AWS RDSにおけるシングルインスタンス、マルチAZインスタンス、マルチAZクラスタの違いとは?
はじめに:RDSの可用性と構成の基本を理解しよう
AWS RDS(Relational Database Service)は、運用管理を簡略化するマネージド型のデータベースサービスです。可用性や性能、コストに応じて複数の構成が用意されています。この記事では「シングルインスタンス」「マルチAZインスタンス」「マルチAZクラスタ」の3つの構成の違いについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。
1. シングルインスタンス(Single-AZ)
特徴:
- 単一のアベイラビリティゾーン(AZ)に配置された1台のみのDBインスタンス
- 最も低コストで、開発や検証用途に最適
- AZ障害時には自動復旧されず、ダウンタイムが長くなる可能性あり
メリット:
- コストが最も安い
- レイテンシが最小
- 構成がシンプルで管理が容易
デメリット:
- 障害耐性が低い(可用性が保証されない)
- フォールオーバーなし、バックアップからの手動復元が必要
2. マルチAZインスタンス(Multi-AZ instance)
特徴:
- プライマリDBと、同期レプリケーションされたスタンバイDBの2台構成
- 別のAZにスタンバイを設置しており、プライマリ障害時には自動で切り替わる(フォールオーバー)
メリット:
- RPO(目標復旧時点)=0、RTO(目標復旧時間)は1〜2分
- 本番環境に適した高可用性
- バックアップやメンテナンス時のダウンタイムを最小限に抑える
デメリット:
- シングルよりコストが高い
- スタンバイは読み取りに使用できない(読み取りスケーラビリティなし)
3. マルチAZクラスタ(Multi-AZ DB cluster)
特徴:
- ライター1台、リーダー2台の合計3台が異なるAZに配置された構成
- 半同期レプリケーションで高速な書き込み性能を実現
- リードレプリカを読み取り用途に活用できる(スケーラビリティ向上)
メリット:
- フォールオーバーが高速(25〜75秒程度)
- 高い可用性に加え、読み取り・書き込みのパフォーマンスも優秀
- 読み取りトラフィックの分散が可能
デメリット:
- 対応エンジンがMySQLとPostgreSQLに限定される
- 構成が複雑になりがち
- シングルや通常のマルチAZ構成より高コスト
比較表
項目 | シングルインスタンス | マルチAZインスタンス | マルチAZクラスタ |
---|---|---|---|
インスタンス数 | 1台 | 2台(プライマリ+スタンバイ) | 3台(ライター+リーダー2台) |
可用性 | 低(AZ障害に弱い) | 高(自動フォールオーバー) | 非常に高(高速フェイルオーバー) |
読み取りスケーラビリティ | なし | なし | あり(リーダー使用可) |
書き込み性能 | 高(低レイテンシ) | 中(同期複製による影響) | 高(最適化された書き込み) |
コスト | 低 | 中 | 高 |
主な用途 | 開発・検証環境 | 一般的な本番環境 | 高可用性+高性能な本番環境 |
どの構成を選ぶべき?
- 開発や検証用途:最小限のコストで済む「シングルインスタンス」
- 可用性重視の本番環境:コストと可用性のバランスが取れた「マルチAZインスタンス」
- 高性能とスケーラビリティが求められる大規模環境:「マルチAZクラスタ」が最適
まとめ
AWS RDSの構成選択は、利用目的や予算、可用性要求に応じて最適な選択をすることが大切です。特に業務システムやWebサービスなど、信頼性と性能が問われる環境では、マルチAZ構成やマルチAZクラスタの導入を前向きに検討することをおすすめします。自社のニーズに合ったRDS構成を選んで、安定かつ効率的な運用を実現しましょう。