モバイルバッテリーの「主役交代」は起きる?——リチウムイオン以後の有力候補を、安全性・サイズ/重さ・価格・航空規制で徹底比較【2025年版】
まずは要点(1分サマリー)
- 現在の主流は依然としてリチウムイオン/ポリマーですが、発火・熱暴走リスクと寒冷下での性能低下を背景に、ナトリウムイオン(Na-ion)が小型モバイルでも実用品として登場しました。日本ではエレコムが9,000mAh・45W出力のNa-ionモデルを発売。高耐寒・長寿命が特徴です。
- リン酸鉄リチウム(LiFePO₄)は安全性が高い一方、エネルギー密度が低く重いため、“ポケット級のモバイル”よりはポータブル電源に向きます。
- スーパーキャパシタや燃料電池はニッチ。キャパシタは瞬発力・超長寿命だが容量が小さく大型化しがち、燃料電池はカートリッジ規制や実用コストがネックで日常用途には不向き。
- 航空機内の持ち込みは基本ルールが明確:100Whまで自由に持ち込み可/100–160Whは航空会社の許可/160Wh超は不可/機内持ち込みのみ。一部航空会社は機内での使用禁止を打ち出す動きも。
- 今年の結論:小容量・日常使い→Na-ionが“安全性と耐環境”で有力。大容量・屋外/停電対策→LiFePO₄のポータブル電源。最軽量/最小形状・安価重視→従来のLi-ionがまだ優位。
いま何が起きている?(主役交代の背景)
スマホ向けのモバイルバッテリー市場は、薄型・軽量・高出力(PD 20–140W級)を狙ったリチウムイオン/ポリマーが長らく主役でした。ただし、高出力化と小型化の両立は熱設計のハードルを上げ、リコール事例も散発。ブランド各社はセル調達と品質管理を再強化しています。
この数年で新顔としてナトリウムイオンが現実化。資源の豊富さと低温耐性、熱暴走しにくい特性が評価され、2025年は携帯サイズのNa-ion製品が日本で市販されました。エネルギー密度はLi-ionより低く、同容量なら重く大きいという弱点はあるものの、**“安全マージンを厚く取れる”**点が強みです。
一方でLiFePO₄は「より安全」なリチウム系として定評があり、屋外電源やポータブル電源の定番。サイクル寿命が長く熱安定性に優れる代わりに、同エネルギーなら重量増が避けられません。ポケット用途では不利ですが、**据置・持ち運び用の“電源ボックス”**としては引き続き最適解です。
候補技術の短評(安全性と実用性の“現在地”)
- ナトリウムイオン(Na-ion)モバイル
- 例:エレコム 9,000mAh / 45W / 約9,980円クラス。耐寒性や過熱リスク低さ、長寿命(報道では約5,000回)が売り。サイズは同容量のLi-ionよりやや大ぶり・やや重め。普段鞄なら現実的、胸ポケットはきついことも。
- リン酸鉄リチウム(LiFePO₄)ポータブル電源
- 安全性重視の定番。過充電耐性・熱安定性・サイクル寿命が高く、キャンプ・停電対策で主流。ただし本体は大きく重いため**“モバイルバッテリー”というより小型電源。
- スーパーキャパシタ
- 超高速充放電・超長寿命・低温強さが魅力。ただし容量密度が低く、同じ使用時間を得るには大型化。車のジャンプスターターなど瞬発系には有効だが、スマホ日常充電には非効率。
- 燃料電池(携帯/小型水素)
- 連続発電が可能でも、燃料カートリッジの携行規制やコストが現実の壁。個人の普段使いには適さず。
具体製品を軸に比較(安全性・サイズ/重量・価格・航空法)
対象モデル
- Na-ion:エレコム Na Plus系(9,000mAh / 45W / 18W):耐寒・長寿命の報道。日本価格約9,980円。
- Li-ion高出力:最新ハイパワー(例:26,250mAh / 300Wの“航空対応”):サイズは大型化もPD3.1高速。多ポート。
- LiFePO₄:小型ポータブル電源(900Wh級のNa-ion電源も参考):安全・長寿命だが携帯性は低い。
比較ポイント(要旨)
- 安全性
- Na-ion:熱暴走リスクが低いとされ、低温でも動くのが長所。
- Li-ion:高エネ密度=軽いが、品質不良や衝撃での過熱リスクはゼロでない。リコールの教訓あり。
- LiFePO₄:熱安定性が高い。据置/持ち運び電源で安心感。
- 大きさ/重さ
- Na-ion:同容量でやや重い/厚い。9,000mAhは鞄向け。
- Li-ion:最軽量。10,000mAhで200g台の機種も多い。
- LiFePO₄:桁違いに重い(数kg)。“ポケット”ではなく肩掛け/据置。
- 価格
- Na-ion:まだやや割高(同容量Li-ion比)。~1万円前後から。
- Li-ion:幅広い価格帯。1万円以下で**20W〜**が一般的。
- LiFePO₄:容量単価が高いが寿命長。長期運用前提なら総コストは逆転も。
- 航空法・航空会社ルール
- 基本:100Wh以下は申告不要で機内持ち込み、100–160Whは航空会社許可、160Wh超は不可。預け入れ不可。
- 実務注意:一部航空会社は機内使用の禁止を通告(電源としては持込OKでも使用不可)。出発前に各社の告知を要確認。
- Na-ionは“非リチウム”ですが、“パワーバンク扱い”として同様の運用を求められることが多いのが現実。端子絶縁・W数表示は共通のマナーです。
Whの目安:10,000mAh・3.7V ≒ 37Wh。26,250mAh・3.6V ≒ 約94.5Whで100Wh以下に収まる設計もあります。
用途別のおすすめ(具体的に)
- 通勤・通学の“毎日用”
- Na-ion(9,000〜10,000mAh / 30–45W):寒暖差が大きい地域や屋外待機が多い方に向きます。安全マージンと長寿命を優先。
- 軽さ最優先ならLi-ion(10,000mAh / 20–30W)。200g台・~3,000円台も選択肢。
- ノートPCも同時に充電
- 高出力Li-ion(20,000–26,800mAh / 100–140W+):100Wh以下に収めた航空対応モデルが狙い目です。PD3.1でPC・タブレットを一気に。
- キャンプ・非常用(家電も動かしたい)
- LiFePO₄ポータブル電源:安全・長寿命で繰り返し運用に強い。寒冷地はNa-ionのポータブル電源という選択肢も現実化しました。
- 真冬の屋外作業
- Na-ionの低温耐性が活きます。−15〜−25℃帯での動作をうたう大型機も登場。
失敗しない選び方チェックリスト(5項目)
- Wh表示:100Wh以下なら国内外の飛行機で運びやすい。mAh×電圧÷1,000=Whで試算。
- 出力W数:スマホ中心なら20–30W、PCもなら100W以上を。マルチポート時は同時出力合計を確認。
- 温度レンジ:雪国・酷暑はNa-ionが安心。真夏の駐車車内放置はどの方式でも厳禁。
- セルの種類とブランドの品質管理:リコール履歴の有無・PSE/CE/FCC・温度保護/過電流保護の記載を確認。
- 航空会社ポリシー:**持込可否だけでなく“機内使用の可否”**も変わります。最新の告知を必ず再確認。
まとめ
- 安全性と耐環境、寿命を第一に考えるなら、Na-ionモバイルは有力な“次の主役候補”。軽さと価格ではまだLi-ionが優位です。
- 大容量/家電用途は引き続きLiFePO₄。停電対策・キャンプでは最適解です。
- 旅行や出張では、100Wh以下・端子養生・使用可否の事前確認が実務では最重要。
- どう選ぶか迷ったら、利用温度帯・出力W数・持ち運び頻度の3条件から逆算してください。
参考リンク(一次情報・信頼ソース中心)
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ナトリウムイオン(Na-ion)
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安全・品質
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従来Li-ionの最新トレンド
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航空・安全規定
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その他(参考)