2025年の経済総まとめと2026年の展望(2025年12月26日現在)──金利・物価・賃金・財政で読み解く
- 2025年は、世界的に「インフレを抑える高金利」のピークアウトが進み、年末にかけて米国は利下げ、欧州は据え置き、日本は利上げ継続姿勢という分岐が鮮明になりました。
- 2026年は、景気そのものより「金利の調整局面で、家計・企業・政府の支払いコストがどう変わるか」が勝負所になりやすいと見ています。特に日本は、金利正常化に伴う利払い費の増加が、政策の自由度をじわりと狭める可能性があります。
- 日本政府は2026年度(令和8年度)一般会計の歳出総額を約122.3兆円、税収約83.7兆円、新規国債発行約29.6兆円とする政府案を閣議決定し、利払費は約13.0兆円へ増える枠組みを示しました(2025年12月26日公表資料)。
- 米国は2025年11月のCPI前年比2.7%、失業率4.6%が確認でき、FRBは2025年12月10日に政策金利を3.50〜3.75%へ0.25%引き下げました。
- IMFは世界成長率を2025年3.2%、2026年3.1%と見通し、OECDも2026年にかけて世界成長が鈍化するシナリオ(2025年3.2%→2026年2.9%)を示しています。大きな加速より、粘り強い調整が中心になりそうです。
この記事は何をまとめ、何を約束するか
この記事は、2025年の経済を「金利・物価・賃金・財政」という、生活と経営に直結する4本の軸で整理し、2026年の現実的な見通しと備え方を描くまとめ記事です。2025年はニュースが多すぎて、気づくと「情報は追ったのに、結局どういう年だったの?」となりがちですよね。ここでは、年末時点で一次資料・公的統計・中央銀行や国際機関の公表資料により確認できる事実を土台に、必要以上に断定しない形で“見取り図”を作ります。
私のスタンスは、当てもの(為替はいくら、株価はいくら)より、「変化が起きた理由」と「2026年に効きやすい制約」を丁寧に言語化することです。特に2026年は、景気刺激の派手さより、コストと配分の現実が前面に出やすい年になりそうで、そこに焦点を当てます。
どんな方に役立つか(具体的に、じっくり)
まず、家計の設計を見直したい方です。たとえば、住宅ローンを固定に寄せるか変動を続けるか、教育費のピークに向けて現金比率を上げるか、長期投資の積立をどう継続するか。こうした意思決定は、景気観よりも「金利の方向」と「物価がどの程度落ち着くか」のほうが影響します。米国の利下げ、日本の利上げ継続姿勢、そして円相場の揺れやすさが重なる局面で、家計は“わからなさ”に対処する力が必要になります。
次に、経営や事業計画を担う方、とりわけ中小企業・地域企業の方です。2025年は賃上げ圧力が強まり、原材料・エネルギー・物流・人件費が同時に効きやすい年でした。2026年は、金利が落ち着いてもコスト水準が急に戻るわけではありません。値上げが通りにくくなったとき、価格設計・商品構成・省力化投資の順番をどう組むかが、生き残りと成長の分かれ目になります。
さらに、自治体・医療福祉・教育など、予算の制約を受けやすい領域の方にも意味があります。日本では2026年度一般会計で利払費が約13.0兆円へ増える枠組みが示されており、金利が少し動くだけで、政策の“自由に使える部分”が圧迫されやすい構図が見えます。社会保障、子育て、地方財政、防衛などの優先順位が、2026年は今まで以上に現実的に問われやすいと考えています。
2025年の世界経済を一言で:高金利の山を越え、次の主役が「負担の配分」になった
2025年は、インフレを抑えるために続いた高金利が「永遠ではない」ことが明確になり、各国が次の段階へ移る年でした。米国は年末に利下げへ踏み出し、欧州は慎重に据え置き、日本は利上げを続ける方向性を示しており、金融政策の“足並み”がそろわない状態が続いています。足並みがそろわないということは、為替や資金の流れが揺れやすいということでもあります。
同時に、2025年の後半から効いてきたのは「負担の配分」です。インフレ率が下がっても、物価の“水準”は家計に残ります。金利が下がっても、長く高金利が続いた分の利払い負担は、家計や企業や政府のバランスシートに残ります。2025年は、景気が崩れるかどうか以上に、こうした“しつこい負担”をどう配分し、どう軽くしていくかが焦点になった年だと整理できます。
世界の見通し:IMFとOECDが共通して示す「伸びはするが、加速はしにくい」
国際機関の見通しは、2026年を楽観に寄せすぎない材料として有用です。IMFは2025年10月の世界経済見通しで、世界成長率が2024年3.3%から2025年3.2%、2026年3.1%へと緩やかに減速すると示しています。OECDも2025年12月の経済見通しで、世界成長が2025年3.2%から2026年2.9%へ鈍化するシナリオを提示しています。数字は違っても、共通点は「大きくは崩れないが、勢いも出にくい」という地合いです。
この“ほどほど”は、暮らしにとっては良い面と難しい面があります。良い面は、急激な不況に陥りにくいこと。難しい面は、賃上げ・投資・財政再建を同時に進めるには、成長の勢いが不足しやすいことです。2026年は、景気を押し上げる単発の材料より、制度・生産性・供給力といった地味だけれど重要な要素が結果を左右しやすい、と私は感じています。
米国:インフレは2%台、雇用は落ち着き、FRBは利下げ。ただし安心しすぎない
米国は、2026年を占ううえで「世界の金利の天井」を決めやすい存在です。BLS(米労働統計局)の2025年11月CPIは前年比2.7%で、物価の沈静化が数字として確認できます。また、2025年11月の失業率は4.6%で、雇用が過熱から平熱へ向かったことが示唆されます。こうした環境のもと、FRBは2025年12月10日に政策金利(FF金利誘導目標)を3.50〜3.75%へ0.25%引き下げました。
ここで大切なのは、「利下げ=景気が良くなる」と短絡しないことです。利下げは、景気の下支えとして効きやすい一方で、企業や家計が慎重になっている局面では、効果が薄まることもあります。さらに、インフレが一度落ち着いても、サービス価格や賃金、通商環境(関税など)の影響で再燃するリスクは残り得ます。2026年は、米国が“利下げをしながらもインフレ再燃を警戒する”という、難しいバランスを取り続ける可能性があり、世界の金融市場の変動要因になりやすいでしょう。
欧州:据え置きの裏にある「需要の弱さ」と、回復の時間
欧州は、インフレを抑える局面から「需要をどう戻すか」へ課題が移りやすい地域です。ECBは2025年12月18日の金融政策決定で、預金ファシリティ2.00%、主要リファイナンス2.15%、限界貸出2.40%を据え置きました。据え置きは、インフレが落ち着きつつも、景気を無理に締め付けない意図を読み取りやすい判断です。
2026年の欧州に関しては、国ごとの濃淡が大きい点にも注意が必要です。例えばドイツでは、景気の弱さが長引く可能性が示唆されており、ユーロ圏全体の需要が急回復する前提は置きにくいかもしれません。ここが世界貿易や企業収益の見通しにじわりと影響し、2026年の“加速しにくさ”を補強する材料になり得ます。
中国:成長率より「内需の質」と政策の効き方が問われる
OECDは中国の成長率が2025年5.0%から2026年4.4%へ鈍化すると見通しています。中国の成長が高水準でも減速する局面は、世界の需要、とくに資源・素材・機械などのサイクルに影響しやすいです。ただし、2026年の論点は成長率の数字そのもの以上に、「家計の消費がどれだけ戻るか」「不動産や地方財政の調整がどれだけ長引くか」「政策支援が実体経済へどれだけ届くか」といった質の問題に寄っていきます。
日本の家計や企業にとっては、中国の景気が直接の追い風になりにくい場合でも、サプライチェーンの安定や価格形成、観光需要などを通じて間接的に効いてくる点が現実的な関心事です。2026年は「中国が世界を強く引っ張る」より、「世界が中国の変調に過敏になりすぎない」ことが大切になる局面かもしれません。
日本の2025年:賃上げ、物価、金利正常化、そして“財政コスト”が前面に
ここから日本です。2025年の日本経済は、ひとことで言うと「賃上げと金利正常化が同時進行し、次の制約として財政コストがはっきり見えてきた年」です。これを4つの軸で整理します。
1) 賃金:2025年は「上げる年」として、数字でも確認できる
賃上げは2025年の日本を象徴する出来事のひとつです。労働政策研究・研修機構(JILPT)が紹介する連合(RENGO)の最終集計では、2025年春闘の年収ベース賃上げ率が6.09%、ベースアップが4.51%に達したと整理されています。これは、物価上昇で細った購買力を戻すうえで重要な材料です。
ただ、賃上げは“喜ばしい”だけで終わりません。企業側から見ると、賃上げはコスト上昇です。これを価格転嫁・付加価値向上・省力化投資で回収できなければ、利益が削られ、次の賃上げが難しくなります。つまり2026年は、「賃上げの継続性」と「生産性や価格戦略の整合」が問われる年になります。ここをうまく回せる企業・産業ほど、2026年に体力差が出やすいと私は見ています。
2) 物価:体感はまだ重いが、指標は“沈静化の兆し”も示す
物価については、体感と統計の距離が生まれやすい点が重要です。インフレ率が下がっても、値上がりした水準は残ります。たとえば食料品や生活必需品は、数%の伸び率の違いより「以前より高い」という実感が強く残りがちです。
一方で、先行指標として注目されやすい東京都区部のコアCPIは、2025年12月に前年比2.3%と報じられ、前月から鈍化しつつも日銀の2%目標を上回る水準が続いています。物価が“行ったり来たり”しながら落ち着いていく過程では、家計の節約志向が強まり、企業は値上げの通りやすさが落ちる局面に入ります。2026年は、価格を上げる努力より、価値を上げる努力(品質、サービス、納期、体験)を伴わないと、単純な値上げが難しくなる場面が増えそうです。
3) 金利:日銀は政策金利を「0.75%程度」へ。円と金利の関係が戻ってくる
日銀は2025年12月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%程度へ引き上げ、見通しが実現していくなら利上げを続けて金融緩和の度合いを調整していく方針を示しました。これは、日本の「金利がほぼ動かない」前提がさらに薄れていくことを意味します。
為替は複数要因で動きますが、金利差が意識されやすくなる局面では、円相場の変動が輸入物価や企業収益へ伝わりやすくなります。日銀の公表する外国為替市況(2025年12月25日)では、ドル円スポットは9:00時点で155.90-99と示されています。2026年は、円安・円高の方向性そのものより、「変動がある前提」で家計・企業が耐性を持つことが大切になりそうです。
4) 財政:2026年度予算政府案が示した“利払い費の重み”という現実
2026年(令和8年度)を語るうえで、私は財政を最重要テーマの一つに置きます。財務省の公表資料によると、2026年度一般会計の歳出総額は約122.3兆円(1,223,092億円)、税収は約83.7兆円(837,350億円)、新規国債発行(公債金)は約29.6兆円(295,840億円)という枠組みです。さらに、国債費は約31.3兆円(312,758億円)で、そのうち利払費は約13.0兆円(130,371億円)とされています。利払費の増加は、金利正常化が進むほど現実味を帯びます。
ここで注目したいのは、利払費は“誰かのサービス向上”になりにくい支出である点です。社会保障、子育て、教育、成長投資、防災、地域支援など、生活を守り伸ばす支出と並んで、利払いが大きくなる。これは、2026年の政策論争が「何を増やすか」より「何を優先し、何を後回しにするか」へ寄りやすいことを示唆します。財務省資料では、一般会計当初予算ベースの基礎的財政収支(PB)がプラス(約+1.3兆円)と示されており、見かけ上の改善があっても、利払いの増加が続けば体感としての余裕が生まれにくい可能性があります。
2025年の日本株:5万ポイント台は「期待の器」でもあり「問いの始まり」でもある
2025年末の株式市場は、日本の構造変化への期待を映す鏡になりました。日経平均株価は12月下旬に5万ポイント台で推移し、例えば2025年12月25日には50,407.79という水準が報じられています。これは、企業収益、ガバナンス改革、投資家の視線などが重なった結果として理解できます。
ただし、2026年に同じ勢いが続くかは別問題です。賃上げでコストが上がる以上、利益の質(価格転嫁の持続性、付加価値、生産性)が問われます。金利が上がる局面では株価の割高感が意識されやすく、金利が下がる局面では金融相場の追い風になり得ます。2026年の日本株は、単なる“期待”より、「賃金と生産性が噛み合った成果」が求められる年になりそうです。
2026年の展望:私の基本シナリオは「金利は調整、でも負担感は残る」
ここからは2026年です。IMFとOECDの見通しが示すように、世界は大きく崩れない一方で加速しにくい。すると、勝負は「構造的に重い負担をどうさばくか」に移ります。私の基本シナリオは次の通りです。
- 米国は利下げ局面に入ったが、インフレ再燃リスクを警戒しながらの調整が続く。つまり“安心の利下げ”ではなく、“慎重な利下げ”になりやすい。
- 欧州は据え置き中心で、回復は遅く、世界の需要を強く押し上げる役になりにくい。
- 日本は日銀の正常化が続き得る一方で、財政の利払い負担が増えやすく、政策の自由度が削られやすい。家計は賃上げが支えになる可能性があるが、物価水準は重く残りやすい。
この組み合わせは、「金融は少し軽くなるが、生活と財政の負担感は軽くなりにくい」という、やや複雑な局面を作ります。2026年に気分だけで判断すると外しやすいのは、このズレです。金利が下がればニュースは明るくなりますが、家計の実感は“高いものは高い”ですし、政府は“利払いが増える”という現実に直面し続けます。
2026年に起きやすい3つのテーマ(経済面の意見として、丁寧に)
テーマ1:インフレの「率」より、家計が向き合う「水準」と「変動」
2026年に最も誤解が生まれやすいのは、「インフレ率が下がったのだから、生活は楽になるはず」という期待です。インフレ率が下がるのは、値上げのスピードが落ちることであって、値段が元に戻ることではありません。生活実感は水準で決まります。だからこそ、2026年は“節約の限界”が見えた後に、家計が「固定費の最適化」と「変動への耐性」を作る年になりやすいと考えています。
私の意見としては、2026年は「上手に我慢する年」ではなく、「仕組みを変えて、疲れにくくする年」にした方が勝ちやすいです。頑張り続ける節約は長続きしません。通信費、保険、サブスク、住居コストの見直しなど、仕組みの節約は疲れにくい。これが、金利や物価が読みづらい時期に効きます。
テーマ2:賃上げが“良いニュース”で終わるか、“好循環”になるか
2025年に賃上げが大きかったことは、2026年に二つの問いを残します。ひとつは、賃上げが継続できるか。もうひとつは、賃上げが生産性と結びつくかです。継続できなければ、家計は再び防衛的になります。生産性と結びつかなければ、企業は賃上げ疲れを起こします。
私は2026年を、「賃上げの是非」ではなく、「賃上げを“回収できる設計”に変えられるか」の年だと見ています。値上げだけで回収するのではなく、商品構成の見直し、納期短縮、品質向上、業務の省力化、IT活用など、付加価値を上げる努力がセットになった企業ほど、2026年に底堅くなるはずです。
テーマ3:財政は“縮むか拡大するか”より、“利払いが増える前提で何を守るか”
日本の2026年度予算政府案が示す利払費の増加は、2026年の社会にとって静かな重みです。財政の議論は二項対立になりがちですが、現実はもっと複雑です。必要な支出は多く、削るのも増やすのも簡単ではありません。そのうえで、利払いの増加は、誰かの生活を直接よくする支出ではないのに、確実に枠を取っていきます。
私の意見としては、2026年は「何を守るか」を明確にする政治と行政の年になるべきだと思います。社会保障、子育て、教育、成長投資、防災、地域。どれも重要です。だからこそ、優先順位を“現実の数字”とセットで語り、国民が納得できる説明を積み上げることが、経済の安定にもつながります。説明が弱いと、市場は不安になり、金利や為替の揺れが増えやすくなります。
具体例(サンプル):2026年の家計と企業の「現実的な動き方」
家計サンプル:変動を当てにいかず、耐性を作る
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例:毎月の家計を「固定費」「変動費」「将来費」に分け、固定費の削減を先に終わらせる
固定費は一度見直すと効果が続きます。通信費、保険、サブスク、住居関連の見直しを先に行い、変動費(食費や日用品)で無理をしすぎない設計にします。 -
例:円安・円高の予想をやめ、生活防衛費(現金)を“月数”で決める
為替は当てにいかない方が、長期的には疲れません。代わりに、生活防衛費を「生活費の何か月分」として決めると、変動の中でも心が折れにくいです。 -
例:積立投資は“金額”より“継続条件”を先に決める
2026年はニュースで気持ちが揺れやすい可能性があります。相場が怖いときは、金額を落としても継続条件(いつ元に戻すか)を決めておく方が、長期の結果が安定しやすいです。
企業サンプル:賃上げを回収する順番を決める
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例:価格改定を「一律」から「商品構成・顧客別」へ移す
2026年は値上げの通りやすさが落ちる局面が出やすいので、付加価値の高い領域に資源を寄せます。高付加価値・短納期・高信頼の領域は、価格決定力を持ちやすいです。 -
例:省力化投資は“回収期間の短いもの”を優先する
金利が動く局面では、回収が長い投資ほど判断が難しくなります。まずは回収の短い省力化(現場のムダ取り、在庫回転、受発注の自動化など)から進めると、賃上げの原資を作りやすいです。 -
例:為替は予想しないが、想定レンジで粗利が崩れない設計にする
例えばドル円が上下に振れても、主要商材の粗利が致命的に崩れないよう、調達先の分散や契約条件の見直しを進めます。“当てにいかない設計”は、2026年のような年に効きます。
2026年のシナリオ整理:備えるための3パターン
ここは実務向けに、あえて分けます。どれが当たるかより、「どれが来ても致命傷を避ける」ための整理です。
シナリオA(基準):緩やかな減速と調整が続く
世界は大きく崩れず、金利は調整、インフレは落ち着く方向。ただし回復の勢いは弱く、企業も家計も慎重さを残す。日本は賃上げが続けば底堅いが、物価水準と利払いコストが重い。
この場合、勝ち筋は派手な成長より「固定費の最適化」「価格決定力」「省力化投資」「財政の優先順位づけ」です。
シナリオB(下振れ):不確実性が心理を冷やし、投資が先延ばしになる
通商環境や地政学、政策の不確実性が高まり、企業が投資を先送りし、雇用や賃金にも影が差す。金利が下がっても、安心して使えない空気が広がり、需要の回復が鈍くなる。
この場合、家計も企業も「現金の余裕」「固定費の圧縮」「代替の調達・販路」を確保しておくことが、守りとして強いです。
シナリオC(上振れ):賃金と生産性が噛み合い、投資が回り始める
賃上げが消費を支え、企業が省力化と高付加価値化で回収でき、金利や為替の変動が過度にならない。日本では“賃金と物価の好循環”が、実感として広がり始める。
この場合でも大切なのは、浮かれずに「利益の質」を磨くことです。上振れ局面ほど、ムダな投資や過剰在庫を抱えやすいので、足腰を固める企業が強くなります。
結論:2025年の答え合わせ、2026年の問い
2025年は、高金利の時代が次の段階へ移り始めた年でした。米国は利下げに踏み出し、欧州は慎重に据え置き、日本は利上げ継続姿勢を示しました。日本では賃上げが大きく進んだ一方で、2026年度予算政府案が示すように、利払費の増加という“静かな制約”が見えやすくなっています。
2026年に向けて、私がいちばん強調したいのは、「当てる」より「耐える」設計です。為替や株価を当てにいくほど、心が疲れます。代わりに、家計は固定費の最適化と現金の余裕、企業は価格決定力と省力化、政府は優先順位の説明責任を積み上げる。こうした地味な取り組みが、加速しにくい2026年の勝ち筋だと私は考えています。
最後に、少しだけ前向きなことも言わせてくださいね。賃上げが進み、金利が動き、財政制約が見えるというのは、痛みもありますが“現実が見える”ということでもあります。現実が見える局面は、対策が立てられます。2026年は、見えた現実に対して、しなやかに設計を変える年にしていきましょう。
参考リンク(一次資料・公的統計・公式発表中心)
- IMF World Economic Outlook, October 2025(世界成長率見通し)
- OECD Economic Outlook, Volume 2025 Issue 2(世界成長率見通し)
- FRB:FOMC Statement(2025年12月10日)
- ECB:Monetary policy decisions(2025年12月18日)
- 日銀:Decision at the December 2025 MPM(金融政策決定会合)
- 日銀:外国為替市況(2025年12月25日)
- BLS:Consumer Price Index – November 2025(CPI)
- BLS:The Employment Situation – November 2025(雇用統計)
- 財務省:令和8年度予算政府案(各種PDF一覧)
- 財務省:令和8年度一般会計歳入歳出概算(2025年12月26日閣議決定)
- 財務省:令和8年度予算のポイント(予算フレーム概要)
- JILPT(JIL):2025 Shunto Final(賃上げ率6.09%、ベア4.51%の記述を含む)
- 首相官邸(英語):Prime Minister’s Office of Japan(首相動静・発表)

