2025年11月26日・世界はどこへ向かうのか
香港高層火災、ウクライナ和平構想、ガザ洪水、地中海ガス、新たな通商摩擦まで
1. この日の「世界の争点」早わかりサマリー
2025年11月26日は、地政学と経済が複雑に絡み合うニュースが各地で相次ぎました。本記事は、とくに次のような方に役立つ内容になっています。
- 海外情勢が自社ビジネスに与える影響を把握したい企業経営者・海外事業担当者
- 為替・株式・商品市場の中期トレンドを読みたい個人投資家・機関投資家
- エネルギー・インフラ・再建ビジネスなど、国際案件に関わるコンサルタント・専門職
- 国際政治・安全保障・開発経済を学ぶ学生・研究者
- ニュースを「点」ではなく、「世界全体の流れ」として理解したい一般の読者の方
この日の主なトピックを、まずは箇条書きで整理します。
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香港・大埔の高層集合住宅で大規模火災
竹の足場に覆われた改修中の31階建て団地で火災が発生し、少なくとも31人が死亡。高密度都市の建物安全と、改修投資のあり方が問われています。 -
ウクライナ和平案を巡り「ロシア文書依拠」が発覚
米国が後押しする28項目の和平案が、ロシア側の「ノンペーパー」を下敷きにしていたことが判明。和平プロセスの信頼性と、欧米の対ロ交渉姿勢に波紋が広がっています。 -
ガザでは豪雨でテントが浸水、パレスチナ経済は「史上最悪の崩壊」
2年にわたる戦争と封鎖でガザ・ヨルダン川西岸の経済が数十年分の成長を失う一方、豪雨で避難民のテントが流される事態に。人道危機と経済崩壊が同時進行しています。 -
レバノンとキプロス、20年越しの海洋境界線合意
東地中海の海底ガス田開発に道を開く「歴史的合意」。欧州の脱ロシア依存と、レバノン経済再建に新たな選択肢が生まれました。 -
トランプ政権の対中関税が、米中小小売りの年末商戦を直撃
関税率の「振れ」がサプライチェーンを混乱させ、在庫不足やコスト増から、中小企業の3分の1以上が高い倒産リスクに直面。 -
セネガルはGDP再計算で“見かけの”債務負担を軽減
統計の基準年更新で経済規模が13.5%拡大と算定され、対GDP債務比率が改善。ただし実際の返済負担は変わらないため、「数字の見え方」と実態のギャップが議論を呼んでいます。
これらを、経済・社会への影響も含めて、少し丁寧に見ていきますね。
2. 香港・大埔の高層火災:高密度都市の「老朽インフラリスク」
火災の概要と現場の状況
香港北部・大埔(タイポ)地区にある「ワンフォック・コート」とみられる高層の公営住宅団地で、11月26日午後に大規模な火災が発生しました。報道によると、31階建て×8棟・約2,000戸のうち7棟に火が燃え広がり、少なくとも消防士1人を含む31人が死亡、負傷者も10人以上に上っています。
現場は大規模な改修工事中で、外壁一面が竹の足場で覆われていました。香港では依然として竹足場が広く使われており、3月には当局が安全性の観点から段階的廃止と、公共工事の半数で金属足場の義務化を打ち出したばかりでした。
今回の火災では、この竹足場が強風にあおられて炎と黒煙を拡散させ、崩れ落ちる様子が相次いで目撃されました。高層階に取り残された住民も多く、ヘリやはしご車による救助が夜まで続く、非常に厳しい現場だったと伝えられています。
経済への影響:建設業・保険・不動産市場
この火災は、一つの事故にとどまらず、香港経済の複数のセクターに波紋を広げる可能性があります。
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建設・改修投資への見直し
- 竹足場の安全性に対する批判が高まり、金属足場への急速な切り替えが進めば、建設コストは短期的に上昇します。
- 公営住宅だけでなく、老朽化した民間マンションの大規模修繕でも、保険料や安全対策費が増加し、改修工事の遅延や中止を招く懸念もあります。
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保険・再保険市場への負担
- 高層住宅で多数の死傷者と大規模な物的損害が発生したことで、火災保険・工事保険の支払いが大きく膨らむ可能性があります。
- 香港はアジアの再保険ハブの一つでもあり、保険料率や引受条件の見直しが、周辺地域のプロジェクトにも影響することが考えられます。
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不動産市場・住宅政策への波及
- 香港の公営住宅は、人口過密と住宅価格高騰を背景に、多くの低中所得者層を受け入れてきました。
- しかし今回の火災で、「古い団地=危険」というイメージが広がれば、再開発や建て替え需要が高まる一方、居住者の不安から社会的な不満が強まるリスクもあります。
- 再開発には巨額の投資が必要で、政府財政と住宅公社の資金計画にも影響し得ます。
社会への影響:都市の「見えない格差」が表面化
香港の公営団地には、高齢者、単身者、移民労働者家庭など、社会的に弱い立場の住民が多く暮らしています。今回も、逃げ遅れた住民の中に高齢者が含まれているとの報道があります。
- 防災教育・避難訓練の格差
所得や言語、教育レベルによって、防災情報へのアクセスに差があり、避難行動にも影響することが国際的に指摘されています。 - 精神的ケアの不足
突然住居を失った人々は、避難所生活だけでなく、仕事・学校・医療など、生活全般の再構築を迫られます。香港はメンタルヘルス対策が追いついていないとされており、長期的な心のケアが課題になります。
日本を含むアジアの大都市には、1970〜90年代に建てられた高層団地が多数あります。今回の火災は、「老朽インフラを抱えた高密度都市」が直面する共通のリスクを可視化したと言えそうです。
3. ウクライナ和平案と「ロシア文書」:外交の信頼性が揺らぐ
28項目の和平案、その出どころはロシアの「ノンペーパー」
ロイターの独自報道によれば、米国が後押ししているウクライナ戦争終結に向けた「28項目の和平案」は、10月にロシア側からトランプ政権に提出された文書(いわゆるノンペーパー)を重要な参考資料として作成されていたことが明らかになりました。
- ロシア文書には、ウクライナ東部の広範な領土をロシアに割譲するなど、これまでウクライナ側が拒否してきた要求が含まれていたとされています。
- この文書が存在すること自体は以前から報じられていましたが、今回初めて「米国案の主要な入力だった」と確認されました。
米国務省や在米ロシア・ウクライナ大使館はコメントを控えていますが、複数の米政府関係者は「ウクライナは最初の案を拒むだろう」と予想していたとされています。
トランプ政権内の動きとロシア側との接触
さらに報道によると、この和平案は、トランプ大統領の特使スティーブ・ウィットコフ氏や娘婿ジャレッド・クシュナー氏が、ロシアの政府系ファンド責任者らとマイアミで会談した際にも議論されていたとされます。
- トランプ大統領は、自身の声明で「特使ウィットコフをモスクワに派遣しプーチン大統領と会談させ、同時に陸軍長官ドリスコルをウクライナ側との協議にあたらせる」と述べています。
- しかし、こうした重要な接触が、米国務省やホワイトハウス内部の多くの職員に十分共有されていなかったことも指摘され、意思決定プロセスの透明性に疑問が呈されています。
一方、ロシア側は、この和平案や関連情報のリークについて「ハイブリッド戦の一環だ」と強く非難し、慎重な分析が必要だとの立場を示しています。
経済・市場への示唆:和平「期待相場」と現実
このニュースは、金融市場にも微妙な影を落としています。
- 一部の投資家は「和平への道筋が見え始めた」として、エネルギー価格や軍需株の調整を期待していましたが、
- 実際には「ロシア寄りの案が土台」と判明したことで、和平の実現可能性に疑問が強まりました。
欧州の国防関連株やエネルギー関連銘柄では、和平期待による過度な楽観を修正する動きが出る可能性があります。また、ウクライナ国債や周辺新興国通貨にとっても、和平の「不透明感」はリスクプレミアムの高止まり要因となりかねません。
社会・政治への影響:同盟国間の不信と情報戦
- ウクライナ世論の反発
自国の領土割譲を前提とした案が「パートナー国主導の和平案」として提示されれば、政府への信頼や対米感情に深刻な影を落とします。 - 欧州諸国の懸念
欧州各国は、自国の安全保障が関わる戦争の行方を、米露間の水面下交渉に委ねることへの不信感を募らせています。 - 情報戦の激化
今回のようなリーク合戦は、国際世論を揺さぶる「情報戦」の典型例です。真偽が入り混じる中で、一般市民が何を信じればよいのか、情報リテラシーの重要性も増しています。
日本にとっても、ウクライナ戦争はエネルギー価格や食料安全保障に直結する問題です。和平を巡る「見えない駆け引き」がどのような形で決着するのかは、今後の世界経済のシナリオを考えるうえで、非常に大きなファクターと言えます。
4. ガザの豪雨とパレスチナ経済の崩壊:戦後復興のハードル
豪雨でテントが水没、避難民キャンプの厳しい冬
イスラエルとハマスの2年にわたる戦争で家を失ったガザの人々は、いまもテントや簡易シェルターで暮らしています。そうした中、11月25日の豪雨が一帯を襲い、多くのテントが浸水・流失する事態になりました。
- ガザの人口約200万人の大多数が家を追われ、少なくとも約150万人が依然として避難生活を続けているとされています。
- 豪雨で水位は40〜50センチに達し、数千のテントが水没。野外の仮設病院も浸水で一時閉鎖を余儀なくされたとの報道もあります。
- 現地のNGOネットワークは、少なくとも30万張りの新しいテントが緊急に必要だと訴えています。
国連は冬用物資の搬入を進めていますが、停戦合意に基づくトラックの通行数がイスラエル側の制限などで伸び悩んでおり、現場への物資到達は遅れています。イスラエルは「合意に沿ったレベルの援助を受け入れている」と主張し、一方のハマス側は「約束された量の物資が入ってこない」と反論しており、人道支援を巡る責任のなすり合いが続いています。
UN報告:パレスチナ経済は「過去最悪」の崩壊
国連機関の報告によれば、ガザ戦争とイスラエルによる経済制限により、パレスチナ経済は統計開始以来「最悪の崩壊」に直面し、これまで数十年かけて積み上げてきた成長がほぼ失われたとされています。
- ガザのインフラ(電力網、上下水道、病院、学校、道路)は壊滅的な被害を受け、復興費用は数百億ドル規模に達するとの試算もあります。
- ヨルダン川西岸でも移動制限や入植地拡大などが生産活動を圧迫し、雇用機会の喪失と貧困の拡大が続いています。
経済的・社会的インパクト:戦後復興ビジネスと倫理のせめぎ合い
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復興需要の巨大さと資金調達の難しさ
- 住宅・インフラ・医療・教育など、あらゆる分野で再建が必要ですが、パレスチナ自治政府の財政基盤はもともと脆弱で、自前の資金だけで賄うことはほぼ不可能です。
- 国際機関や湾岸諸国、欧州・日本などからの支援が欠かせませんが、政治条件や対イスラエル関係などが複雑に絡み、資金拠出の意思決定は容易ではありません。
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ビジネスチャンスか、人道支援か
- 建設・インフラ・再エネ・水処理などの企業にとって、ガザ復興は巨大な需要を生み得ます。
- しかし、紛争当事者との関係や、入札プロセスの透明性、人権配慮などをめぐる倫理的な問題が常に付きまとい、「儲けだけを追うビジネス」は批判の対象になりやすくなります。
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地域安定と難民流出リスク
- 経済崩壊が長引けば、若年層を中心に失業と絶望が広がり、暴力化や過激化の温床になる懸念があります。
- 近隣国や欧州への難民・移民流出の圧力も高まり、すでに受け入れ能力の限界が指摘される国々にさらなる負担をかけることになります。
例えば、日本企業が水処理プラントや再エネ設備の案件に関わる場合、「復興支援」として高い評価を得られる一方、紛争当事者との契約条件や安全確保、人権デューデリジェンスなど、これまで以上に丁寧な対応が求められます。単に「案件があるから参入する」時代ではなくなっている、と言えそうです。
5. レバノン×キプロスの海洋合意:東地中海ガスの新たな一歩
20年越しで実現した「歴史的合意」
レバノンとキプロスは11月26日、長年棚上げされてきた海洋境界線の画定に合意し、約20年にわたる行き詰まりに終止符を打ちました。
- 2007年にいったん合意文書は作成されながら、レバノン側がイスラエルとの係争や国内政治危機を理由に批准を先送りしていました。
- その後、2022年に米国仲介のもとでレバノンとイスラエルの間の海洋境界がようやく画定し、今回のレバノン・キプロス合意につながったとされています。
キプロスのクリストドゥリデス大統領はこれを「歴史的な合意」と呼び、レバノンのアウン大統領も「協力を望む全ての国への明確な招待状だ」と強調しました。
欧州のエネルギー安全保障と、レバノン経済再建
- 脱ロシア依存を急ぐ欧州へのガス供給ルート
キプロス沖には推計約20兆立方フィートもの天然ガスが埋蔵されているとされ、一部は2027年にも欧州市場に届く可能性があると報じられています。
- ロシア産ガスへの依存を減らしたい欧州にとって、東地中海は重要な代替供給源です。
- レバノンとの海洋境界線が確定したことで、キプロス側は新たな海域で探鉱・開発を進めやすくなります。
- 経済危機にあえぐレバノンへの期待と現実
レバノンは、長引く金融危機と通貨暴落で、国民の生活水準が急速に低下しています。海底ガス田の開発は、理論上は外貨獲得と財政再建の切り札になり得ますが、
- 政治的不安定さ
- 汚職への懸念
- イスラエルやシリアとの緊張
といった要因が投資家のリスク評価を高めています。
日本やアジアにとっての意味
- LNG市場では、東地中海の新たな供給源が増えれば、価格の安定要因となり、日本を含むアジアの輸入国にとってはプラス材料になり得ます。
- 他方で、レバノン南部では停戦合意後もイスラエルによる空爆や衝突が続いており、いつ本格的な戦闘に発展するかわからない状況です。
企業や投資家にとっては、「ポテンシャルは高いが、政治・安全保障リスクも極めて高い地域」であることを改めて認識する必要があります。
6. 通商・財政・統計:米・英・アフリカで見える「数字」と暮らしの距離
米中関税で揺れる中小小売業:在庫不足と利益圧縮
米国では、トランプ大統領による対中関税の方針転換が、中小の小売企業に深刻な打撃を与えています。
- ニューヨークの睡眠関連ブランド「Loftie」は、主力商品の多くを中国から輸入していますが、関税が一時180%まで引き上げられるとの示唆を受けて、生産拠点をタイなどに移す検討を余儀なくされました。
- その後、関税が20%に修正されたため、結果として「生産コストの高い新拠点」か「高関税の中国」か、どちらを選んでもコスト増というジレンマに直面。最終的に中国サプライヤーに戻ったものの、その間に発注が遅れたため、年末商戦を前に在庫が必要量の1割程度にとどまっているといいます。
同様の悩みは他の中小企業でも共有されており、ある分析会社は、
- 総資産5,000万ドル未満の小売企業の営業利益率は マイナス20.7% に落ち込み、
- そのうち36%が高い倒産リスクに晒されている
と試算しています。一方で、大手のウォルマートやコストコなどは規模を活かし、より有利な仕入れ条件や価格転嫁でショックを吸収しやすい状況です。
日本の中小企業への示唆としては、
- 「関税・規制の急な変更に備えたサプライチェーンの多元化」
- 「為替・物流コストのシナリオ別試算」
を、普段から行っておく重要性が改めて浮き彫りになりました。
セネガルのGDP再計算:数字が良く見えても、返済負担はそのまま
西アフリカのセネガルは、統計上のGDP基準年を2014年から2021年に更新したことで、2021年のGDPが従来比13.5%増加し、対GDP債務比率が90.8%から80%に改善したと発表しました。
この「リベース」は国際的に認められた手法で、新しい産業(デジタル金融、石油・ガス、カシューナッツなど)を反映させる目的がありますが、
- 実際の債務残高や利払いは変わらない
- IMFが過去に用いてきた数字からみれば、依然として債務水準は高い
と指摘する専門家も多く、「見かけの改善」と実態のギャップが議論されています。
国際金融市場では、
- 数字の改善により格付けや投資家心理に若干のプラス効果がある一方で、
- 「統計手法で実態を隠していないか」という懐疑的な見方も根強い
という、複雑な反応が見られます。
英国の増税色の強い予算と、日本の高市首相の「トラス・ショック否定」
英国では、レイチェル・リーブス財務相が、数百億ポンド規模の増税策を含む予算方針を発表し、財政再建を優先する姿勢を鮮明にしました。
同じ日に、日本の高市早苗首相は初の党首討論で、
- 自身の政権発足後の円安・金利上昇は「放漫財政」への警鐘だとする野党の指摘を否定し、
- 「今年度の国債発行額は前年度より少ない」「何より重視しているのは財政の持続可能性」と強調しました。
さらに、高市首相が敬愛するとされるサッチャー元英首相ではなく、金利急騰と市場混乱で辞任に追い込まれたトラス前首相になぞらえる野党の批判に対し、
- 日本は経常収支の構造が英国とは全く異なり、「トラス・ショックのような状況にはない」と反論しています。
ここから見えてくるのは、
- 英国:インフレ・成長鈍化のなか、増税を通じた財政健全化を選択
- 日本:成長重視と財政規律の両立を掲げつつ、為替・金利には「必要な手立てで対応」と発言の余地を残す
という、異なるアプローチです。いずれにしても、国債残高と金利上昇リスクをどう管理するかは、先進国共通の大きな課題であることに変わりはありません。
7. 誰がこのニュースから何を学べるか
ここまで見てきた11月26日の世界のニュースは、一見バラバラに見えますが、共通するキーワードがいくつかあります。
- 老朽インフラと気候リスクが重なる「都市の脆弱性」(香港・ガザ)
- エネルギー・資源をめぐる地政学と経済危機(レバノン・キプロス、パレスチナ)
- 関税・統計・増税といった「数字の政策」が、生活と企業経営に与える直接的な影響(米国・英国・セネガル・日本)
- 情報戦と外交の透明性がもたらす同盟国間の信頼問題(ウクライナ和平案)
経営者・ビジネスパーソンにとって
- サプライチェーンや生産拠点を海外に持つ企業は、関税・為替・政治リスクが「同時に動く」時代にいることを前提に、中長期の複数シナリオを準備する必要があります。
- インフラ・建設・エネルギー関連のビジネスでは、単なる採算性だけでなく、安全性・環境配慮・人権尊重が契約条件や評価の重要な要素になっていることを再確認すべきです。
具体例として、日本の中堅メーカーが中国と東南アジアの両方に生産拠点を持っている場合、
- 関税が急に引き上げられても、一方の地域に生産をシフトできるよう、工程や品質基準を統一しておく
- 現地の安全基準・建設基準を、日本よりも厳しめに設定し、事故リスクを事前に減らしておく
といった備えが、今後より重要になってくると考えられます。
投資家にとって
- ウクライナ和平や中東情勢に関するニュースは、エネルギー価格や防衛関連株、新興国債券のリスク・プレミアムに直結します。
- ただし、今回のように「和平案」がロシア寄りだったことが後から判明するなど、ヘッドラインだけでは判断できない局面が増えています。
ESG投資の観点からは、
- ガザやレバノンの復興に関わる企業の評価
- アフリカ諸国の統計整備や財政透明性を支援する国際機関との連携
など、「紛争・危機の裏側で何が行われているか」を丁寧に追うことが、長期的なリターンと社会的インパクトの両立につながっていきます。
一般の読者・学生・研究者にとって
- 香港の火災やガザの洪水は、「ニュース映像の向こう側」で起きている人々の生活を考えるきっかけになります。
- レバノンやセネガルの事例は、「統計や国境線」といった一見抽象的なテーマが、実は人々の日常と密接に関わっていることを教えてくれます。
授業やゼミ、研究テーマとしては、
- 「東地中海ガスがEUのエネルギー地図をどう変えるか」
- 「関税政策と中小企業の倒産リスク」
- 「戦後復興ビジネスの倫理」
といったテーマが、経済学・国際政治学・開発学などの観点から深掘りしやすいトピックだと思います。
8. まとめ:危機と再編の「接点」としての2025年11月26日
最後に、この日のニュースが教えてくれるポイントをあらためて整理します。
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物理的な安全と経済合理性のバランス
- 香港の火災は、コストの安い伝統的工法(竹足場)が、現代の超高層・高密度都市では致命的なリスクになり得ることを示しました。
- 「安くて早い」だけでは立ち行かない時代に、どこまで安全投資を行うかが問われています。
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和平交渉と情報戦の裏側
- ウクライナ和平案を巡るロシア文書の存在は、表に見える「公式声明」の裏で、さまざまな利害と駆け引きが交錯している現実を映し出しています。
- メディア情報を鵜呑みにせず、複数のソースを踏まえて判断する力が、一人ひとりに求められています。
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人道危機と経済崩壊の同時進行
- ガザの豪雨災害は、戦争の被害が「戦闘の終了」で止まらないことを象徴しています。インフラ崩壊と経済の長期停滞は、世代を超えて続く問題になります。
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資源・統計・税制という「数字の政治」
- レバノンとキプロスのガス田、セネガルのGDPリベース、英国の増税、日本の財政・為替議論――いずれも、数字をめぐる政治であり、その結果は市民生活に直結します。
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日本にとっての教訓
- 老朽化した集合住宅、地震や豪雨といった自然災害リスク、少子高齢化と財政赤字、そして国際紛争の余波。
- どれも「遠い国の話」ではなく、今の日本社会が抱える課題と密接に重なっています。
世界のニュースを追うことは、単に「海外で起きた出来事」を知ることではなく、自分たちの社会や暮らしの未来を考える鏡を増やすことでもあります。
今日取り上げた2025年11月26日の出来事が、皆さまそれぞれの視点で、少しでも考えるヒントになればうれしいです。
参考情報(英語・日本語の記事)
- 香港の高層複合住宅で大規模火災、31人死亡か(ロイター日本語)
- Exclusive: US peace plan for Ukraine drew from Russian document, sources say(Reuters)
- Floods swamp homeless Palestinians’ tents in Gaza as winter looms(Reuters/Business Standard経由)
- Lebanon and Cyprus finalize sea border agreement after an almost 20-year impasse(AP News)
- Small US retailers face holiday supply chaos due to Trump tariffs(Reuters)
- Senegal’s debt figures improve after updating economic calculation(Reuters)
- 高市首相、放漫財政を否定 為替は「状況見て必要な手立て講じる」(ロイター日本語)
