はじめに

日本におけるウェブアクセシビリティは、法規制や企業の取り組みが遅れているのが現状です。そこで今回は、ウェブアクシビリティが義務化であるカナダについて取り上げたいと思います。 欧州連合(EU)では、デジタル社会の発展とともに、すべての人々がウェブコンテンツに平等にアクセスできることを保証するため、ウェブアクセシビリティの法的義務化が進められています。EUは、障害を持つ人々が情報やサービスにアクセスできるようにするために、特に公共機関を中心に厳しい規制を導入しています。これらの規制は、ウェブサイトやモバイルアプリのアクセシビリティを強化し、すべての市民にデジタルサービスへのアクセスを保証することを目的としています。

ウェブアクセシビリティ指令

2016年、欧州連合は**「EUウェブアクセシビリティ指令」**(Web Accessibility Directive)を採択しました。この指令は、公共機関が運営するウェブサイトやモバイルアプリが、障害を持つ人々にも利用可能であることを求めています。指令に基づき、すべてのEU加盟国は、国内法において公共機関に対してアクセシビリティ基準の遵守を義務付ける必要があります。

指令の適用範囲

ウェブアクセシビリティ指令は、主に以下の機関やサービスに適用されます:

  • 公共機関(政府機関、地方自治体、公共図書館、教育機関など)
  • モバイルアプリ(公共機関が提供する公式アプリ)

この指令では、ウェブサイトやアプリが障害者に対してアクセス可能であることが法的に求められています。特に、視覚障害や聴覚障害を持つ人々がデジタルサービスを利用する際の利便性向上を目指しています。

WCAG 2.1基準の採用

EUのウェブアクセシビリティ指令は、WCAG(ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン)2.1に基づいています。WCAGは、ウェブサイトやデジタルコンテンツがアクセス可能であることを評価するための国際的な標準であり、特にレベルAおよびレベルAAに準拠することが求められています。

WCAG 2.1の主なポイント:

  • 認識可能:ユーザーがコンテンツを理解し、アクセスできるようにすること(例:代替テキストの提供、コントラストの最適化)。
  • 操作可能:すべての機能がキーボードや音声入力で操作可能であること。
  • 理解可能:情報やナビゲーションがわかりやすく、一貫性があること。
  • 堅牢性:異なるデバイスや技術でコンテンツが正しく表示されること。

実施スケジュール

EU加盟国は、段階的にウェブアクセシビリティ指令に準拠することが求められており、以下のような実施スケジュールが定められています:

  • 2018年9月23日:新規ウェブサイトのアクセシビリティ遵守義務の開始。
  • 2019年9月23日:既存のウェブサイトに対するアクセシビリティ遵守義務の適用。
  • 2021年6月23日:公共機関が提供するモバイルアプリに対してアクセシビリティ義務が拡大。

例外事項

EUのウェブアクセシビリティ指令には、いくつかの例外も認められています。例えば、以下のような場合は完全な適用が免除されることがあります:

  • 古いアーカイブコンテンツ(2019年以前に作成され、更新されていないもの)
  • ライブの音声コンテンツ(リアルタイムの放送など)
  • 教育機関の一部コンテンツ(特定の試験資料など)

ただし、これらの例外は限られており、基本的にはすべての公共ウェブサイトやアプリに対してアクセシビリティ基準が求められています。

監視と報告

EUのウェブアクセシビリティ指令では、各加盟国に対してアクセシビリティ基準の遵守状況を定期的に監視し、報告することが義務付けられています。これにより、公共機関のウェブサイトやモバイルアプリが規定を満たしているかどうかがチェックされ、必要に応じて改善が求められます。

また、各国はアクセシビリティに関するフィードバックメカニズムを設け、ユーザーがウェブサイトのアクセシビリティについて意見や苦情を述べることができるようにしています。公共機関は、このフィードバックを受けてウェブサイトやアプリの改善を行う責任を負っています。

アクセシビリティの未来

EUは、今後もデジタルアクセシビリティを強化していく方針を示しており、ウェブコンテンツに限らず、より幅広いデジタルサービスにもアクセシビリティの要件が適用されることが期待されています。デジタルサービスが進化する中で、すべての市民が平等にアクセスできることを保証するため、EUの取り組みはますます重要なものとなるでしょう。

まとめ

欧州連合におけるウェブアクセシビリティは、法的に義務化されており、特に公共機関が運営するウェブサイトやモバイルアプリに対して、WCAG 2.1基準に基づくアクセシビリティの確保が求められています。これにより、障害を持つ人々を含むすべての市民が平等にデジタルサービスにアクセスできる環境が整備されつつあります。今後もEUはデジタル社会の進展に対応しながら、より包括的なデジタルアクセシビリティの実現を目指していくでしょう。


当社では、ウェブアクセシビリティを簡単に導入できるUUU ウェブアクセシビリティウィジェットツールをリリースしております。アクセシビリティ向上にご興味がある方はぜひ詳細をご覧ください。

投稿者 greeden

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)