画像の目的を自然に説明する場所。羅列は逆効果です。 - 「ARIAをたくさん書いた方がアクセシブル?」
いいえ。ネイティブHTMLが最優先。ARIAは不足分のみ補うのが鉄則。 - 「フォーカス輪郭はデザイン的に消してよい?」
原則NG。見えないフォーカス=操作不能です。見やすく美しい輪郭を設計しましょう。
11|30日実装ロードマップ(現場用)
- Week 1:監査
主要テンプレで色コントラスト/alt/リンク文言/見出し/フォーカスを点検。EAA/JIS/合理的配慮の適用有無を棚卸し。 - Week 2:設計
スタイル規約(色・フォーカス)と編集ガイド(alt/リンク/字幕)を作成。 - Week 3:改修
90分の5手を一気に当て、フォーム・エラーメッセージまで仕上げる。 - Week 4:表明・公開
JIS準拠の表明と試験結果ページを公開。KPI(直帰・滞在・完了率・画像流入)を月次モニタ。
12|編集部まとめ:アクセシビリティは“SEOの近道”、そして“法の道”
- Moz中編の8施策は、検索順位に効く要素を“ユーザーの使いやすさ”から逆算して積み上げる実践集。まずはalt/コントラスト/アンカー/ARIA最小の4本柱、次に構造/操作/メディア/入力で仕上げましょう。
- EUはEAAが始動、日本は合理的配慮が義務化。JIS準拠の表明・試験公開は信頼の通貨です。**順守と成長(SEO)**を同時に叶える設計へ。
参考(一次・高信頼中心)
- Moz中編:SEOが向上するウェブアクセシビリティ8つの施策と、放置した場合の法的リスク(中編)(代替テキスト/コントラスト/説明的アンカー/ARIA 等)。
- WCAG 2.2:コントラスト、フォーカス関連の達成基準(AA/AAA)。
- EAA(欧州アクセシビリティ法):2025年6月28日適用開始の公式・解説。
- 日本法:合理的配慮の提供の義務化(2024/4/1施行)と周知資料。
- JIS準拠の公開例:厚労省・デジタル庁の表明/試験結果ページ。
付記(ご依頼に応じて)
greedenは**Webアクセシビリティ対応(WCAG 2.2/JIS X 8341-3)の設計・実装・監査をワンストップで支援し、SEO領域では20年の実績がございます。“法令順守×検索で届く情報設計”**を両立させたい企業さまへ、要件定義から運用改善まで丁寧に伴走いたします。どうぞ安心してお任せください。