2025年11月18日のAdobe大規模障害とは?
原因・影響・そして次に備えるための「止まらないワークフロー」の作り方
2025年11月18日(日本時間のきょう・もしくは前日夜から)、
Illustrator/InDesign/Premiere Pro などのAdobe製品が、主にmacOS環境で起動できない大規模不具合に見舞われました。
- 「イラレが立ち上がらないので入稿データが出せない」
- 「Premiereが起動せず、編集データも開けない」
- 「Creative Cloudがずっと読み込み中で何もできない」
といった声がSNSやニュースサイトで相次ぎ、
DTP・映像制作・Web制作・マーケティング現場がほぼ業務停止に追い込まれたケースも出ています。
この記事では、
- 今回の障害の概要と原因(現時点で分かっていること)
- 日本のクリエイティブ・マーケティング現場への具体的な影響
- 個人・企業としてできる**「その場しのぎ」ではない障害対策**
- greedenとしてお手伝いできること
を、日本の実務目線でわかりやすく整理していきますね。
1. 誰に関係する話?──今回の障害が刺さる層
今回の内容は、とくに次のような方には**かなり“自分ごと”**になります。
- デザイン会社・印刷会社・制作プロダクションの担当者さま
(Illustrator/InDesign/Photoshop/Premiere/After Effects を日常的に利用) - 事業会社のマーケティング・広報・クリエイティブ部門の皆さま
- フリーランスのデザイナー・動画クリエイター・フォトグラファーの方
- Adobe製品を標準ツールとしている
情報システム部門・情シス/IT責任者・DX推進室の方
また、将来的に同様の障害を見越して、
- 「Adobe前提の業務フローで、本当に大丈夫?」
- 「クラウド時代のBCP(事業継続計画)ってどう考えればいいの?」
とお悩みの経営層・マネジメント層にも、
読む価値がある内容になっています。
2. 何が起きたのか:今回の障害の全体像
2-1. 発生状況と対象
複数の報道・公式コミュニティの情報を総合すると、今回の障害は次のようなものです。
発生日時(日本時間)
- 2025年11月18日 朝〜日中にかけて
- 一部では17日夜の段階から「重い」「おかしい」という報告もあり
主な対象OS
- macOS(Mac)
- Adobe公式コミュニティによると、
「Macユーザーから多く報告があり、Windowsでは現時点で同様の問題は確認されていない」とされています。
影響を受けた主なアプリ
報道やAdobeコミュニティで挙げられているもの:
- Creative Cloud デスクトップアプリ
- Illustrator
- InDesign
- Premiere Pro
- Bridge
- Camera Raw
など、Creative Cloud関連アプリの広い範囲
2-2. 具体的な症状
報道・コミュニティの整理によると、代表的な症状は次の通りです。
Creative Cloud
- ローディングが延々と続く
- 終了時に「AdobeGCClientが終了しました」と表示
Illustrator
- アプリが起動しない
- 動作が極端に重い
- 選択してもオブジェクトが選択されない
- ファイルを開けない
- 開いても画面が真っ黒
- ショートカットキーが効かない
InDesign
- 謎のモーダルダイアログが出続け、操作不能
- テキストフレーム作成やツール操作を受け付けない
Premiere Pro
- アプリが起動しない
- テキスト入力ができない
Bridge/Camera Raw
- BridgeからCamera Rawを呼ぶと「編集機能が有効ではない」と出て利用不可
- ファイル名が変更できない
……つまり、
「アプリがまったく立ち上がらない/立ち上がっても実質使えない」
というレベルのトラブルで、
“ちょっと重い”どころではなく、クリエイティブ業務が完全停止する規模の障害だったと言えます。
3. 原因:何が悪さをしたのか?(現時点で分かっている範囲)
3-1. Adobeの公式コメント
Adobeカスタマーサポート(@AdobeSupportJ)はX(旧Twitter)上で、
- 複数のAdobeアプリが起動できない問題を認め
- 「現在、解決に向けて調査中」
とコメントしています。
現時点(11月18日夜〜19日朝時点の報道ベース)では、
- 詳細な「技術的な原因(Root Cause)」は公表されていません。
3-2. Creative Cloud Desktopの「通信障害」がカギ
Xのトレンドまとめや技術ブログの整理では、
- 障害はCreative Cloud Desktopアプリの通信周りが起点になっている可能性が高い
- オフラインにすると改善することから、
ライセンス認証やクラウド連携の通信が、アプリの動作をブロックしているのではないか
と推測されています。
実際、
- Adobe公式コミュニティの回避策も
- 「Macを再起動して、Creative Cloudホーム画面の読み込みが終わるまで5分ほど待つ」
- 「ネットワーク接続をオフにして(=オフラインにして)アプリを再起動する」
といった、通信まわりをリセットする内容になっています。
3-3. グローバルなインフラ障害との関係は?
同じ11月18日には、
CDNサービス「Cloudflare」でグローバルな障害が発生し、
Google/X/AWS/OpenAIなど、多くの大規模サービスに影響が出たことも報じられています。
ただし執筆時点では、
- Cloudflareの障害と、今回の“Mac限定Adobe不具合”が直接つながっている、という公式な証拠はありません。
Adobe自身も、
「Creative Cloud Desktopアプリの通信障害」を問題視しているものの、
その裏でどのインフラに何が起きたのかまでは、公開情報からは読み取れません。
ですので今の段階では、
「サーバー側・ネットワーク側の要因を含む“通信系トラブル”がMacアプリの動作を止めてしまった」
……というレベルまでが、事実ベースで言える範囲です。
4. ビジネスへの影響:どんな現場が「詰んだ」のか
ニュース記事やSNSを眺めていると、
今回の障害がどんな現場にどんな形でダメージを与えたかが見えてきます。
4-1. DTP・印刷・出版現場
- Illustrator/InDesignが使えない
- 既存ファイルが開けない/開くと真っ黒
- フォントやレイアウトが確認できない
→ 入稿データの作成・修正が完全に止まる
→ 雑誌・カタログ・チラシ・POP・パッケージなど、
印刷スケジュール全体に遅延が波及
特に、
- 「今日中に出さないと印刷に間に合わない」
- 「クライアントのキャンペーン開始日が決まっている」
といった案件では、
1日レベルの障害でも致命的な遅れになりうる、という現実が浮き彫りになりました。
4-2. 動画制作・配信現場
- Premiere Proが起動しない/編集ができない
- テロップや差し替えの最終調整が行えない
→ CM・Web動画・YouTube・配信コンテンツなどで、
- 納品遅延
- 配信スケジュール変更
- 放送/配信の最終確認ができない緊張感
……といった問題が噴出したと見られます。
4-3. 中小制作会社・フリーランスへの打撃
大企業であれば、
- Windowsマシンへの切り替え
- 代替ツールのライセンス確保
といったバックアップ手段を持っているケースもありますが、
小規模制作会社やフリーランスは「Mac+Adobe一式」が唯一の武器であることが多く、
「朝から一日まるまる、売上をつくることができない」
「イラレが開かない=仕事がゼロ」
という、かなりつらい状況に追い込まれた方も少なくありません。
5. そのときどうする?「今回の障害」で有効だった対処法
ここからは、今回の事例に即して、
実際に効果があった・Adobe自身も案内している回避策を整理します。
5-1. 即効性のあった“応急処置”
報道およびAdobe公式コミュニティによると、
少なくとも一部のユーザーで効果があったのは、次の2ステップです。
① Macを再起動し、Creative Cloudホーム画面の読み込みを待つ
- いったんMacを再起動
- Creative Cloudデスクトップアプリを立ち上げた後、
読み込みが完了するまで5分程度待つ - 読み込みが完了してから、各アプリを起動する
障害によりCCの読み込みが遅延しているため、
「中途半端な状態で他アプリを触らない」ことが重要と案内されています。
② ネットワークをオフラインにしてからアプリを再起動
- MacのWi-Fi/有線LANなど、ネットワーク接続を一度オフにする
- オフライン状態で、問題のアプリを終了→再起動
- 正常に起動できたら、その後オンラインに戻す
多くのユーザーが、
「オンラインだと起動しないが、オフラインだと起動した」と報告しており、
Adobe側も暫定回避策として推奨していました。
ポイントは、
- まずオフラインにしてから
- アプリを完全終了させ
- そのうえで再起動する
……という順序を守ることです。
5-2. それでも動かないときに試すこと
これは今回の障害に限らずですが、
Creative Cloud関連で似た症状が出た場合に、比較的安全に試せる手順として:
- 別ユーザーアカウントでログインして試す
- Creative Cloud Desktopアプリを最新版に更新(あるいは再インストール)
- Adobeの公式トラブルシューティングページにある
- キャッシュ削除
- 権限リセット
などの手順を実施
などがあります。
ただし、
- ライブラリの削除や
- アプリケーションの完全削除
などの重い手順は、制作途中の環境を壊すリスクもあるので、
本番案件を抱えているときは、必ずバックアップを取ったうえで慎重に進めたいところです。
6. 「システムダウンを回避する」ための現実的な考え方
ここからが、本当に大事なポイントです。
正直なところ、
「Adobe側のサーバーやネットワークの障害を、ユーザー側で完全に“回避”することはできません。」
ただし、
「障害が起きても、ビジネスを止めない・ダメージを最小限にする設計」
は、ユーザー側の工夫でかなり実現可能です。
6-1. 「1社依存・1ツール依存」をやめる
今回のような障害が起こると、
**「Adobeが悪い」「クラウドは信用できない」**と感情的になりがちですが、
実務的にはそれだけでは前に進めません。
- デザインデータの制作や運用を
- Illustrator/InDesign専用の形式だけに閉じ込めない
- 最終成果物を
- PDF/X、SVG、PNG、MP4など、他ツールでも扱える形式でバックアップしておく
といった、「データのポータビリティ」を高める工夫がまず重要です。
また、
- ラフや小規模案件は
- Figma/Canva/他のDTPツールなど、サブのツールでも対応可能な設計にしておく
- 特に納期がシビアな案件では、
- 「トラブル時はこのツールにスイッチする」と事前に決めておく
といった複線化も有効です。
6-2. ライセンス・認証周りの「オフライン前提」を考える
今回の障害は、
オンライン認証や通信処理の不具合がアプリを巻き込んでしまった可能性が高いケースでした。
- 常にオンラインで使う前提ではなく、
一定期間はオフラインでも問題なく作業できる環境を意識しておくと安心です。
具体的には:
- 重要なマシンには、定期的にライセンスを確認・更新しておく
- 「久しぶりに立ち上げたら認証が通らない」という事態を避ける
- 長時間の移動やロケなどでは、
- 事前に必要なファイルとフォントをローカルにキャッシュしておく
- プロジェクトごとに
- 「ネットに繋がらなくても今日〜明日分の作業ができる状態」を作っておく
といった運用が考えられます。
6-3. BCP(事業継続計画)の一部として「ツール障害」を明文化する
多くの企業ではBCPの中で、
- 地震・火災・停電
- サイバー攻撃
- パンデミック
などは想定していても、
「主要クラウドSaaS(Adobe/Office 365/Google Workspace など)が半日〜1日使えなくなる」
という前提が、明文化されていないことが少なくありません。
今回のようなケースを踏まえ、
- 「主要クラウドサービスの大規模障害」をBCPに明記する
- その際に、
- 代替手段(ツール/作業フロー)
- どの業務が何時間止まるとアウトなのか(RTOのイメージ)
を、現場と一緒に決めておく
ことが重要です。
7. 企業として今からできる「具体的アクション」チェックリスト
ここまでを踏まえて、
明日からでも着手できるレベルのチェック項目を整理してみますね。
7-1. 実態把握編
- 自社(あるいはチーム)の
- **Adobe依存度(アプリ別・部門別)**を棚卸しする
- Mac/Windowsの比率
- オンライン/オフラインでどこまで作業ができるか
- 代替ツール(Figma/Canva/他DTPツールなど)の利用状況・スキル状況
7-2. データ&ツール編
- 主要案件の**元データの保存場所(クラウド/ローカル)**とバックアップ有無を確認
- 入稿や納品で使う形式を、
- Illustrator/InDesign形式だけでなく
- PDF/X・SVG・高解像度画像・中間ファイルでも残す運用に変更
- 「この種の案件はこのツールでも最低限対応できる」という
サブツールの割り当て表を作る
7-3. 運用・体制編
- Adobe障害時の連絡フロー
- 誰がステータスページやニュースを確認するか
- 社内やクライアントへの情報共有方法
- 「システムが落ちたときに、その日中にとる行動」を簡単な手順書にする
- オフライン起動の手順
- 代替ツールへの切り替え手順
- クライアントへの説明テンプレート
7-4. 情報収集編
- Adobe公式のステータス/サポートページや、
- 国内のニュースサイト(ITmedia、Impress、ASCII、マイナビなど)を
RSSやメール、Xのリストでフォローしておく
- 国内のニュースサイト(ITmedia、Impress、ASCII、マイナビなど)を
- isdown.app や StatusGator など、
SaaS障害監視サービスに登録するのも一案です。
8. greedenでサポートできること
今回のような障害は、
**「明日もまた同じ規模で起きるかもしれない」**し、
**「Adobe以外の重要SaaSでも同じことが起こり得る」**のが現実です。
greedenでは、こうした状況を踏まえて、
8-1. 現状診断とリスク分析
-
貴社の
- ツール構成
- 業務フロー
- データの持ち方
をヒアリングし、
-
「どのシステム・ツールが止まると、どの業務がどれくらい止まるか」
-
「クリティカルなのにバックアップがない部分はどこか」
を一緒に可視化するお手伝いが可能です。
8-2. 「止まらないクリエイティブワークフロー」設計
- Adobe前提になっているフローを、
- データ形式
- 代替ツール
- オフライン運用
といった観点から**“多重化”する設計**をご提案します。
例としては:
- Illustrator+InDesign案件に対して
- Figma/Canvaなどのサブツール導入+教育
- 入稿データのバックアップ戦略
- Premiere中心の動画制作フローに
- 他社ツールやクラウドエディタを組み合わせたフェイルオーバー設計
など、現場の負担を増やしすぎずにリスクを下げる構成を一緒に考えます。
8-3. BCP・ガバナンス文書の整備
-
経営層・現場・情シスが同じ前提で動けるよう、
- 「クラウドSaaS障害時の行動指針」
- 「AI・SaaSを含めたIT-BCP方針」
のドラフト作成やレビューもサポート可能です。
-
「いきなり完璧なBCP」は難しいので、
- まずはクリエイティブ領域から段階的に始める、といった現実的なステップも一緒に設計させていただきます。
9. まとめ:今回の障害を「ただのトラブル」で終わらせないために
- 2025年11月18日、macOS向けの複数のAdobe Creative Cloudアプリが起動不能・動作不能になる大規模不具合が発生しました。
- 原因は、現時点の公開情報では
- **Creative Cloud Desktopアプリの通信系トラブル(認証・クラウド連携周り)**が中心と見られ、
- Macに影響が集中、Windowsではほぼ問題なしという状況です。
- Adobe公式コミュニティや各種報道では、
- 「Mac再起動+CC読み込み待ち」
- 「ネットワークをオフにしてからアプリ再起動」
が暫定的な回避策として案内され、多くのユーザーで一定の効果が確認されました。
- しかし本質的には、
- 1ベンダー・1ツールに依存したクリエイティブフローの弱さ
- クラウドSaaS障害をBCPに織り込めていない現状
が浮き彫りになった出来事とも言えます。
だからこそ、今回のトラブルをきっかけに、
- データ形式の多重化
- サブツール/サブ環境の用意
- オフライン前提の運用
- BCPへの明記と、社内でのすり合わせ
といった**「次に備える動き」**に一歩踏み出していただくのがよいかな、と思います。
もし、
「自社の状況だと何から手をつけるべき?」
「既存フローを壊さずに、少しずつ強くしていくには?」
といったあたりでお悩みでしたら、
現場のワークフローをお伺いしたうえで、greedenとして具体的な改善プランをご提案することも可能です。
お気軽にご相談くださいね。
参考リンク(日本語記事・公式情報)
- イラレなど複数のAdobeアプリがMacで起動できない不具合、対処法も(マイナビTECH+)
- アドビ、不具合で緊急回避策 オフライン状態でアプリ再起動を推奨(ASCII.jp)
- 「Illustrator」「Premiere」「InDesign」などが起動できない、複数のアドビアプリに問題が発生(窓の杜/Impress)
- アドビ製品開けない不具合、悲鳴続出「何もできない」「どうにかして」(ASCII.jp)
- Adobeクリエイティブアプリ大規模障害 Macユーザー中心に起動不能(Xトレンドまとめ)
- Adobe製品の大規模不具合(2025年11月18日発生):Macユーザー中心の起動障害まとめ(ブログ記事)
- Adobeの大規模障害、依然復旧せず 被害範囲は“Macのみ”か(ITmedia 記事へのブックマーク経由)
- IsDown:Outage in Creative Cloud Applications(2025年11月17日)
- IsDown:Outage in Adobe Commerce, Adobe Marketo Engage(2025年11月18日)
- Cloudflareのグローバル障害に関する記事(窓の杜)
