コーディング向けLLM徹底比較2026:GPT・Claude・Gemini・Codestral・DeepSeek・Llamaを人気言語別にレビュー
生成AIでのコーディングは、同じ「コード生成」でもLLMによって得意分野がはっきり分かれます。とくに差が出やすいのは、(1)大きなコードベースを読んで直す力、(2)テスト失敗からの修正ループ、(3)型やビルド、依存関係を含む“現実の開発”の扱い、(4)多言語・多ファイルの整合性です。ここを見誤ると、出力がきれいでも動かない、レビューが増える、という残念な結果になりがちです。
先に要点まとめ(読む前の地図)
- 大規模な改修やバグ修正を「リポジトリ単位」で進めたいなら、SWE-bench系で強いモデルが軸になります(例:GPT-4.1、Claude 3.5 Sonnet、Gemini 3 Pro など)。
- 単体の関数生成や補完だけなら、コード特化モデル(Codestral、DeepSeek Coder、Code Llama系)も十分に戦えますが、複数ファイル協調や設計判断は差が出やすいです。
- 人気言語(JavaScript/TypeScript、Python、SQL、Java、C#、C++など)は学習データや事例が多く、総じて成功率が高めです。人気の裏付けとして、Stack Overflowの利用率データを前提にします。
- Rust/C++/Shellのような「環境・型・挙動の罠」が多い領域は、どのモデルでも“テストと実行”を前提にした運用が必須になりやすいです(LLMの賢さより、検証ループが勝ちます)。
この記事が役に立つ方(具体的に)
この比較は、次のような方に特に向いています。
まず、日常的にJavaScript/TypeScriptやPython、SQLを使い、仕様変更や不具合対応で「似た修正を何度もする」開発者の方。LLM選びで体感速度が大きく変わり、レビュー工数も上下します。
次に、Java/C#のような型の強い言語で、API境界や例外設計、非同期処理など“設計の癖”が品質に直結するチーム。ここはLLMの「それっぽい正解」に引っ張られると事故になりやすいので、向き不向きと使い分けが重要です。
そして、C++/Rust/Goのようにビルド、依存、メモリ安全性、並行性などの制約が強い現場。LLMは書けても通らないことがあるので、モデル特性を知った上で、テスト生成・修正ループに強いモデルを軸にするのが安全です。
最後に、プロダクト規模が大きく、コードの一貫性(命名、アーキテクチャ、例外方針)やガバナンス(レビュー、証跡)が求められる方。ベンチマークや“エージェント実行前提”の設計差が効いてきます。
比較対象のLLM(2026年初頭の現場でよく選ばれる系統)
本記事では、実務で採用されやすい「系統」として次を扱います。
- OpenAI:GPT-4.1、GPT-5.2系(コーディング能力の指標としてSWE-bench等が公表されています)
- Anthropic:Claude 3.5 Sonnet(SWE-bench Verifiedの結果と、エージェント構成の解説があります)
- Google:Gemini 3 Pro(公式ページでエージェント系評価やSWE-bench Verified等の指標が提示されています)
- Mistral:Codestral 25.01(コード特化。HumanEvalなどで言及されることが多いです)
- DeepSeek:DeepSeek-Coder-V2(論文でコーディング系ベンチマーク結果が整理されています)
- Meta:Code Llama(HumanEval等を使った評価方針が公式に示されています)
なお、ベンチマークは万能ではなく、特定の課題(単関数・パッチ生成・エージェント実行)に偏ることがあります。たとえばSWE-bench Verifiedは実リポジトリの課題修正を扱う一方、評価条件や足場(scaffold)によって結果の意味合いが変わります。公式リーダーボードの参照が前提です。
また、多言語評価の枠組みとしてMultiPL-EやAider Polyglotのような“複数言語を横断して測る”試みもあります。
まず全体像:ベンチマークから見える「得意な仕事の種類」
LLMの「賢さ」を雑に一列に並べるより、「どんな仕事が得意か」を先に分けると選びやすくなります。
1) リポジトリ修正・バグ修正(現実の開発に近い)
実務で価値が大きいのは、既存コードにパッチを当て、テストを通すまでの一連です。この領域でよく参照されるのがSWE-bench Verifiedで、GPT-4.1やClaude 3.5 Sonnetがスコアを公表しています。
Gemini 3 Proも、公式ページにエージェント評価やSWE-bench Verifiedの指標を掲げています。
また、公式リーダーボードでは複数モデルの比較が可能です(評価条件に注意しつつ、相対感を掴むのに便利です)。
2) 単体実装・補完・小さな関数生成(速度重視)
HumanEvalのような単体問題は「関数を作ってテストに通す」形に近く、コード特化モデルが強みを示しやすいです。Codestral 25.01のHumanEvalスコアが言及される例があります。
ただし、このタイプは複数ファイルの整合性や設計判断が含まれにくいので、プロダクト開発の“後半戦”では別の軸(修正力、編集力、検証ループ)が重要になります。
3) 多言語・多環境(JS/TS、Java、C++、Rustなど)
現場の言語はPythonだけではありません。Aider PolyglotはC++/Go/Java/JavaScript/Python/Rustを横断し、編集と修正の力を測るベンチマークとして設計されています。
また、MultiPL-EはHumanEvalやMBPPを複数言語に翻訳して測る枠組みで、言語ごとの差を意識しやすくします。
人気言語(利用率が高い言語)を前提にする理由
モデルの得意不得意を語るうえで、言語の“人気”は無視できません。単純に、サンプルや学習データ、公開コード、議論の量が多いほど、LLMが学びやすい傾向があるためです。
Stack Overflowの2025年調査では、JavaScript、HTML/CSS、SQL、Python、TypeScript、Java、C#、C++などの利用率が上位に並びます。ここを「人気言語」として、以下のレビュー軸にします。
LLM別の性格(ざっくり運用目線)
ここでは細かい順位付けではなく、「現場でどう振る舞うか」の傾向を整理します。
GPT系(OpenAI)
- 既存コードの修正や、指示に沿った実装の安定性が強みとして示されています(GPT-4.1のSWE-bench Verified結果が公表)。
- GPT-5.2系でもSWE-bench Verifiedへの言及があります(測り方・条件差は要確認ですが、方向感は掴めます)。
運用のコツは、要件・変更範囲・受け入れ条件(テスト/互換/性能)を短く固定し、修正ループを回すことです。
Claude系(Anthropic)
- Claude 3.5 SonnetはSWE-bench Verifiedの結果と、より良い性能を引き出すためのエージェント構成の解説が公開されています。
体感としては、仕様の読み取りやレビュー文の生成が安定しやすく、設計意図を文章化しながら進めたい場面で相性が出やすいタイプです。
Gemini系(Google)
- Gemini 3 Proは、公式ページにエージェント的コーディング評価(SWE-bench Verified等)を掲載しています。
複合タスク(コード+周辺情報+手順)をまとめる場面で“手順の整頓”が効きやすく、ツール利用や検証フローと組み合わせる運用で強みが出やすいです。
Codestral(Mistral)
- Codestral 25.01はコード特化としての位置づけが公式に説明され、HumanEvalなどの結果に触れられることがあります。
関数生成、補完、リファクタの下ごしらえが得意な一方、複数ファイル協調は課題になりやすい、というレビュー例もあります(外部レビューは参考程度に、実プロジェクトで検証が安全です)。
DeepSeek Coder
- DeepSeek-Coder-V2は論文でベンチマーク結果を整理しており、オープン系の強力な選択肢として参照されがちです。
社内運用で「オンプレ/ローカル寄り」「コスト最適化」「データ持ち出し制約」がある場合に検討しやすい系統です。
Code Llama(Meta)
- Code LlamaはHumanEval等のベンチマークを用いた評価方針が公式に示されています。
オープン系での運用設計(コンテキスト管理、ツール接続、評価)ができるチームだと、用途を絞って強く使えます。
人気言語別:得意・不得意のレビュー(実務で差が出るポイント中心)
ここからが本題です。言語ごとに「どのLLMが勝ちやすいか」を、断定しすぎず、実務の傾向としてまとめます。
人気言語の選定はStack Overflowの利用率上位を基準にしています。
1) JavaScript / TypeScript
得意になりやすい理由:サンプルが膨大で、フロント・バックの両面で学習事例が多い言語群です。
LLMの向き
- GPT系:React/Next系の“よくある実装”を素早く組み立て、既存コードへの差分適用も安定しやすい傾向。SWE-bench系の「修正」強みが効きます。
- Claude系:UI仕様や状態遷移、アクセシビリティ配慮などを文章で整理しながら進めると良さが出やすいです。
- Gemini系:手順化と検証(テスト、ビルド、型)をセットで提示してもらう運用と相性が出やすいです。
苦手が出やすい点 - TypeScriptの高度な型(条件型、ジェネリクス、Zodなどの推論)で、コンパイルは通っても意図がずれることがあります。
- フロントは「動く=正しい」ではなく、見た目や体験が要件なので、必ず画面確認・E2Eをセットにすると事故が減ります。
ミニサンプル(依頼テンプレ)
- 目的:フォーム送信の二重送信を防ぐ
- 範囲:
src/components/CheckoutForm.tsxとuseCheckout.tsのみ - 受け入れ:型エラーなし、送信中はボタン無効、成功時のみ状態遷移、既存テスト更新
2) Python
得意になりやすい理由:AI/データ/自動化で利用が広く、学習データも課題例も多い代表格です。Stack Overflowでも利用率が高く、さらに採用が伸びたことが示されています。
LLMの向き
- Codestral/DeepSeek系:単体関数の生成やスクリプト作成で強みが出やすい(HumanEval系の世界観と近い)。
- GPT/Claude/Gemini:プロダクト側のPython(FastAPI/Django、依存管理、テスト、型)では、修正ループの強さが効きます。SWE-bench系の結果が参照軸になります。
苦手が出やすい点 - 依存関係(pip/poetry)、環境差(OS、CUDA、バージョン)の絡みは、コードだけでは解決しません。LLMは「動かし方」を提案できますが、結局は実行とログが必要です。
ミニサンプル(失敗を減らす指示)
- 「Python 3.11、poetry、pytest、ruff、mypy前提。既存の関数署名は変えない。テストを先に追加してから修正。」
3) SQL
得意になりやすい理由:クエリのパターンが明確で、説明→生成→改善の反復がしやすい言語です。利用率も高い領域です。
LLMの向き
- Claude/GPT:要件を文章で受けて、JOIN設計や集計の意味を説明しながらクエリに落とすのが得意になりやすいです。
- Gemini:手順化(EXPLAINの確認、インデックス提案、テストデータ設計)とセットで頼むと良さが出やすいです。
苦手が出やすい点 - 方言(PostgreSQL/MySQL/BigQuery/SQL Server)差で壊れます。必ずDB種別を指定し、EXPLAINの結果を返して改善を回すのが安全です。
- “正しさ”がテーブル定義とデータ前提に依存するので、サンプルスキーマを渡さないと、きれいに間違えます。
ミニサンプル(スキーマ付き依頼)
- テーブル定義(主キー、外部キー、件数規模)
- 期待する出力例(列名、粒度)
- 制約(実行時間、インデックス追加可否)
4) Java
得意になりやすい理由:企業システムでの蓄積が大きく、パターン(DI、DTO、例外設計)が強い言語です。利用率も上位です。
LLMの向き
- GPT/Gemini:リポジトリ修正やテスト修正の反復で強みが出やすいです。SWE-bench系の「パッチ適用」適性が間接的に効きます。
- Claude:設計意図(例外をどこで握るか、境界の責務)を文章で固めてから実装する流れと相性が出やすいです。
苦手が出やすい点 - フレームワーク依存(Spring Boot、Gradle/Maven、アノテーション、プロファイル)で、コードだけ正しくても起動しないことがあります。
- ジェネリクスやストリームの“読みやすさ”は、LLMが最短を狙うと逆に悪化する場合があるので、スタイル方針を渡すのが効果的です。
5) C#(.NET)
得意になりやすい理由:企業開発とゲーム開発(Unity)で事例が多く、APIやパターンが比較的整っています。人気も上位です。
LLMの向き
- GPT/Claude:レビューや設計説明を含めて進めると、チーム開発で扱いやすいです。
- オープン系(Codestral/DeepSeek/Llama):用途を絞れば役立ちますが、プロジェクトテンプレやNuGet依存まで含むと“環境差”で崩れやすいので注意が必要です。
苦手が出やすい点 - 非同期(async/await)の例外伝播、CancellationTokenの扱い、DIライフサイクルの整合性など、“動くけど危ない”コードが出ることがあります。
- 依頼時に「例外方針」「ログ方針」「null許容」「同期禁止」などを短く固定すると安定します。
6) C / C++
得意になりやすい理由:人気は高い一方で、環境・ビルド・未定義動作・メモリ管理など、LLMが“文章だけで正しさを保証しにくい”要素が濃い領域です。人気自体はランキングでも上位に位置します。
LLMの向き
- GPT/Claude/Gemini:修正ループ(テスト、ASan/UBSan、静的解析のログ)を渡して改善を回す運用が向きます。
- コード特化モデル:関数単位の変換や小さな最適化の下ごしらえには便利ですが、ビルド設定やABI、依存まで含むと破綻しやすいです。
苦手が出やすい点 - 未定義動作(符号、境界、寿命)や所有権が絡むと、LLMは“それっぽく動く”コードを出しがちです。
- 依頼は「再現手順」「クラッシュログ」「コンパイルオプション」をセットにし、修正の受け入れ条件をテストとサニタイザで固めるのが実務的です。
ミニサンプル(受け入れ条件の書き方)
-Wall -Wextra -Werrorで警告ゼロ- ASan/UBSanでエラーゼロ
- 既存の公開API署名は変更しない
7) Go
得意になりやすい理由:標準ライブラリ中心で書ける範囲が広く、フォーマットと慣習が強いので、LLMの出力が整いやすい言語です。人気も上位グループに入ります。
LLMの向き
- GPT/Gemini:並行処理やHTTP周りで、テスト駆動で詰める運用がしやすいです。
- Claude:設計意図(contextの伝播、責務分割)を文章で固めると安心感が出ます。
苦手が出やすい点 - goroutineのリーク、contextのキャンセル漏れ、競合条件は、コードを読んだだけでは見落としがちです。race detectorや負荷テストのログを返して修正ループを回すのが堅いです。
8) Rust
得意になりやすい理由:人気が伸びつつありますが、所有権とライフタイム、トレイト境界など、LLMが“正しい型”に収束させるまでに反復が必要になりやすい言語です。人気言語の中でも難所寄りです。
LLMの向き
- GPT/Claude/Gemini:コンパイルエラーを貼って「最小変更で直す」を繰り返すと成功率が上がりやすいです。
- コード特化モデル:短い関数やアルゴリズムは書けても、クレート構成やエラーハンドリング方針まで含むと崩れやすいので、スコープを小さくすると良いです。
苦手が出やすい点 - ライフタイム推論の“意図”を外すと、エラー解消のために設計を崩す修正が提案されることがあります。依頼時に「所有権モデル」「公開API維持」「Clone禁止」など制約を明示すると安定します。
9) Bash / Shell
得意になりやすい理由:利用率は高いのですが(調査でも上位)、環境差・引用符・パス・権限など“地雷”が多く、LLMが安全なスクリプトを書くのは意外に難しい領域です。
LLMの向き
- Claude/GPT:説明付きで安全策(
set -euo pipefail、入力検証、dry-run)を入れるように頼むと品質が上がりやすいです。 - Gemini:手順化(実行例、期待出力、ロールバック)と組むと安心感が増します。
苦手が出やすい点 - 破壊的コマンド(rm、chmod、sed -i)や、OS差(GNU/BSD)で事故になりやすいので、“安全なテンプレ”をチームで固定するのがおすすめです。
ベンチマークの読み方(誤解しやすいポイントを整理)
LLM比較でありがちな落とし穴を、短くまとめます。
- SWE-bench Verifiedは「実リポジトリ修正」という意味で実務寄りですが、エージェントの足場や条件で結果が変わり得ます。公式リーダーボードを参照し、同条件比較を心がけるのが安全です。
- HumanEvalのような単体問題は“関数を当てる”力を測りやすい一方、プロジェクト構造や設計制約は測りにくいです。
- 多言語評価にはMultiPL-Eのような枠組みがあり、言語差を把握する助けになります。
- Aider Polyglotのように、複数言語+編集+テストフィードバックを含む評価もあり、実務の「直す力」に近づける工夫があります。
失敗しにくい“モデル使い分け”の型(現場でそのまま使える)
最後に、モデルの優劣より効くことが多い「使い方の型」を置いておきます。どのLLMでも、これで勝率が上がります。
- 依頼文は「目的・範囲・受け入れ条件」の3点だけを固定する
- まずテスト(または再現手順)を作らせ、次に修正させる
- 1回で全部やらせず、差分が小さくなる単位に分ける
- 言語固有の罠(TSの型、Rustの所有権、C++のUB、Shellの環境差)は“制約”として先に宣言する
ミニサンプル(共通テンプレ)
- 目的:〇〇を満たす(例:N+1を解消)
- 範囲:変更してよいファイル一覧
- 受け入れ:テスト、型、Lint、互換、性能の条件
まとめ:言語ごとの「地雷の種類」でLLMを選ぶ
人気言語(JS/TS、Python、SQL、Java、C#など)は、どのLLMでも比較的成功しやすい一方で、TypeScriptの高度な型、Java/C#のフレームワーク依存、SQLの方言差など、地雷ははっきりあります。
C++/Rust/Shellは、LLMの“作文力”よりも、ログとテストで収束させる運用が決め手になります。
そして、リポジトリ修正まで含む現実の開発では、SWE-bench系のような「直す力」を意識してモデルを選ぶと、体感の生産性が上がりやすいです。
参考リンク
- Stack Overflow Developer Survey 2025 – Technology
- OpenAI – Introducing GPT-4.1 in the API(SWE-bench Verifiedの言及)
- Anthropic – Claude 3.5 Sonnet SWE-bench(SWE-bench Verifiedとエージェント解説)
- Google DeepMind – Gemini 3 Pro(SWE-bench Verified等の指標)
- SWE-bench – Official Leaderboards
- Mistral – Codestral 25.01
- DeepSeek – DeepSeek-Coder-V2 論文(arXiv)
- Meta – Introducing Code Llama
- Aider – LLM Leaderboards(Polyglotの説明)
- Epoch AI – Aider Polyglot(ベンチマーク説明)
- MultiPL-E – GitHub

