Claude Haiku 4.5徹底解説:旧モデルの違いと競合比較、料金と実務活用まで【2025年10月版】
まずは要点(1分サマリー)
- Claude Haiku 4.5(以下Haiku 4.5)は“高速・低コスト”の最新版。5か月前に最先端だったSonnet 4と同等レベルのコーディング性能を、約3分の1の価格と2倍超の速度で実現した“小型モデルの本命”です。
- 価格はAPI基準で:入力$1 / 100万トークン、出力$5 / 100万トークン。バッチAPIなら半額、プロンプトキャッシュでさらに節約できます。
- 文脈長は標準で20万トークン。出力は最大6.4万トークンへ拡張。「拡張思考(Extended thinking)」や「コンピュータ操作(Computer use)」、**「文脈意識(Context awareness)」**など、上位モデルの便利機能を継承しています。
- 提供面:Haiku 4.5はClaude(1P)API/Claude.aiに加え、AWS BedrockとGoogle Vertex AIでも提供。大規模運用や社内規約に合わせた選択が可能です。
- 旧モデルとの差:Haiku 3.5比で出力上限(8,192→64,000トークン)が大幅増、コーディング・推論も強化。価格は$0.80/$4 → $1/$5と少し上がるものの、総合パフォーマンスは実用面で逆転。
- 競合との立ち位置:コスト帯はOpenAI GPT-4.1 mini($0.80/$3.20)やo3-mini($1.10/$4.40)、**Amazon Nova Micro($0.04/$0.14、主に軽量用途)**と競合。Haiku 4.5は“速度×精度×ツール連携”の総合力で選ばれる傾向です。
本記事は誰に向いている?(読者と得られる価値)
- 情報システム/AI推進の方へ:**コスト予測(キャッシュ・バッチ・リージョン課金)と導入チャネル(1P/Bedrock/Vertex)**を横断で把握して、PoC→本番の意思決定に役立ちます。
- プロダクト/開発リーダーへ:コーディング・エージェント設計で、Sonnet 4.5の“司令塔”+Haiku 4.5“作業員”の多エージェント分業という最新パターンを具体化できます。
- CS・BPO・バックオフィスへ:要約・分類・フォーム処理など高頻度・大量処理でコスト/遅延/正確性の折り合いを取りやすい選択肢になります。
- 教育・研究へ:20万トークンの大文脈と6.4万トークンの出力で、資料束ね・計画立案・長文生成の“1回完結”がしやすくなります。
1. Haiku 4.5の“何が新しい?”(機能と設計思想)
1-1. 小型なのに“上位に肉薄”
AnthropicはHaiku 4.5を**「最近のフロンティア級(Sonnet 4)に匹敵するコーディング性能を、1/3の価格・2倍超の速度で」と位置付けています。“日常業務の主役になれる小型モデル”**という狙いが明確です。
1-2. 文脈長・出力と“拡張思考”
- 文脈長(コンテキスト):200,000トークン(標準)。Sonnet 4/4.5のみ1Mトークンのベータが案内されています。
- 出力上限:最大64,000トークン(Haiku 4.5)。Haiku 3.5は8,192だったため、長文・長コードの一括出力が現実的になりました。
- 拡張思考(Extended thinking):スイッチ式の推論拡張。難問や多段の問題ではONを推奨(※既定はOFF/キャッシュ効率に影響)。同機能はSonnet 4/4.5、Opus 4/4.1にも搭載済み。
- 文脈意識(Context awareness):「残り文脈量」を自己把握して回答の打ち切り・継続を調整。長対話の破綻を抑えます。
1-3. ツール連携と速度設計
- コンピュータ操作(computer use)、Web検索、エディタなどのサーバー/クライアント側ツールに対応。検索は1,000回で$10と明示されています(トークン料金は別)。
- 1P/3Pでの提供:Claude API(1P)、AWS Bedrock、Google Vertex AIの各ルートで利用可能。企業のデータ所在地やSLAに合わせて選択できます。
2. 旧モデルとの比較(Haiku 3/3.5/Sonnet 4)
2-1. 価格・速度・出力の“三拍子”
- Haiku 4.5:$1 / $5(入/出力、100万トークン)。バッチは半額、キャッシュで追加割引。速度はSonnet 4の2倍超(公式表現)。
- Haiku 3.5:$0.80 / $4。出力上限8,192トークン。推論・コーディング性能は4.5に劣後。
- Haiku 3:さらに廉価($0.25 / $1.25)ながら、推論・出力面で旧世代。現行はレガシー用途が中心です。
- Sonnet 4(参照):$3 / $15。**1Mトークン文脈(ベータ)**が武器。司令塔向き(計画立案・分解・高度推論)。
要点:Haiku 4.5は“少し高いけれど大幅に強い”。Haiku 3.5→4.5への乗り換えで、長文生成/大規模要約/長コード出力が一気に現実解になります。
2-2. 文脈と長尺ワーク
- Haiku 4.5:200K、Sonnet 4/4.5:最大1M(β)。研究ドキュメント束ね/超大規模RAGはSonnetが有利ですが、日次オペレーションと大量処理の主戦場ではHaiku 4.5の速度/価格が光ります。
2-3. “司令塔×作業員”の分業設計
Anthropic自身が、Sonnet 4.5を司令塔にして複数のHaiku 4.5が並列で小タスクを処理する設計を例示。多エージェントの現実解として推奨されています。
3. 競合サービスとの比較(価格・文脈・使いどころ)
3-1. 価格(APIの“素のコスト”)
- Anthropic Haiku 4.5:$1 / $5(入/出力、100万トークン)。バッチ半額, キャッシュ割引あり。
- OpenAI GPT-4.1 mini:$0.80 / $3.20。1M文脈が一般提供で話題。
- OpenAI o3-mini:$1.10 / $4.40(推論強めの“小型”)。
- Amazon Nova Micro:$0.04 / $0.14(極めて廉価。軽量タスク向け)。
- Google Gemini(Flash/2.0系):低単価帯とバッチ割引が強み(料金設計は機能別)。
読み解き:“最安”を競うならNovaや一部Gemini、“速度×品質×ツール連携”の均衡ならHaiku 4.5/GPT-4.1 mini/o3-miniが本命。出力の長さと推論の一貫性はHaiku 4.5がバランス良好です。
3-2. 文脈長と長文生成
- Haiku 4.5:200K文脈/最大64K出力。**“1回で仕上げる長文”**が取りやすい。
- GPT-4.1/4.1 mini:1M文脈が強力(大規模解析)。ただし総コストは入力量次第で増えます。
- Nova Micro:文脈は軽量〜中量前提。監視・シンプル自動化で生産的。
3-3. ツール・運用のしやすさ
- Haiku 4.5:Web検索($10/1,000回)、コンピュータ操作、エディタなど公式ツール整備。Bedrock/Vertex提供で導入経路が多彩。
- OpenAI:評価・ガードレール・UI埋め込みの枠組みが充実(※本稿では価格中心)。
- Google/Amazon:既存クラウドとの親和性が強く、権限制御・監査が組みやすい。
4. 料金の“実務理解”(節約ポイント込み)
4-1. 基本価格と割引
- 基本:$1(入力)/$5(出力)/100万トークン。
- バッチAPI:入力$0.50/出力$2.50(50%オフ)。夜間一括処理や大量翻訳・ログ要約に最適。
- プロンプトキャッシュ:5分・1時間の書込み価格とキャッシュヒット0.1倍の複合設計。更新頻度が低い定型プロンプトで効きます。
- リージョン課金:Bedrock/Vertexのリージョナル・エンドポイントは+10%。データ所在地の要件がある場合の“必要コスト”です。
4-2. ツールの追加コスト(代表例)
- Web検索:$10/1,000回(失敗時は課金なし)。
- コンピュータ操作:トークン+スクリーンショット等の追加トークン。ベータの仕様に依存します。
現場Tip:①長文は“出力$5”が支配→要約→段階生成で削減。②バッチ×キャッシュで定型処理の半額化。**③Web検索は“初手RAG→不足だけ検索”**が経済的です。
5. ベンチと“肌感”で見る得意・不得意
5-1. 得意
- 大規模要約・統合作業:20万トークンの長い入力と6.4万トークン出力で、一次→二次要約→骨子化が“一筆書き”。
- コーディング(量産系):Sonnet 4相当のコーディング力を低コスト・低レイテンシで回せます。CIの補助・テスト生成に好相性。
- 多エージェントの下請け役:司令塔(Sonnet 4.5)が計画→分割、Haiku 4.5が並列処理。**“規模の経済”**が効きます。
5-2. 苦手・注意
- 超巨大文脈(>200K):1MコンテキストはSonnet側(β)。**“丸ごと読ませ”**が必要なら司令塔の出番です。
- 最廉価争い:Nova Microなどには単価で及ばず。ただし品質・ツール連携での総合力が強みです。
6. ワークフロー見本(今日からそのまま回せる設計)
6-1. コーディング運用(週次リリースの小規模SaaS)
- Sonnet 4.5で**“修正計画(仕様→タスク分解)”**を作成。
- Haiku 4.5で各タスクを並列生成(テスト・ドキュメント・小修正)。
- Haiku 4.5に差分レビュー/単体テスト生成を任せ、人レビューで最終反映。
概算コスト:指示(短文)×多数=入力安価。長文出力は“テスト”に集中しコスト最適化。
6-2. CS自動化(メール・フォームの一括処理)
- Haiku 4.5で内容分類→重要度→定型返信の下書きまで一気通貫。
- バッチAPIで夜間処理→半額。テンプレのキャッシュで追い割引。
6-3. 調査・レポーティング(社内ナレッジ統合)
- 20万トークンに複数資料を投入→骨子→章立て→本文まで64K出力で一括生成。
- Web検索は不足箇所のみに限定し、コストとノイズを抑制。
7. サンプルプロンプト(和文のまま効く書き方)
7-1. 大規模要約→骨子化
「以下に部門横断の議事録とKPI資料(合計約150,000トークン相当)を与えます。
- 重複を除去しながら部門別課題と共通課題を抽出。
- 上位3テーマで1枚提案の骨子(目的/現状/解決案/インパクト/リスク)を日本語600語以内で。」
— 文量指定と重複除去を明示すると、長文→短文の品質が安定します(Haiku 4.5の長文処理に好相性)。
7-2. 多エージェント想定の“下請け指示”
「上位計画(JSON)に従い、
task_id
ごとにテストケースと実装方針を提案。
制約:既存APIは変更不可、単体テストはテーブル駆動。
出力:{task_id, test_cases[], code_skeleton}
の配列。」
— **司令塔(Sonnet 4.5)→作業員(Haiku 4.5)**の分業を意識した仕様。
8. セーフティとガバナンス(運用の“最後の責任”)
- ASL(AI Safety Level)の適用:Opus 4.1、Sonnet 4.5はASL-3で配布。一方Haiku 4.5はASL-3の必要なしとルールアウト評価で判断されています。小型かつ企業運用前提の位置づけです。
- Constitutional AIの行動規範:一貫したガードレールが特長。とはいえ出力の来歴管理とレビューは利用側の義務です。
- データ経路とログ:1P/Bedrock/Vertexでデータ取り扱いと所在地が異なります。監査要件に合わせたルート選択を。
9. 導入ロードマップ(30日で“使える形”へ)
Week 1:要件と費用設計
- 業務×頻度×許容遅延でユースケースを棚卸し。
- キャッシュ対象(定型プロンプト)とバッチ対象(夜間処理)を分離。
Week 2:最小実装(MVP)
- **Claude API(1P)**でまず組む→Bedrock/Vertexの利点(SLA/ガバナンス)を比較。
- Web検索の予算上限と再検索抑制ルールを実装。
Week 3:多エージェント化
- Sonnet 4.5=計画/Haiku 4.5=実行で並列処理。失敗再試行のガードを標準化。
Week 4:運用と監査
- プロンプト台帳(日時・モデル・トークン・成果指標)、コストダッシュボード、セーフティ監査(除外カテゴリ・誤判定対応)を整備。
10. 競合比較のまとめ(用途別のおすすめ)
- 大量処理×短納期(CS・BPO・バックオフィス):Haiku 4.5が本命。バッチ×キャッシュで単価と遅延を削りやすい。
- 超大規模文脈での分析・計画:GPT-4.1(mini含む)の1Mコンテキストや**Sonnet 4/4.5(β)**が優位。費用負担は要注意。
- “とにかく最安”で軽作業:Nova Microが有力。ただし品質・ツールは限定的。
- GCP/AWSの社内規約が厳密:Vertex/Bedrock上のHaiku 4.5でデータ経路の明確化。
11. まとめ(結論と次の一歩)
- Haiku 4.5は“小型=安いだけ”を卒業。Sonnet 4級のコード力と20万文脈×64K出力で、現場の主力運用に耐えるバランスへ。
- 料金は$1/$5。バッチ半額+キャッシュでさらに圧縮可能。Web検索は$10/1,000回。費用の読みやすさが導入を後押しします。
- 競合との棲み分け:1M文脈ならGPT-4.1/ Sonnet 4(β)、最安狙いならNova、総合バランスならHaiku 4.5。多エージェントではSonnet 4.5×Haiku 4.5の分業が効きます。
やさしく始めるなら、①キャッシュ効く定型業務→②バッチ化→③多エージェントの順で拡げてみてください。速度と費用感を味方に、毎日の“細かな非効率”から着実に解決できます。
参考リンク(一次情報中心)
-
Anthropic 公式
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提供チャネル
-
旧モデル・比較
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競合(価格・機能)
-
補足(背景・安全思想)