認知障がい・発達障がいの方にも優しいコンテンツ設計ガイド
概要サマリー
- 認知障がい/発達障がいの特性と配慮ポイント
- 情報構造のシンプル化と予測可能性の確保
- 文章表現とビジュアルの工夫で理解しやすく
- インタラクション設計とフィードバック最適化
- 実践サンプルとチェックリストで即実践
1. はじめに:誰もがストレスなく情報にアクセスできる世界へ
Webコンテンツは、美しさやトレンドだけでなく、すべてのユーザーが迷わず理解できることが大切です。とくに、認知障がいや発達障がいを持つ方は、情報の整理や意図の把握で困難を抱えやすいため、配慮された設計が求められます。このガイドでは、シンプルで予測可能、かつ柔軟なコンテンツ設計のポイントを、具体的なサンプルとともにご紹介します。
2. 認知障がい・発達障がいの基礎知識と配慮ポイント
- 特徴の理解
- 注意の持続が難しい方:長文や複雑な手順で離脱しやすい
- 切り替えが苦手な方:突然のポップアップや画面遷移に戸惑う
- 抽象的な表現が苦手な方:曖昧な言い回しや慣用句で意味を取り違える
- 配慮の要点
- 情報量の最小化:一度に提示する要素は3〜5つ以内
- 予測可能な構造:ナビゲーションやボタンの位置を一貫させる
- 具体的な表現:抽象的な言葉を避け、箇条書きや例示を多用
- ペースの調整:ユーザー操作のタイミングに余裕をもたせる
3. 情報構造のシンプル化と予測可能性の確保
- 見出しと段落の使い分け
<h2>
、<h3>
を適切に配置し、階層を明確に- 一段落あたり4〜5行程度として、視覚的な塊をつくる
- ナビゲーションの固定化
- グローバルナビは画面上部、サイドナビは左端など位置を固定
- “次へ”“戻る”ボタンを同じ場所に配置し、操作を予測可能に
- パンくずリストの活用
<nav aria-label="パンくずリスト"> <ol> <li><a href="/">ホーム</a></li> <li><a href="/articles">記事一覧</a></li> <li>認知障がい配慮ガイド</li> </ol> </nav>
4. 文章表現とビジュアルの工夫で理解しやすく
- 平易で具体的な文体
- 「〜してくださいね」「例えば」「まず」など、親しみやすいトーン
- 一文は50文字以内、漢字とひらがなのバランスを意識
- 箇条書きで要点整理
- 手順や注意点は必ずリスト化し、番号つき箇条書きで順序を明示
- 視覚的補助
- アイコン+テキスト:
<p><span aria-hidden="true">📝</span> <strong>例:</strong> 送信ボタンはページ最下部にあります。</p>
- 図解やスクリーンショットに番号や吹き出しを入れて解説
- アイコン+テキスト:
5. インタラクション設計とフィードバック最適化
- ボタン・リンクの扱い
- 大きめのクリック領域(タッチターゲット 44×44px 以上)
- フォーカス時の色・枠の変化を明示
- 動的な変化の制御
- モーダルやトースト通知はユーザーの操作後にのみ表示
- 自動で消える要素には「閉じる」ボタンを必ず提供
- エラーメッセージ
- フォーム送信時は画面上部にまとめて表示
- 各フィールド横に個別メッセージを表示し、
aria-describedby
で関連付け<input id="age" type="number" aria-describedby="age-error"> <span id="age-error" role="alert">18歳以上を入力してください。</span>
6. 実践サンプル:「よくある質問」セクションのマークアップ
<section aria-labelledby="faq-title">
<h2 id="faq-title">よくある質問</h2>
<dl>
<dt><button aria-expanded="false" aria-controls="faq1">Q1. 購入方法を教えてください</button></dt>
<dd id="faq1" hidden>
<p>商品ページから「カートに入れる」をクリックし、支払い情報を入力してください。</p>
</dd>
<dt><button aria-expanded="false" aria-controls="faq2">Q2. お問い合わせ先はどこですか?</button></dt>
<dd id="faq2" hidden>
<p>画面下部の「お問い合わせ」リンクをご利用ください。</p>
</dd>
</dl>
</section>
<script>
document.querySelectorAll('dt button').forEach(btn => {
btn.addEventListener('click', () => {
const id = btn.getAttribute('aria-controls');
const dd = document.getElementById(id);
const expanded = btn.getAttribute('aria-expanded') === 'true';
btn.setAttribute('aria-expanded', String(!expanded));
dd.hidden = expanded;
});
});
</script>
7. 誰に、どんな効果があるのか?
- コンテンツライター:平易で具体的な文例を学び、誰にとっても読みやすい記事を執筆できる
- UI/UXデザイナー:インクルーシブな情報構造設計をプロトタイプに組み込みやすく
- eラーニング担当者:学習者の理解度を高め、離脱率を低減
- 開発者/エンジニア:アクセシビリティ要件を満たしながら、使いやすいインタラクションを実装
- 認知障がい・発達障がいを持つユーザー:迷いなく情報を読み進め、安心して操作できる体験を享受
8. アクセシビリティレベル
本ガイドは WCAG 2.1 AA レベル準拠 を基本とし、可能であれば AAA レベル の達成も目指してください。
9. まとめ:思いやりが生む“わかりやすさ”
- 認知特性を理解し、情報量と表現を最適化
- シンプルで予測可能な構造を実現
- 平易な言葉と視覚補助で読みやすさを確保
- インタラクションは操作後のフィードバックを丁寧に
- 実践サンプルを元に、PDCAで継続的に改善
このガイドが、認知障がい・発達障がいのある方にも優しいWebコンテンツ設計の一助となり、すべてのユーザーに届く“わかりやすさ”を実現できれば幸いです。