世界が注目する「体に悪いと言われる食品添加物」とは?
アメリカ・EU・日本・中国の規制比較と健康リスク
冒頭まとめ:この記事でわかること
「この添加物、本当に体に悪いの?」と不安になって、買い物中にスマホで検索したことはありませんか?
この記事は、小さなお子さんにお弁当やおやつを用意する保護者の方、健康志向で食事を見直したい社会人の方、そして商品開発・外食産業・給食関係の方など、「添加物のリスクを“世界基準”で冷静に知りたい人」に向けて書いています。
とくに、以下のような不安や疑問をお持ちの方に役立つ内容です。
- 「アスパルテーム」「合成着色料」「酸化チタン」「BHA・BHT」「BVO」って、何が問題なの?
- 「EUでは禁止なのに日本ではOK」という話をよく聞くけれど、それは本当?
- ガンや子どもの多動など、病気との関係はどの程度“証拠がある”の?
- できれば危険と言われる添加物を避けたい。代わりに何を選べばいいの?
この記事では、世界的に議論になっている代表的な添加物について、
- なぜ「体に悪い」と言われるのか(メカニズム・研究状況)
- アメリカ・EU・日本・中国の規制や評価の違い
- どんな病気との関連が“どの程度の証拠レベル”で指摘されているのか
- 日常で取り入れやすい代替成分・選び方のコツ
を、できるだけ専門用語をかみ砕きながらお伝えしていきます。
1. 世界共通の「評価のものさし」:危険かどうかは“量”と“証拠”で決まる
まず大前提として、食品添加物は世界共通のルールや機関で評価されているという事実があります。
1-1. JECFA と ADI:世界のベースライン
国際的には、FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議(JECFA)が、食品添加物ごとに動物実験や人でのデータをまとめ、
「一生、毎日摂り続けても健康影響が出ないと考えられる1日の最大量(許容一日摂取量:ADI)」を決めています。
各国(アメリカのFDA、EUのEFSA、日本の厚生労働省、中国の国家衛生健康委員会など)は、このJECFAの評価を参考にしながら、自国の規制を決めています。
1-2. 「ハザード」と「リスク」は別物
よく混同されますが、
- ハザード(Hazard):その物質に「毒性の可能性」があるかどうか
- リスク(Risk):実際の摂取量・使い方を踏まえた「現実の危険度」
は違う概念です。
たとえば、塩や水でさえ極端にとりすぎれば命に関わりますが、通常量なら問題ありません。
添加物も同じで、「実験条件でマイナスの影響が見られた=日常の摂取で必ず危険」という意味ではありません。
1-3. EU とアメリカで評価が違う理由
-
EU:
- 「疑わしきは使わない」という予防原則を重視
- 完全に安全と言い切れない場合、禁止や使用停止に踏み切ることが多い
-
アメリカ(FDA):
- 「現在の摂取量ならリスクは十分低い」と判断されれば使用継続
- 新たなデータや世論を受けて、徐々に再評価・禁止に動くパターンが増えている
-
日本・中国:
- JECFAや他国の動向を参照しつつ、国内データも踏まえて慎重に継続利用 or 見直し
- 日本は比較的「科学的評価に基づき、リスクが許容範囲なら使う」スタイル、中国は GB 2760 という詳細な国家標準で細かく管理しています。
この違いを頭に入れておくと、「なんでEUでは禁止なのに日本で売ってるの?」という疑問が少しスッキリしてきます。
2. 代表的な「体に悪いと言われる添加物」5種類
ここでは、世界的に議論されることが多い以下の5種類に絞って解説します。
- アスパルテーム(人工甘味料)
- 合成着色料(Red No.3, Red 40 など)
- 酸化チタン(E171・二酸化チタン)
- BHA・BHT(合成酸化防止剤)
- BVO(臭素化植物油:Brominated Vegetable Oil)
それぞれについて、「なぜ問題と言われるのか」「病気との関連」「世界の規制」「代替成分」の順で整理します。
3. アスパルテーム:ガンのリスクは?砂糖の代わりとしてのメリットとジレンマ
3-1. 何に使われている?
アスパルテームは、砂糖の約200倍の甘さを持つ人工甘味料で、
- ダイエット炭酸飲料
- ノンカロリーガム、キャンディ
- カロリーオフのヨーグルト・ゼリー
- 一部のプロテイン飲料や医療用栄養食品
などに広く使用されています。
3-2. なぜ「体に悪い」と言われるの?
2023年、WHOの一部であるIARC(国際がん研究機関)が、アスパルテームを**「おそらく発がん性がある可能性(2B)」**に分類したことが大きなニュースになりました。
ただし同時に、WHO/FAOの合同専門家委員会(JECFA)は、**「現状の摂取量であれば、健康リスクは許容できる」**として、
既存のADI(40 mg/kg 体重/日)を維持しています。
要するに、
- 「ハザード(発がん性の可能性)はゼロではないかもしれない」
- しかし「現実的な摂取量ならリスクは低いと見積もられている」
という、ややグレーな位置づけです。
3-3. どんな病気との関連が指摘されている?
-
肝臓がん(とくに肝細胞がん)のリスク上昇の可能性
- 数件の観察研究で、アスパルテームを含む人工甘味料入り飲料の多飲と肝がんリスクとの関連が報告されていますが、「他の生活習慣の影響を切り分けきれていない」「結果が一貫していない」などの問題もあり、**証拠は“限定的”**と評価されています。
-
メタボ・糖尿病との関連
- 人工甘味料全般について、「甘味への強い嗜好を維持してしまい、かえって食習慣が乱れる」「腸内細菌への影響」などが議論されていますが、アスパルテーム単独の決定的な因果関係は、現時点でははっきりしていません。
3-4. アメリカ・EU・日本・中国の評価
-
アメリカ(FDA):
- IARCの2B分類を踏まえても「現行の摂取量では安全」との立場で、使用を認めています。
-
EU(EFSA):
- 過去の詳細な再評価の結果、ADI内での利用は問題ないと判断。IARCの分類後も直ちに規制を変えていません。
-
日本(厚生労働省):
- WHO・IARCの評価を受けて検討を行い、「可能性の指摘はあるが、通常の摂取量で直ちに健康影響が出るものではない」として、使用基準を維持しています。
-
中国:
- 食品添加物の国家標準 GB 2760 に基づき、アスパルテームの使用を認めたうえで、「現行基準では安全」とする公式コメントを出しています。
3-5. 代替成分の例と、現実的な付き合い方
よく使われる代替甘味料の例
- ステビア(ステビオール配糖体)
- エリスリトール
- キシリトール・ソルビトールなどの糖アルコール
- モンクフルーツ(羅漢果)由来甘味料 など
ただし、これらにもそれぞれ、
- 大量摂取でお腹がゆるくなる(糖アルコール)
- 後味や風味の好みが分かれる(ステビアなど)
といった注意点があります。
健康的な付き合い方のサンプル
例:1日の飲み物のうち、
- 「ダイエット炭酸飲料 500 mL → 0〜250 mLに減らす」
- 代わりに「無糖炭酸水+レモン」「麦茶」「水」を増やす
というように、「ゼロ or 100」ではなく、“量を減らす”という考え方が現実的です。
特に小さな子どもや妊婦さんの場合は、「毎日たくさん飲まない」「習慣的な多用は避ける」という目安を意識すると安心度が高まります。
4. 合成着色料:子どもの行動・発達への影響が議論に
4-1. 何に使われている?
- カラフルなキャンディ・グミ
- 清涼飲料水(特に色が鮮やかなもの)
- シリアル・お菓子類
- 一部の加工食品やデザート
など、見た目を鮮やかにするために使われています。例として、Red No.3(赤色3号)、Red 40、Yellow 5, 6などが挙げられます。
4-2. なぜ「体に悪い」と言われるの?
-
動物実験で、一部の色素(たとえば Red No.3)が甲状腺腫瘍などと関連している結果があり、
これを受けてアメリカでは化粧品ではすでに禁止、食品でも2027年以降禁止の方向で規制が進んでいます。 -
子どもの多動性・注意欠如(ADHD様の行動)との関連を示唆する研究があり、
EUでは一部の色素に注意喚起ラベルを義務づけています。
4-3. 病気との関連
-
行動・神経発達への影響(特に子ども)
- 一部の臨床試験で、合成着色料を多く含む飲料・食品の摂取が、多動性や注意力低下と関連した報告があります。
- ただし、食事全体のパターンや砂糖量など、多くの混乱要因があるため、因果関係は明確ではないとされています。
-
アレルギー様症状
- じんましんや喘息のような症状を訴える人もいますが、頻度は低く、体質によるところが大きいと考えられています。
4-4. 各国の規制状況
-
アメリカ:
- 多くの合成着色料が許可されてきましたが、Red No.3は2027年以降食品からも排除予定。
- さらに、Red 40 や Yellow 5 などを含む石油由来の合成色素を段階的にフェーズアウトする方針が2025年に発表されました。
-
EU:
- 多くの色素は使用可ですが、
- 子どもの行動への影響が懸念される色素には警告ラベル
- 一部の色素は使用禁止や強い制限
- これにより、多くの食品メーカーが天然由来色素(ビートレッド、カロテノイドなど)へ置き換えを進めています。
- 多くの色素は使用可ですが、
-
日本:
- 合成着色料の使用は認められていますが、使える品目・量は規格で細かく定められています。
- 一部の色素については、企業側が自主的に「天然色素に切り替える」動きも広がっています。
-
中国:
- GB 2760 に基づき、多くの合成着色料が用途別・使用量上限付きで認められています。
- 近年の改正で、一部の色素について使用基準が見直されるなど、管理は強化傾向です。
4-5. 代替成分と選び方のコツ
天然系の着色料の例
- ベニコウジ色素・コチニール色素(赤)
- ビートレッド(赤〜ピンク)
- クチナシ色素(黄色・青)
- パプリカ色素・カロテノイド類(黄〜オレンジ)
最近は、大手菓子メーカーや飲料メーカーでも「All Natural Colors(天然色素のみ使用)」といった商品が増えています。
ラベルを見るときのサンプル
例:
- 「赤色40号」「黄色5号」など“番号付きの色素”が続いている → 合成着色料
- 「ビートレッド」「パプリカ色素」「紅麹色素」など植物名・原料名が書かれている → 天然系が中心
子ども用のおやつを選ぶときは、「なるべく合成着色料の種類が少ないもの」や「無着色」「天然色素のみ」と書かれたものを選ぶと安心感が高まります。
5. 酸化チタン(E171):EUでは全面禁止、日本では「安全」と評価
5-1. 酸化チタンとは?
酸化チタン(Titanium Dioxide, E171)は、白く不透明にするための着色料として、
- ガム・キャンディ
- ホワイトチョコがけのお菓子
- 焼き菓子・ソース
- サプリメントのカプセル・タブレットのコーティング
などに使われてきました。
5-2. なぜ問題視されたのか?
EUの食品安全機関EFSAは、2021年の再評価で、**「DNAを傷つける可能性(遺伝毒性)を完全には否定できない」として、
酸化チタンは「もはや安全とはみなせない」**と結論づけました。
その結果、
- 2022年2月からの半年間の経過措置を経て
- 2022年8月以降、EU域内では食品添加物としての使用が全面禁止
となりました。
5-3. 病気との関連
-
一部の動物実験や細胞実験で、
- DNA損傷
- 酸化ストレス
- 大腸がん・肝臓への悪影響 などが報告されています。
-
ただし、人を対象とした疫学研究では、まだはっきりした結論は出ていません。
EFSAは「危険性(ハザード)の可能性が否定できない」にもかかわらず、
“どのくらいまでなら安全と言えるか(ADI)”を決められないと判断し、予防的に禁止を選びました。
5-4. 各国の評価の違い
-
EU:
- 2022年以降、食品添加物としては全面禁止。医薬品コーティングなどでの利用については、別途議論が続いています。
-
アメリカ:
- 現時点では、一定の濃度上限(1%未満など)のもとで食品用途を許可。
- 市民団体からの禁止要望や、企業の自発的な不使用の動きが強まっています。
-
日本:
- 厚生労働省は、国内で使用される酸化チタンの粒径などを調査し、「現行の使用基準の範囲内であれば安全性に問題はない」と結論。引き続き使用を認める立場です。
-
中国:
- GB 2760 に従い、着色料としての使用を認めています(用途ごとの上限値あり)。
- 今後、EUの動きを踏まえた再評価が行われる可能性はありますが、現時点で全面禁止には至っていません。
5-5. 代替成分と生活での工夫
酸化チタンの主な役割は**「白さ・ツヤ」**なので、企業は次のような方法にシフトしつつあります。
- カルシウムカーボネート(炭酸カルシウム)
- デンプン系のコーティング
- 「そもそも真っ白にしない」デザイン(原料の色を活かす)
買い物時のサンプルチェック
原材料表示で
- 「酸化チタン」「二酸化チタン」「TiO2」などの表記があるか確認
- 無添加・ナチュラル志向の商品では、代わりに「炭酸カルシウム」や「セルロース」などが使われていることが多い
特に毎日飲むサプリメントのコーティングなどは、長期的な摂取になるため、気になる方は“白いツヤツヤ錠剤”を避けるという選択も一つです。
6. BHA・BHT:酸化防止剤とガン・ホルモン撹乱の懸念
6-1. 何に使われる?
- シリアル・スナック菓子
- インスタント食品
- 一部のバター・ラード製品
- ガム・スープの素 など
油脂の酸化を防ぎ、風味を保つための合成酸化防止剤です。
6-2. なぜ「体に悪い」と言われる?
- BHA(ブチルヒドロキシアニソール)やBHT(ブチルヒドロキシトルエン)は、動物実験で
- 発がん性の可能性
- 甲状腺や肝臓への影響 が指摘されており、一部の国や団体は**「内分泌かく乱物質の疑い」**があるとしています。
6-3. 各国の規制状況
-
EU:
- 一部の食品カテゴリー、とくに乳幼児向け食品などでは使用禁止。
- 他のカテゴリーでも使用量に厳しい上限を設けるなど、制限が強められています。
-
アメリカ:
- 依然として使用は認められていますが、市民団体からの批判や訴訟リスクもあり、メーカーが自主的にBHA/BHT不使用へ切り替える動きが広がっています。
-
日本・中国:
- 使用量と使用できる食品の種類を厳格に定めたうえで使用を認めています。
- 日本では、代わりにビタミンE(トコフェロール)やローズマリー抽出物など天然系抗酸化剤を使う商品も増えています。
6-4. 病気との関連
-
がん:
- 高用量で特定のがんの発生率が上がった動物実験がありますが、
通常の食品中の濃度とのギャップが大きく、人での明確な因果関係は証明されていないというのが、現時点での主流の見解です。
- 高用量で特定のがんの発生率が上がった動物実験がありますが、
-
ホルモンバランス:
- エストロゲン様作用など、内分泌系への影響を示唆するデータがありますが、こちらも決定的とは言えません。
6-5. 代替成分と選び方のサンプル
代替としてよく使われているもの
- 天然混合トコフェロール(ビタミンE)
- ローズマリー抽出物
- 緑茶抽出物
- アスコルビン酸(ビタミンC)など
パッケージ表示の例
- 「BHA・BHT不使用」
- 「合成保存料・合成酸化防止剤不使用」
- 「ビタミンEで酸化防止」
こうした表示のある商品は、BHA/BHTが気になる人にとって選びやすい目印になります。
7. BVO(臭素化植物油):EU・日本・中国ではすでに全面禁止、アメリカも追随
7-1. BVOとは?
BVO(Brominated Vegetable Oil)は、柑橘系のフレーバーを均一に溶かすための乳化剤で、
かつてはオレンジソーダやスポーツドリンクなどに使われていました。
7-2. なぜ強く問題視されるのか?
- 臭素(ブロム)を含むため、神経系・甲状腺・皮膚への悪影響が懸念されてきました。
- BVOを大量に含む飲料を長期間飲んでいた人で、
- 記憶障害
- 震え
- 筋協調運動障害
など「ブロミズム」と呼ばれる中毒症状が報告されています。
7-3. 各国の対応
-
EU:
- 2008年以降、食品添加物として全面禁止。
-
日本:
- 2010年に食品添加物としての使用を禁止。
-
中国:
- GB 2760 の対象外であり、BVOを食品添加物として使用することは認められていません(実質的に禁止)。
-
アメリカ:
- かつては限定的な濃度で使用が認められていましたが、
- 2024年、FDAはBVOの食品添加物としての認可を正式に取り消し、2025年〜2026年にかけて市場からの完全撤退が進んでいます。
7-4. 代替成分
BVOの代替としては、
- ショ糖脂肪酸エステル
- グリセリン脂肪酸エステル
- スクロースアセテートイソブチレート(SAIB)
- グリセリンエステル(エステルガム)
などが使われており、「BVOは実は味に必要なものではなく、技術的には別の添加物で代替可能」とされています。
8. アメリカ・EU・日本・中国の規制をざっくり比較
以下は、代表的な添加物についての大まかな比較表です(細かな用途・濃度は簡略化しています)。
8-1. 主な添加物ごとの規制概要
| 添加物 | アメリカ | EU | 日本 | 中国 |
|---|---|---|---|---|
| アスパルテーム | 使用可(ADI内)・IARC2BだがFDAは安全と見なす | 使用可(ADI内) | 使用可(評価継続) | 使用可(GB 2760に基づく) |
| 合成着色料(Red 3など) | 多くが使用可だが、Red 3は2027年以降禁止予定。その他も段階的に見直し中 | 使用可だが一部は警告ラベル・禁止/大幅制限 | 使用可(用途・量を規格で制限) | 使用可(用途・量をGB 2760で制限) |
| 酸化チタン(E171) | 使用可(見直し・訴訟・企業の自主的撤退が進行) | 食品添加物としては全面禁止 | 使用可(国内データに基づき安全と評価) | 使用可(GB 2760に基づき管理) |
| BHA/BHT | 使用可(監視・自主的な不使用の動き) | 一部用途禁止・厳格な制限 | 使用可(規格基準あり) | 使用可(GB 2760で管理) |
| BVO | 2024年に食品添加物としての認可取り消し → 撤退中 | 2008年から禁止 | 2010年から禁止 | 使用認可なし(実質禁止) |
※表は2025年時点の公表情報・主要トレンドを簡略化したものであり、個別の食品カテゴリーごとの細かい規定までは網羅していません。
9. 添加物と病気:「因果関係」と「関連があるかもしれない」の違いに注意
ここまで見てきたとおり、多くの添加物について、
- 動物実験では悪影響が見られる
- 細胞レベルではDNA損傷や炎症が観察される
- 一部の観察研究では摂取量と病気の発症率に関連が見られる
といったデータがあります。
一方で、人間の食生活は非常に複雑で、「その添加物だけ」を切り出して原因と言い切るのは難しいのが現状です。
9-1. よく話題になる病気との関係
-
がん:
- アスパルテームと肝がん、酸化チタンと大腸がん・肝障害、BHA/BHTと各種腫瘍などが動物実験や一部研究で指摘されています。
- しかし、多くは「高用量・特殊条件」での結果であり、通常の摂取レベルとの距離が大きいことから、
世界の規制機関は「現行の使用条件ではリスクは許容可能」と判断しているケースがほとんどです。
-
子どもの行動・発達:
- 合成着色料と多動性、人工甘味料と食習慣の乱れなどの関連が議論されていますが、
砂糖や睡眠、運動不足などの影響も大きく、単独での因果関係は明確でないとされています。
- 合成着色料と多動性、人工甘味料と食習慣の乱れなどの関連が議論されていますが、
-
ホルモン・代謝異常:
- BVOによる甲状腺機能への影響、BHA/BHTの内分泌かく乱の可能性などが指摘されていますが、
人での大規模・長期のデータはまだ限られています。
- BVOによる甲状腺機能への影響、BHA/BHTの内分泌かく乱の可能性などが指摘されていますが、
9-2. “世界基準”で見たときの現実的な結論
国際機関や各国の規制当局は、現状のエビデンスを総合して、
- 「完全に無害」とは言えない添加物がある
- 特にBVOやE171のように、予防原則に立って禁止された例もある
- しかし、ほとんどの添加物については、**現行の使用条件と摂取量では「リスクは許容範囲」**と判断している
というスタンスです。
10. 日常生活でできる「現実的なリスクコントロール」
ここからは、特に健康意識が高い一般の生活者・保護者の方に向けて、
「不安になりすぎず、でも少し気をつけたい」ための実践的な工夫をまとめます。
10-1. 「毎日・大量」に摂らないことを意識する
- 同じ種類の清涼飲料水や色付きのお菓子を毎日、長期にわたって大量に摂ることは避ける
- とくに子どもは体重が軽く、同じ量でも“濃度”が高くなりやすいため、頻度と量を意識する
サンプルルール
- 甘い清涼飲料:週2〜3回まで
- カラフルなキャンディ・グミ:毎日ではなく「特別なおやつの日」に
- ノンカロリー飲料:水やお茶とバランスを取る(1日の飲み物の半分以上は無糖に)
10-2. 「添加物の数」と「加工度」をざっくりチェック
原材料表示にびっしりとカタカナ名・記号が並んでいる食品は、**超加工食品(Ultra-Processed Foods)**であることが多く、
添加物単体だけでなく、総合的に健康リスクが高まりやすいと指摘されています。
- 原材料欄の最初の3つが「砂糖・油脂・精製小麦粉」で占められているものは、頻度を控えめに
- 「◯◯エキス」「ビタミン◯」程度にとどまり、シンプルな原料が多い商品を優先
10-3. 「代替商品」の具体的な選び方サンプル
同じカテゴリーでも、選び方次第で添加物の内容は大きく変わります。
-
炭酸飲料
- ×:合成着色料+人工甘味料入りの色付き炭酸
- △:砂糖入りだが合成着色料少なめ
- ○:無糖炭酸水+レモン果汁、フルーツ炭酸(果汁メイン・着色料不使用)
-
おやつ
- ×:カラフルなキャンディやグミ(合成色素が多い)
- ○:素焼きナッツ、ドライフルーツ、シンプルなビスケット(合成着色料・BHA/BHT不使用)
-
子どものゼリー・プリン
- ×:強い蛍光色・合成着色料多数
- ○:「果汁◯%」「無着色」「天然着色料」と明記されたもの
このように、「まったくお菓子を禁止する」のではなく、同じジャンルの中で“少しマシな選択”をすることが現実的で続けやすい方法です。
11. どんな人に、どんな意味でこの情報が役立つのか
11-1. 小さな子どもを育てる保護者の方へ
- 子どもは体重が軽く、同じ量を食べた場合でも大人より体重あたりの負担が大きくなりやすいです。
- また、味覚や食習慣が形成される大事な時期なので、**「強い甘味や派手な色に慣れすぎない」**ことが、長期的な健康にもつながります。
この記事で紹介したような
- 合成着色料が少ない/ないおやつ
- ノンカロリー飲料の飲みすぎを控える
- 真っ白・ツヤツヤの加工度が高いお菓子を“毎日”にしない
といった工夫は、発がんリスクだけでなく、将来の生活習慣病・肥満予防・味覚の育ちにもプラスになります。
11-2. 健康を意識し始めた社会人・高齢者の方へ
- ダイエット目的で、アスパルテームなどの人工甘味料飲料に頼りすぎると、
「結局、他の食事が甘め・濃い味になる」「お菓子がやめられない」といった食習慣全体の歪みにつながることもあります。 - また、高齢者は腎機能や肝機能の低下も考慮し、**“ほどほどの多様な食品”**を心がけることが大切です。
この観点からも、「ゼロカロリー飲料に頼り切らず、水・お茶の割合を増やす」ことは、非常に重要な実践ポイントになります。
11-3. 食品メーカー・外食産業・給食関係者の方へ
世界的には、
- EUの予防原則
- アメリカでのBVO禁止・Red 3禁止、合成色素フェーズアウトの流れ
- 中国のGB 2760改正による規制強化
- 日本国内消費者の“無添加・クリーンラベル”志向の高まり
などを背景に、**「世界で通用する配合設計」**が求められる時代になっています。
- BVO・E171のように将来的にリスクが高いと見込まれる添加物を早期に代替すること
- 合成着色料やBHA/BHTを減らし、天然由来・物理的工夫(包装・ガス置換など)で品質を保つこと
- 「なぜこの添加物を使っているのか」「安全性はどう評価されているのか」を、消費者に分かりやすく説明できる表示・コミュニケーションを整えること
が、レピュテーションリスクを減らし、中長期的にブランド価値を高める鍵になります。
12. まとめ:恐れすぎず、でも“選び方”を知っておくことが世界基準のリテラシー
最後に、本記事のポイントを整理します。
-
世界基準の評価は「量」と「証拠の質」で決まる
- JECFAや各国の評価機関は、動物実験・人のデータを踏まえてADIなどを設定し、
「現行の使用条件と摂取量ならリスクは許容範囲」と判断している添加物がほとんどです。
- JECFAや各国の評価機関は、動物実験・人のデータを踏まえてADIなどを設定し、
-
EUは予防原則を重視し、アメリカ・日本・中国よりも早く禁止に踏み切る傾向
- BVOやE171などは、EUで早期に禁止 → その後、アメリカも追随しつつあります。
-
「体に悪いと言われる」代表的な添加物と、その代替策を把握しておくと選びやすい
- アスパルテーム:ステビアやエリスリトールなどへの代替
- 合成着色料:天然色素や“そもそも派手な色をつけない”設計
- 酸化チタン:炭酸カルシウムやデンプン系コーティング
- BHA/BHT:ビタミンE・ローズマリー抽出物など
- BVO:他の乳化剤や配合工夫で代替可能
-
病気との関係は「完全に安全」とも「すぐ危険」とも言えない“グレーゾーン”が多い
- 発がん性・行動への影響・ホルモン撹乱などが指摘されていますが、
多くは高用量の動物実験や、混乱要因の多い観察研究に基づいています。
- 発がん性・行動への影響・ホルモン撹乱などが指摘されていますが、
-
私たちにできる最も現実的な対策は、「頻度と量を抑え、よりシンプルな食品を選ぶ」こと
- とくに、子ども・妊婦・持病のある方は、カラフルで甘い超加工食品を“毎日”たくさん摂らない工夫が有効です。
参考文献・情報源(日本語・英語混在)
- WHO / IARC & JECFA: Aspartame hazard and risk assessment results released
- American Cancer Society: Aspartame and Cancer Risk
- EFSA: Titanium dioxide (E171) no longer considered safe when used as a food additive
- European Commission: Re-evaluation of food additives
- US FDA: Revocation of authorization for use of brominated vegetable oil in food
- RegAsk: Food additives and ingredients banned in Europe
- Japan MHLW: Reports on titanium dioxide used as a food additive in Japan
- China GB 2760-2024 National Food Safety Standard for Uses of Food Additives
- Environmental Working Group: Despite health harm concerns, BHA and BHT remain in food
- Chemical & Engineering News: Goodbye brominated vegetable oil
