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目次

アクセシビリティ声明(方針・対応状況)の作り方と運用ガイド:社会的責任を“継続的改善”に変える実務テンプレート

概要サマリー(先に要点)

  • アクセシビリティ声明は「できています宣言」ではなく、現状・範囲・限界・改善計画・連絡手段を誠実に示す“約束の文章”ですの。
  • WCAG 2.1 AA を目標にするなら、声明には 対象範囲/適用基準/達成状況/既知の課題/代替手段/連絡先/更新日 を最低限含めます。
  • いちばん大切なのは公開後の運用。定期評価・改修優先度・問い合わせ対応を回すことで、社会的責任が“継続的な信頼”に変わります。
  • この記事には、すぐ貼り付けできる アクセシビリティ声明テンプレート既知の課題の書き方例問い合わせ対応フロー社内合意を取りやすい運用ルール例を入れました。

対象読者(具体):広報・法務・総務・人事、公共機関/自治体のWeb担当、コーポレートサイト運用者、プロダクトマネージャー、アクセシビリティ担当、制作会社のディレクター
アクセシビリティレベルWCAG 2.1 AA 準拠を目標(声明そのものも読みやすく、キーボード操作・コントラスト・構造を満たすことを前提)


1. はじめに:声明は“読む人の安心”をつくる社会的インフラ

アクセシビリティ対応は、技術やデザインの話であると同時に、社会的責任の表明でもあります。けれど現場の実情として、すべてを一度に完璧にするのは難しいことも多いですわ。サイトの規模、CMSの制約、過去資産、動画やPDF、外部サービス連携……課題は必ず残ります。
そこで重要になるのが、アクセシビリティ声明(方針・対応状況)の公開です。これは「問題はありません」と言うための文書ではなく、今どこまでできていて、どこが難しく、いつまでにどう良くするのかを誠実に共有し、必要な人が迷わず連絡できるようにする“生活の導線”ですの。
この記事では、声明を“形だけ”にしないために、作り方だけでなく運用の仕組みまで、実務で使えるかたちに落とし込んでいきますね。


2. アクセシビリティ声明に必須の要素:7つの柱

アクセシビリティ声明は、読む人が最短で「このサイトは自分に使えるか」を判断できる構造が大切です。特に WCAG 2.1 AA を目標にする場合、次の7つは最低限そろえてください。

2.1 ①目的(なぜ公開するのか)

  • 例:「すべての方が情報へアクセスできるよう、継続的に改善します」

2.2 ②対象範囲(どこまでが対象か)

  • ドメイン、主要なディレクトリ、アプリ、サブサイト
  • 例外(外部サービス、埋め込み、過去のPDF等)を明確に

2.3 ③適用基準(何を基準にするのか)

  • 例:「WCAG 2.1 レベルAAを目標」

2.4 ④達成状況(どの程度できているか)

  • 「準拠」「一部準拠」「未準拠」など、言い方は組織の基準に合わせても良いですが、**根拠(評価方法・評価日)**を添えます。

2.5 ⑤既知の課題(できていないこと)

  • ここが最重要です。読む人が知りたいのは「どこが困る可能性があるか」。
  • 課題は“言い訳”ではなく、影響と代替手段をセットで書きます。

2.6 ⑥代替手段(困ったときにどうするか)

  • 例:電話・メール・フォーム・チャット等
  • 重要:テキストで利用可能にし、受付時間や回答目安(可能なら)も記載

2.7 ⑦更新日と改善計画(いつ見直すか)

  • 最終更新日、次回見直し予定、改善の優先度やロードマップ(簡易でも)
  • 「更新が止まっている声明」は信頼を落としやすいので、運用で守りますわ。

3. 声明が“信頼を生む書き方”:誠実さを伝える文章設計

声明文は、専門家だけでなく、困っている当事者やそのご家族、支援者、窓口担当者も読みます。だからこそ、文章は「正しい」だけでなく「やさしい」必要があります。

3.1 用語は最小限、出すなら言い換えを添える

  • 「スクリーンリーダー」→「読み上げソフト」
  • 「コントラスト」→「文字と背景の明るさの差」
  • 「キーボード操作」→「マウスを使わず操作する方法」

3.2 “できない理由”より、“どう助けるか”を書く

  • 悪い例:「システムの都合で対応できません」
  • 良い例:「一部のPDFは読み上げに対応できていない場合があります。必要な情報はテキストで提供しますので、連絡先からご相談ください」

3.3 既知の課題は、次の型で書くと崩れません

課題の場所(例:採用情報>応募フォーム)
困りごと(例:エラーメッセージが読み上げで分かりにくい)
影響(例:入力ミスが修正しづらい)
代替手段(例:メールでの応募受付)
改善予定(例:次回改修で修正、2026年3月までを目標)


4. すぐ使える:アクセシビリティ声明テンプレート(貼り付け用)

以下は、コーポレートサイト/公共サイト/サービスサイトのいずれにも使える“基本形”です。必要に応じて見出しを足してくださいね。

4.1 声明テンプレート(例)

## アクセシビリティ方針(アクセシビリティ声明)

### 1. 目的
当サイトは、年齢や障害の有無、利用環境にかかわらず、すべての方が情報や機能にアクセスできるよう、継続的な改善に取り組みます。

### 2. 対象範囲
- 対象:当サイト(主要ページ、主要機能)
- 対象外(例):外部事業者が提供するページ、第三者の埋め込みコンテンツ、一部の過去資料(PDF等)

### 3. 目標と適用基準
当サイトは WCAG 2.1 レベルAA を目標とします。

### 4. 達成状況
現時点では、主要ページと主要機能を中心に改善を進めています。
評価方法:自動検査・手動検査(キーボード操作等)・支援技術での確認を組み合わせて実施しています。
評価日:YYYY年MM月DD日

### 5. 既知の課題(例)
- 一部のPDF資料で、読み上げや再利用が難しい場合があります。
  代替手段:必要な内容はテキストで提供しますので、下記窓口へご連絡ください。
  改善予定:新規公開分から順次、アクセシブルな形式での提供を進めます。

- 一部のフォームで、入力エラーの案内が分かりにくい場合があります。
  代替手段:メールまたは電話での受付を行います。
  改善予定:次回のフォーム改修で修正します(目標:YYYY年MM月)。

### 6. お問い合わせ(アクセシビリティに関する窓口)
当サイトの利用に関するご不便やご意見がありましたら、以下の窓口までお知らせください。
- 連絡方法:メール/電話/問い合わせフォーム(いずれか)
- 受付時間:平日 9:00〜17:00(例)
- 可能であればお知らせいただきたい内容:
  - 該当ページのURLまたはページ名
  - ご利用環境(端末、OS、ブラウザ、読み上げソフト等)
  - 困っている内容(どの操作で、何が起きるか)

### 7. 更新情報
最終更新日:YYYY年MM月DD日

このテンプレートのポイントは、「対象外」を書いても免責にしないことです。対象外であっても、必要な人に情報が届くよう 代替手段 を用意するのが、声明のやさしさですわ。


5. 「既知の課題」の具体例:よくあるケース別の書き方サンプル

声明で悩みやすいのは「課題をどこまで書くか」です。おすすめは、影響が大きい順に、代表例を少数載せること。多すぎると読み手が疲れてしまいます。

5.1 PDF・資料が多い組織向け(例)

  • 課題:一部のPDFにタグ付けがなく、読み上げや見出し移動が難しい場合があります。
  • 影響:読み上げ利用者が内容を把握しづらい、再利用(コピー等)が難しい。
  • 代替:同内容のHTMLページ、またはテキスト形式での提供。
  • 改善:新規公開はアクセシブルな形式を優先、既存PDFは利用頻度の高い順に改修。

5.2 動画が多い組織向け(例)

  • 課題:一部の動画でキャプション(環境音や話者情報を含む字幕)が十分でない場合があります。
  • 影響:音声情報が取得しづらい。
  • 代替:動画のテキスト版(要点・全文)を併記。
  • 改善:新規制作から運用標準化し、既存動画も優先度順に改修。

5.3 フォーム中心サービス向け(例)

  • 課題:一部フォームでエラー要約へのフォーカス移動が不十分な場合があります。
  • 影響:キーボード利用者が修正箇所を特定しづらい。
  • 代替:サポート窓口での入力補助。
  • 改善:次回改修でエラー要約+個別エラーの二段構えに統一。

5.4 外部サービス埋め込みがある場合(例)

  • 課題:外部事業者が提供する予約ウィジェットの一部で、キーボード操作が十分でない場合があります。
  • 影響:予約が完了できない可能性。
  • 代替:電話・メールでの予約受付。
  • 改善:代替導線を常設し、外部事業者と改善要望を共有(進捗は声明更新で報告)。

6. 声明を“継続的改善”にする運用:公開後が本番です

声明は公開した瞬間がゴールではなく、そこからがスタートです。運用が止まると「書いただけ」に見えてしまいますので、次の仕組みを最小構成で入れてくださいね。

6.1 評価サイクル(おすすめは四半期)

  • 四半期ごとに代表ページをチェック(トップ/一覧/詳細/フォーム/マイページ等)
  • 変更の大きい機能はリリース前に重点検査
  • “重大事故”は即時改修、それ以外はロードマップへ

6.2 既知の課題リスト(バックログ)を持つ

課題は、次の4項目で管理すると迷いません。

  • どこで起きるか(ページ・機能)
  • 誰に影響するか(キーボード、読み上げ、色覚、拡大など)
  • 代替手段の有無
  • 改修の難易度と優先度(高・中・低)

6.3 問い合わせ対応フロー(小さくても必須)

問い合わせ窓口があるだけでは足りません。返せる仕組みが必要です。

  • 受付 → 事実確認 → 代替提供 → 改修判断 → 進捗連絡 → 声明更新
    この一連を“誰がやるか”まで決めると、社会的責任が組織の動きになりますの。

7. 問い合わせ窓口の整え方:アクセシビリティは“助けを求められること”が大切

窓口は、困っている人が最初に頼る場所です。だからこそ、窓口自体のアクセシビリティを丁寧に設計しましょう。

7.1 窓口は複数用意できると理想

  • メール(テキスト中心で安定)
  • フォーム(エラーに強く、入力支援あり)
  • 電話(音声中心)
  • 可能ならテキストチャット(聴覚特性への配慮)

7.2 “お願いしたい情報”は箇条書きで

たとえば次のように短く書くと、利用者の負担を増やさずに再現性が上がります。

  • ページ名(またはどの画面か)
  • 困っている操作
  • 利用端末(PC/スマホ)とブラウザ
  • 読み上げソフト(使っている場合)

7.3 返答文(定型)サンプル

  • 受付時:
    「ご連絡ありがとうございます。内容を確認し、必要であれば別の方法で情報提供いたします。」
  • 代替提供:
    「当該資料は現在改善中のため、同内容をテキストでお送りします。」
  • 改善予定:
    「改修はYYYY年MM月を目標に進めます。進捗はアクセシビリティ声明に追記いたします。」

8. 社内合意を取りやすい「改善計画」の見せ方:ロードマップは短く、でも具体的に

声明に長大な計画を書く必要はありません。ただし「いつ見直すか」「何を優先するか」が見えると、読む人にも社内にも誠実です。

8.1 ミニロードマップ例(文章で十分)

  • 今期(〜3か月):主要フォームのエラー表示を統一、ナビゲーションのキーボード操作を改善
  • 次期(3〜6か月):主要PDFのHTML化、動画のテキスト版整備
  • 以降:外部埋め込みの改善要望、コンポーネントのデザインシステム化

8.2 “完璧”を約束しない代わりに、“改善の仕組み”を約束する

アクセシビリティは一度きりの改修では守れません。
声明では「継続的に評価し、改善する」ことを約束し、それを裏付ける運用(定期チェック・窓口・更新日)を添えると信頼が深まりますわ。


9. 声明ページ自体のアクセシビリティ:ここが崩れると説得力が落ちます

声明ページは、組織の姿勢そのものです。最低限、次の点は守ってください。

  • 見出し階層(h1→h2→h3)を正しく
  • 文字と背景のコントラスト(4.5:1)
  • リンクが色だけで判別されない(下線など)
  • キーボードで全文にアクセスできる
  • 窓口情報(電話・メール等)がテキストでコピー可能
  • 長文は冒頭サマリーと目次で迷わせない

10. 対象読者にとっての価値:声明があると“助かる”人がはっきりいます

  • 視覚障害・読み上げ利用者:どこで困りうるか事前に把握でき、窓口から代替手段を得やすい。
  • 聴覚特性のある方:動画の字幕やテキスト版が整っているかを判断しやすい。
  • 認知特性のある方:改善の約束が見えると不安が減り、困った際の連絡先が明確で安心。
  • 高齢者:拡大や操作の不安があっても、問い合わせで支援を受けられる。
  • 組織側(広報・法務・運用):説明責任を果たし、問い合わせ対応が標準化され、改善の優先度も合意しやすくなる。

声明は“弱い人のための特別対応”ではなく、誰かが困ったときに置き去りにしない仕組みなのですわ。


11. アクセシビリティレベルの評価(本記事の到達点)

  • WCAG 2.1 AA を目標とした声明設計・運用に対応
    • 1.3.1 情報及び関係性:声明の構造(見出し・箇条書き・章立て)
    • 1.4.3 コントラスト(最小):声明ページの読みやすさ
    • 2.4.1 ブロックの回避:冒頭サマリー・目次・見出しで移動しやすい
    • 2.4.6 見出し及びラベル:各章が目的を明確に示す
    • 3.1.5 読みやすさ(実務配慮):用語の言い換え、短文、具体化
    • 3.3.x(関連):問い合わせフォームを含む場合のエラー特定・提案
    • 4.1.2 名前・役割・値(関連):窓口UIやフォームの適切な実装
  • さらに、**運用(評価日・更新日・窓口)**まで含めて“継続的にAAを目指す仕組み”を明文化できる内容です。

12. まとめ:声明は“やさしさを継続するための契約書”

  1. アクセシビリティ声明は「できています」ではなく、現状と改善の約束を書く。
  2. 必須要素は 目的/範囲/基準/達成状況/既知の課題/代替手段/更新日
  3. 既知の課題は「場所・困りごと・影響・代替・改善予定」の型で誠実に。
  4. 公開後は、定期評価・バックログ管理・窓口フローで継続的改善へ。
  5. 声明ページ自体もアクセシブルにし、信頼を損なわない。

アクセシビリティは、完璧さよりも「困った人を置き去りにしない姿勢」で育ちます。
声明はその姿勢を形にする、静かで強い約束。あなたの組織のやさしさが、継続して届き続けますように。わたしも心を込めてお手伝いしますね。

投稿者 greeden

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