black computer motherboard
Photo by Pixabay on Pexels.com

GPT-5.1-Codex-Max徹底解説

前バージョンやGemini 3/Claudeとの比較で見える「本気のエージェント型コーディングモデル」


1. この記事で分かることと、想定している読者

まず最初に、この「GPT-5.1-Codex-Max」はどんな人に関係があるかをはっきりさせておきますね。

特にメリットが大きい人たち

  • 自社サービスや自前プロダクトを開発している
    • Webエンジニア / バックエンドエンジニア
    • フロントエンドエンジニア / フルスタック
  • SIer・受託開発・スタートアップなどで
    「既存の大きなコードベースに毎日向き合っている」方
  • GitHub Copilot や Claude / Gemini をもう使っていて、
    「次の一手としてOpenAIのCodexも検討したい」方
  • 技術責任者やVPoEなど、
    チーム全体の生産性・コストを見ながらAI開発基盤を選びたい方

この記事では、

  1. GPT-5.1-Codex-Maxの特徴を、前バージョン(GPT-5.1-Codex / GPT-5-Codex)と比較しながら整理
  2. Google Gemini 3 や Claude(3.7/4 Sonnet)とのコーディング性能・使い勝手の違いを解説
  3. 「じゃあ、どのモデルをどんな用途に使い分ければいいの?」という実務目線の指針

を、落ち着いて噛み砕いていきます。


2. GPT-5.1-Codex-Maxとは何か?ざっくり概要

2-1. 位置づけ:Codexシリーズの“フラッグシップ”エージェント

OpenAI公式ブログによると、GPT-5.1-Codex-Maxは

「新しいフロンティア級のエージェント型コーディングモデル」

と位置づけられています。

ざっくり言うと:

  • ベースは最新の推論特化モデル(GPT-5.1系)
  • その上に、
    • ソフトウェアエンジニアリング
    • 数学
    • 研究タスク
      など「エージェント的に連続した作業をこなす」ための訓練を積んだモデル
  • **Codex(CLI/IDE拡張/クラウド/コードレビュー)**専用に最適化されていて、
    長時間・大規模な開発タスクを自律的に回せるようにしたバージョンです。

2-2. 一番大きな特徴:コンテキストをまたぐ「コンパクション」

GPT-5.1-Codex-Maxを他のモデルと分けるキーワードが、**compaction(コンパクション)**です。

  • 通常のLLMは、
    コンテキストウィンドウ(=一度に覚えておけるトークン数)を超えると
    会話履歴やコードの一部を諦める必要がありました。
  • GPT-5.1-Codex-Maxは、
    セッションが限界に近づくと、**重要な情報だけを残して履歴を「圧縮」**し、
    再度コンテキストを空けて作業を続行できます。

公式いわく:

  • 「複数のコンテキストウィンドウにまたがって、数百万トークン規模のタスクを一貫して扱える」
  • 社内評価では、24時間以上連続で作業し続け、テスト失敗を直しながら最終的な成果物を出すことも確認したとのことです。

これにより、

  • モノリシックな巨大リポジトリのリファクタリング
  • 大規模なテスト修正+CIパイプライン調整
  • 長時間回し続けるエージェントループ(バグ修正→テスト→再修正…)

のような**「1〜数時間では終わらない仕事」**を任せやすくなっています。

2-3. SWE-bench Verifiedなどのベンチマーク

コーディング性能の指標としてよく出てくるのが、
GitHubリポジトリの実際のIssueを解かせる SWE-bench Verified です。

公開情報を整理すると、だいたい次のような位置づけです:

  • GPT-5-Codex:SWE-bench Verified 74.5%(OpenAI発表)
  • GPT-5.1-Codex:およそ 73〜74% 前後(外部記事・非公式)
  • GPT-5.1-Codex-Max:
    • SWE-bench Verifiedで 77.9%(Diamondクラス、同条件で5.1-Codexの73.7%から向上)
    • 同じmedium reasoning設定で、思考トークンを30%削減しつつ精度向上

数値に多少のブレはありますが、

「5.1-Codex-Maxは、前世代Codexより数ポイント精度が高く、
しかも同じ仕事を少ないトークンでこなせる」

という方向性は、OpenAI公式と外部レポートで一致しています。

2-4. Reasoningモード:medium と xhigh

推論モードについても、少し変わった特徴があります。

  • 従来どおりの medium(標準的な思考量)
  • さらに深く長く考える xhigh(Extra High) モード

の2段階が用意されていて、

  • 日常的なコーディング:medium推奨
  • 「絶対に落としたくない重要なバグ修正」「複雑なアルゴリズム設計」など:xhigh

といった使い分けが想定されています。


3. GPT-5.1-Codex / GPT-5-Codexとの比較

ここからは、「前バージョン」との違いにフォーカスしますね。

3-1. アーキテクチャと学習方針の違い

大きな違いは次の3点です。

  1. 長期タスク前提のトレーニング

    • GPT-5-CodexやGPT-5.1-Codexもエージェント的なタスクはこなせますが、
      「複数のコンテキストウィンドウをまたいで動く」ことを前提にはしていませんでした。
    • 5.1-Codex-Maxは最初から「長時間・長コンテキストで動く」ことを前提に
      compaction込みで訓練されているのが大きな差です。
  2. Windows環境での学習

    • 5.1-Codex-Maxは、OpenAIのCodex系として初めて
      Windows環境操作を前提としたタスクも取り込んで学習しています。
    • 企業ではまだまだWindows開発環境が多いので、ここはかなり実用的な改善です。
  3. Codex CLIとの協調最適化

    • Codex CLI内でのやりとり(ツール呼び出し・対話レスポンス)を
      よりスムーズにするようなタスクが追加学習されています。

3-2. ベンチマークとトークン効率

ベンチマーク周りを少し整理します。

  • GPT-5-Codex
    • SWE-bench Verified 74.5%(OpenAI発表)
  • GPT-5.1-Codex
    • 公開値は限定的ですが、おおむね同等〜やや改善(70台前半)と報じられています。
  • GPT-5.1-Codex-Max
    • SWE-bench Verified 77.9%(同条件で5.1-Codexの73.7%から+4.2pt)
    • medium reasoningで、5.1-Codexより思考トークン30%削減

実務的には、

  • 同じレベルのバグ修正・PR作成なら、
    「5.1-Codex-Maxの方が少ないトークンで最終的に通る可能性が高い」
  • レイテンシを許容できるタスクなら、
    xhighモードでさらに精度を押し上げる余地がある

とイメージしておくと良いと思います。

3-3. 実務で感じそうな違い

実際にエンジニア目線で見たときに、
「5.1-Codexと5.1-Codex-Maxでどこが変わる?」を整理すると:

  • リポジトリ全体にまたがる大規模リファクタ
    • 以前は「途中でコンテキストが切れて話が迷子になる」ことが多かった
    • → compactionのおかげで、長時間回しても“記憶喪失”が起きにくい
  • 長時間のエージェントループ
    • テスト→失敗箇所特定→修正→再テスト…を何十回も繰り返すタスク
    • → 途中で文脈が壊れるリスクが減り、“最後までやりきってくれる”率が上がる
  • コスト
    • 同じmedium設定で、5.1-Codexよりトークン30%削減
    • → 長時間タスクほど、月額コストに効いてくる

「ふつうにチャットでちょっとコードを書く」程度なら差は小さいですが、
本番に近い開発フローをCodexに乗せたいチームほど、Max版の恩恵が大きいイメージです。


4. Gemini 3・Claudeとの比較(コーディングに絞って)

ここからは、他の有力モデルとの比較です。
特に、SWE-bench Verifiedを軸に見ていきますね。

4-1. ざっくりスコア比較

公開されている代表的な値を、コーディング用ベンチに限定してまとめると:

  • GPT-5.1-Codex-Max
    • SWE-bench Verified:77.9%(Diamond設定、5.1-Codexの73.7%から向上)
  • Gemini 3 Pro
    • SWE-bench Verified:76.2%(公式ブログ/ドキュメント)
  • Claude Sonnet 4
    • SWE-bench:72.7%(Anthropic公式)
  • Claude 3.7 Sonnet
    • SWE-bench Verified:62.3%(カスタムスキャフォールド込みで70.3%)

もちろん、評価条件(エージェントの設定・ツール利用など)が完全に同一ではないため、
「だいたいの傾向」として見るのが安全です。

ざっくり言えば、

・トップクラスのコーディング能力は
  GPT-5.1-Codex-Max ≒ Gemini 3 Pro(Deep Think含む)
 その少し下に Claude Sonnet 4
 さらに1世代前として Claude 3.7 Sonnet / GPT-5-Codex など

というイメージです。

4-2. GPT-5.1-Codex-Max vs Gemini 3 Pro

共通点

  • どちらも「エージェント型コーディング」を前提に設計されている
  • 長時間タスクへの対応
  • 既存のCLI/IDE/クラウド環境と統合されている

違いとして見えてくる点

  1. プラットフォーム統合の方向性

    • GPT-5.1-Codex-Max
      • Codex CLI/VS Code拡張/各種IDE+クラウド実行環境など、
        OpenAIと提携ツールを中心に統合が進んでいます。
    • Gemini 3 Pro
      • Gemini CLI/Gemini Code Assist/Antigravity(AIファーストな開発プラットフォーム)など、
        Googleエコシステムに深く統合。
        GCP/Vertex AI/Google Workspaceとの相性がとても良いです。
  2. マルチモーダルと「vibe coding」

    • Gemini 3は、UIデザインやスクリーンショットからのUIコーディング、
      画像・動画の理解など「ビジュアル寄りのコーディング」にかなり強い印象です。
    • GPT-5.1-Codex-MaxもフロントエンドやUI生成は得意ですが、
      モデルとしては**「ソフトウェア工学・長期タスク」によりフォーカス**している印象です。
  3. 長時間エージェントのチューニング思想

    • GPT-5.1-Codex-Max:
      コンパクションで複数コンテキストをまたいでタスク完遂する方向。
    • Gemini 3:
      Deep Thinkモードを含め、1コンテキスト内での深い推論+CLI/ツール統合という印象。

ざっくり使い分け

  • Google Cloud前提/社内がGoogle Workspaceで固まっている
    Gemini 3 Pro中心で考えると自然
  • OpenAIスタック(ChatGPT/Codex)をすでに使っている
    GPT-5.1-Codex-Maxへアップグレードするのが筋
  • ベンチマーク的には「ほぼ同格〜誤差レベル」で戦っているので、
    エコシステムと運用のしやすさで決めるのがおすすめです。

4-3. GPT-5.1-Codex-Max vs Claude(3.7/4)

Claudeシリーズは、

  • 自然言語の読みやすさ
  • 指示の守り方(spec adherence)
  • 一般的な推論力

でとても評価が高いです。

コーディング面では:

  • Claude 3.7 Sonnet:SWE-bench Verified 62.3%(Scaffold込み70.3%)
  • Claude Sonnet 4:SWE-bench 72.7%(公式)

となっていて、
特にSonnet 4はかなり高水準ですが、
GPT-5.1-Codex-MaxやGemini 3 Proと比べると、
エージェント型コーディング特化モデルとしては一歩劣る位置づけです。

ただし、Claudeが強いのは:

  • 長い仕様書・議事録・設計ドキュメントを読み込ませて
    仕様整理やレビューをしてもらう
  • PRテンプレートや設計ドキュメントをとても自然で読みやすい日本語/英語で書かせる
  • コードレビューのコメントを、丁寧で優しいトーンに整えてもらう

といった「コーディング周辺のコミュニケーション・ドキュメント仕事」です。

ですので、

  • 純粋なエージェントコーディング:GPT-5.1-Codex-Max or Gemini 3
  • 設計書・レビューコメント・仕様整理:Claude Sonnet 4

のように、役割分担して併用するチームも増えてくると思います。


5. 実務での使い分けシナリオ

ここからは、「じゃあ実際にどう使うの?」を、
具体的なパターンでいくつかご紹介しますね。

5-1. 既存モノリシックなWebサービスの大規模リファクタ

  • 既存Rails / Laravel / Springなどの巨大モノリシックアプリ
  • テストはそこそこあるが、
    DBスキーマやサービスクラスがスパゲッティ化している状態

おすすめ構成

  • コード改修の主役:GPT-5.1-Codex-Max(Codex CLI+IDE拡張)
    • リポジトリ全体を読み込ませ、
      パッケージ分割・モジュール化・共通化などを複数日にわたって進めさせる
  • 設計レビュー・リファクタ方針の相談:Claude Sonnet 4
    • 「こういう方針で分割したいけど、アーキテクチャ上のリスクは?」
    • 「この図式をドキュメントにまとめて」など

コンパクション込みの長期タスクは、
やはりGPT-5.1-Codex-Maxの得意分野です。

5-2. 新規のUI重視プロダクト(モバイル/Web)のゼロイチ開発

  • まだコードは薄いが、UI/UXが重要な新規サービス
  • Figmaやデザインシステムと連携しながら、
    UIコンポーネントをサクサク量産したいケース

おすすめ構成

  • UIプロトタイプ生成&vibe coding:Gemini 3 Pro(Gemini Code Assist/Stitch/Antigravity)
  • バックエンドの設計・実装/CI整備:GPT-5.1-Codex-Max or GPT-5.1-Codex
  • 仕様書・要件定義の文章化:Claude Sonnet 4

Gemini 3の「vibe coding」(テキスト+画像からUIを生成)は、
UIファーストなプロダクトでかなり強力です。

5-3. 中小チームでの「なんでも屋」AIコーディング

  • スタートアップや中小開発会社で、
    「1〜2人がフルスタックを全部見る」ような状況
  • そんなに複雑なエージェントフローは組まず、
    チャットUI+ちょっとした自動修正・PR作成から始めたい

おすすめ構成

  • まずは
    • ChatGPT(GPT-5.1+Codex統合環境) or
    • Gemini 3 Pro(Gemini Advanced/Code Assist)
      のどちらかをメインに選ぶ
  • 徐々に
    • Pull Requestの自動作成
    • 自動コードレビュー
    • IDE拡張による自動補完・テスト修正
      を追加していく

「Codexにどっぷり」か「Geminiにどっぷり」かは、

  • 既存のクラウド基盤(GCPかどうか)
  • チームの好み
  • 料金・上限

などで決めてしまって大丈夫です。


6. 料金・提供形態のざっくり整理

6-1. GPT-5.1-Codex-Max

  • 提供面:
    • ChatGPT Plus / Pro / Business / Edu / Enterpriseプランのユーザー向けに、
      Codex内で利用可能(Maxがデフォルトモデルに)
    • Codex CLIユーザー向けAPIは「近日提供予定」
  • 料金:
    • ChatGPTの各プラン料金に含まれる形(詳細はプランによる従量制)

※正確なトークン単価は、公式ドキュメント側で随時更新されるため、
実際に導入される際は最新の価格表を必ず確認してください。

6-2. Gemini 3 Pro

  • Google AI Studio/Vertex AI/Gemini Advancedなど複数の経路で提供
  • Gemini Code AssistやGemini CLIは、
    個人向けはかなり太っ腹な無料枠があるのが特徴です。

6-3. Claude Sonnet 4

  • Claude Pro/Claude for Work/API経由で利用
  • 従来どおり、入力・出力トークン別の従量課金+月額という構成です。

7. どのモデルを選ぶべき?簡易フローチャート

最後に、「うちの場合はどれを軸にすべき?」を
ざっくり整理して終わりにしますね。

7-1. 軸となる質問

  1. クラウド・エコシステムは何を使っていますか?

    • ほぼGCP+Google Workspace → Gemini 3 Pro中心で検討
    • 既にChatGPT Enterprise / Businessを導入 → GPT-5.1-Codex-Maxを軸に
    • まだ決めていない/小規模 → 無料枠を活用しながら両方テスト
  2. 主な用途は?

    • 大規模リポジトリの長期リファクタ・長時間デバッグ
      → GPT-5.1-Codex-Max(コンパクション+xhighが強み)
    • UI/UX重視のWeb・モバイルアプリのゼロイチ
      → Gemini 3 Pro(vibe coding+Stitch+Code Assist)
    • 仕様書作成・設計レビュー・法務寄り文書なども大量に書かせたい
      → Claude Sonnet 4を「文章係」として併用
  3. チームの成熟度は?

    • エージェント設計をゴリゴリ組める
      → SWE-bench級のタスクを狙って、GPT-5.1-Codex-Max or Gemini 3 Proで本格構築
    • まずはチャットUI+簡単な自動PRから
      → どちらを選んでも大差はないので、
      料金/UI/組織の好みで決めてしまってOKです。

8. まとめ:GPT-5.1-Codex-Maxは「長時間・本番寄りの開発」を任せられる一歩

最後に、ポイントだけぎゅっとまとめると:

  • GPT-5.1-Codex-Maxは、
    長時間・長コンテキスト前提のエージェント型コーディングモデル
    • コンパクションで複数コンテキストをまたぎ、
      数百万トークン規模のタスクを24時間以上動かせる
  • SWE-bench Verifiedなどのベンチでは、
    GPT-5.1-Codexより高精度かつトークン30%削減という結果が報告されており、
    「強くて安い」方向に進化している
  • Gemini 3 Proは、同レベルのコーディング性能に加えて
    UI寄り・マルチモーダル・Googleエコシステム連携が強み
  • Claude Sonnet 4は、
    コーディングもかなり強いものの、
    特に仕様整理・ドキュメント・レビューコメントなど「周辺業務」で光る

ですので、

「がっつりエージェントで開発フローを組んでいきたい」
→ GPT-5.1-Codex-Max or Gemini 3 Pro

「人間が読む文章の質も重視したい」
→ 上記にClaude Sonnet 4を足して三刀流

というイメージで考えていただくと、
現状の選択肢をうまく整理できるかなと思います。

投稿者 greeden

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)