合成着色料・酸化チタン・BHA/BHT・BVOは本当に危険?
世界の規制・健康リスク・代替成分をやさしく徹底解説
この記事でお伝えしたいこと
前回はアスパルテームについて詳しくお話ししましたので、
今回は「体に悪いと言われやすいその他の代表的な添加物」を、世界基準の視点からじっくり見ていきます。
この記事で詳しく扱うのは、次の4つです。
- 合成着色料(Red 3・Red 40・Yellow 5/6 など)
- 酸化チタン(二酸化チタン・E171)
- BHA・BHT(合成酸化防止剤)
- BVO(臭素化植物油)
それぞれについて、
- 何のために使われているのか(役割)
- なぜ「体に悪い」と言われるのか(毒性・研究結果)
- ガンや子どもの多動、ホルモン異常など病気との関係
- アメリカ・EU・日本・中国の規制の違い
- 日常生活でできる現実的な対策と、代替成分の具体例
を、できるだけ専門用語をかみ砕きながら解説していきます。
特にこんな方に役立つ内容です。
- 小さなお子さんにおやつやジュースを選ぶ保護者の方
- ダイエット中で加工食品やお菓子をよく利用する方
- 食品メーカー・外食チェーン・給食事業などの商品設計に関わる方
- 「EUでは禁止なのに、どうして日本ではOKなの?」とモヤっとしている方
不安をあおるのではなく、「どの程度のリスクがあって、どう選べば安心度が上がるのか」を、
世界の情報をもとに冷静に整理していきますね。
1. 世界共通の“ものさし”と国ごとの考え方のクセ
1-1. 基本はJECFAの評価がベース
食品添加物は、国際的には FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議(JECFA)が毒性データを評価し、
- 動物実験
- 人での観察研究
- 代謝や遺伝毒性に関する基礎研究
などを総合して、「一生涯とり続けても健康に影響が出ないと考えられる量(ADI:許容一日摂取量)」を決めます。
各国(アメリカのFDA、EUのEFSA、日本の厚生労働省、中国の国家衛生健康委員会など)は、この国際評価を参照しながら自国の規制を整えています。
1-2. EU・アメリカ・日本・中国のざっくりした「性格」
-
EU
- 「疑わしきは使わない」という予防原則を大事にしがち
- 酸化チタン(E171)やBVOなど、危険性を完全に否定できない物質は比較的早く禁止へ動く傾向があります。
-
アメリカ(連邦レベル)
- 「現時点の摂取量ならリスクは許容範囲」と判断される限り継続使用
- 近年はBVOやRed 3など、長年問題視されていたものをやっと禁止・段階的廃止する流れが強くなっています。
-
日本
- 国際評価と国内データをもとに、「安全性が確認できる範囲で使用を認める」スタイル
- EUほど急激に禁止にはしませんが、企業側が自主的に「無添加」「合成保存料・着色料不使用」へ切り替える動きが広がっています。
-
中国
- GB 2760 という統一的な国家標準で、使える添加物・用途・最大量を細かく規定
- 国民の健康意識の高まりとともに、一部添加物の規制強化や見直しも進んでいます。
こうした「国の性格」を知っておくと、
「EUで禁止=即危険」「日本でOK=完全安全」という単純な話ではないことが見えてきます。
2. 合成着色料:子どもの多動・行動への影響が特に注目
2-1. どんなもの?どこに入っている?
合成着色料は、石油などを原料に化学的に合成された色素で、
食品の見た目を鮮やかにしたり、均一な色に整えたりするために使われます。
よく話題になるものとして、
- Red 3(赤色3号)
- Red 40
- Yellow 5(タートラジン)
- Yellow 6
- Blue 1 / Blue 2 など
が挙げられます。
カラフルなキャンディやグミ、シリアル、色の濃い炭酸飲料、アイス、ゼリーなどに使われることが多いです。
2-2. なぜ「体に悪い」と言われるの?
主に次の2つの観点から問題視されています。
-
発がん性の可能性
- Red 3は動物実験で甲状腺腫瘍のリスク上昇が報告されており、アメリカFDA自身も「発がん性がある」と判断していました。
- その割に長年食品では使われ続けてきたため、2025年になってようやく、**食品・飲料・経口薬・サプリでの使用禁止(2027〜2028年施行)**という方向になりました。
-
子どもの多動性・注意力への影響
- 合成着色料(特にRed 40やYellow 5/6)を含む飲料やお菓子が、
子どもの多動性やADHD様症状を悪化させる可能性があるという臨床試験やレビュー論文が増えています。
- 合成着色料(特にRed 40やYellow 5/6)を含む飲料やお菓子が、
証拠としては、
- 全ての子どもに一律で強い影響が出る、というレベルではない
- しかし感受性の高い子どもでは、行動面の変化が見られることがある
という「一部の子どもには影響しうる」という評価になっています。
2-3. 病気との関係性
-
行動・神経発達
- ADHDや多動・衝動性の症状の悪化
- 集中力の低下
EUの科学委員会は、合成着色料と子どもの行動変化の関連を完全には否定できないとして、
一部色素に「子どもの活動や注意に悪影響を及ぼす可能性がある」との注意表示を義務付けています。
-
アレルギー
- じんましん、喘息様症状、皮膚症状などを訴える人もいますが、頻度は高くなく、体質による部分が大きいと考えられています。
-
ガン
- Red 3 のように動物実験で発がん性が確認されたものもありますが、
人での明確な因果関係は証明されていません。
それでも「高用量動物実験で腫瘍が増えた化学物質を、わざわざ食品に使う必要はあるのか?」という観点から、禁止に踏み切る国・地域が増えています。
- Red 3 のように動物実験で発がん性が確認されたものもありますが、
2-4. アメリカ・EU・日本・中国の規制の違い
-
アメリカ(連邦)
- 多くの合成着色料は使用が認められてきましたが、
- Red 3 は2025年に食品等での使用禁止が決定、2027年以降段階的に市場から消えていく見込みです。
- FDAはさらに複数の合成色素について、今後の段階的フェーズアウトを検討中です。
- 多くの合成着色料は使用が認められてきましたが、
-
アメリカ(州レベル)
- カリフォルニア州は、Red 3・BVO・プロピルパラベンなどを2027年から州内の食品で禁止する法律を通過させました。
- さらに、学校給食での合成着色料(Red 40、Yellow 5/6、Blue 1/2 など)を禁止する法案AB2316も進んでおり、他州への波及が注目されています。
-
EU
- 多くの合成色素は使用可ですが、
- 一部の色素には「子どもの活動と注意に悪影響を及ぼす可能性」の警告表示義務
- 使用上限や用途の制限も厳しめ
- 結果として、多くのメーカーが自主的に天然着色料へ切り替えています。
- 多くの合成色素は使用可ですが、
-
日本
- 赤色◯号・青色◯号などのタール系色素も含め、使用は認められていますが、
食品の種類ごとに使用量や用途が厳密に規定されています。 - 一方で、大手メーカーの多くは「合成着色料不使用」「天然由来色素のみ使用」など、マーケティング的な理由も含め自主的な削減を進めています。
- 赤色◯号・青色◯号などのタール系色素も含め、使用は認められていますが、
-
中国
- GB 2760にもとづき、多くの合成着色料が使用可能ですが、
近年、子どもの健康への配慮や輸出先のEU基準に合わせて、
大手企業ほど天然色素や無着色へのシフトが進んでいます。
- GB 2760にもとづき、多くの合成着色料が使用可能ですが、
2-5. 天然色素への置き換えと、賢い選び方
よく使われる天然系の色素には、
- ビートレッド(赤)
- ベニコウジ・コチニール(赤〜ピンク)
- クチナシ色素(黄・青・緑)
- パプリカ・カロテノイド類(黄〜オレンジ)
などがあります。
買い物の際は、原材料欄で
- 「赤色◯号」「黄色◯号」など番号付き → 合成色素
- 「ビートレッド」「パプリカ色素」「クチナシ色素」など原料名 → 天然系
とざっくり見分けて、
特に子ども用のおやつや毎日食べるものは、合成着色料の種類と量が少ないものを選んであげると、安心度が少し高まります。
3. 酸化チタン(E171):EUでは全面禁止、日本では継続使用のワケ
3-1. 何のための添加物?
酸化チタン(二酸化チタン、TiO₂・E171)は、食品を「真っ白に・均一に・ツヤ良く」見せるための白色着色料です。
- ガム・キャンディ(白いコーティング)
- ホワイトチョコ風のお菓子
- 一部のソースや焼き菓子
- サプリメント・医薬品の錠剤コーティング
などに使われてきました。
3-2. なぜEUは「安全とは言えない」と判断したのか
2021年、EUの食品安全機関EFSAは、
酸化チタンの食品用途について再評価を行い、
- DNAを傷つける「遺伝毒性」の可能性を完全には否定できない
- 一部ナノサイズの粒子が体内に長く残る恐れがある
と結論づけました。
その結果、「安全とはみなせない」として、2022年8月以降、EU域内では食品添加物として全面禁止になりました。
3-3. 病気との関係性:DNA損傷・炎症・発がん性の懸念
-
細胞実験や動物実験では、
- DNA損傷(遺伝子へのダメージ)
- 免疫細胞の活性化や炎症
- 大腸や肝臓での腫瘍リスク増加
などが報告されています。
-
2025年には、母乳・粉ミルク・牛乳などに酸化チタン粒子が広く検出されたという研究も発表され、
体内に取り込まれた粒子が乳腺を通過し得る可能性が示唆されています。
人での大規模長期研究はまだ限られていますが、
「ナノ粒子が体内各所に蓄積し、長期的にどのような影響を与えるか」が、いま世界的な研究テーマになっています。
3-4. 各国の規制
-
EU・スイスなど
- 2022年8月以降、食品添加物としての酸化チタンを全面禁止。
- 医薬品コーティングへの使用は、一部条件付きで継続中ですが、代替物質への移行が議論されています。
-
アメリカ
- FDAは「特定の条件下での使用は安全」として、食品への使用を引き続き認めています。
- 一方で、カリフォルニア州などでは学校給食での使用禁止を目指す法案が提出されるなど、州レベルでは規制強化の動きが出ています。
-
日本
- 厚生労働省は、国内で流通している酸化チタンの粒子径や使用量を調査し、
「現行の使用基準の範囲なら、安全性に問題はない」と評価して、使用を継続しています。
- 厚生労働省は、国内で流通している酸化チタンの粒子径や使用量を調査し、
-
中国
- GB 2760 に基づき、食品用白色着色料として使用を認めていますが、
EUの動向を踏まえ、今後見直しが行われる可能性はあります。
- GB 2760 に基づき、食品用白色着色料として使用を認めていますが、
3-5. 代替成分と、私たちにできる工夫
酸化チタンの役割は「真っ白にすること」なので、代替としては、
- 炭酸カルシウム(カルシウムカーボネート)
- デンプン系のコーティング
- 食物繊維やセルロース系の白色化
- 「あえて真っ白にしない」デザイン(生地の色を活かす)
などが使われています。
日常生活でできる対策としては、
- 真っ白・ツヤツヤの錠剤やガムを毎日大量にとらない
- サプリメントは、コーティング剤がシンプルなもの(酸化チタン不使用)を選ぶ
- 子どものお菓子は「白い光沢コーティング」のものを頻度少なめにする
といった「頻度と量」のコントロールが現実的です。
4. BHA・BHT:油脂を守る酸化防止剤とガン・ホルモン撹乱の懸念
4-1. どんな添加物?どこに入っている?
BHA(ブチルヒドロキシアニソール)とBHT(ブチルヒドロキシトルエン)は、
油脂が酸化してしまうのを防ぐための合成酸化防止剤です。
- シリアル・スナック菓子
- インスタント麺・スープの素
- 一部の即席食品・冷凍食品
- ガムや加工油脂
などに使われることがあります。
4-2. なぜ「危険」と言われるのか
主な理由は次の2つです。
-
動物実験での発がん性
- 高用量投与で、胃・肝臓などの腫瘍が増加した報告がある
- これを受けて、一部の国や機関はBHA/BHTを「発がん性の可能性あり」と分類しています。
-
内分泌かく乱物質の疑い
- ホルモン様作用(特にエストロゲン様作用)や甲状腺への影響を示唆する実験結果があり、
生殖機能や発達への長期的影響が懸念されています。
- ホルモン様作用(特にエストロゲン様作用)や甲状腺への影響を示唆する実験結果があり、
人での因果関係はまだ明確ではありませんが、
「他にも酸化防止の手段がある中で、わざわざリスクの疑いがあるものを使う必要があるのか?」という議論が強まっています。
4-3. 病気との関係性
-
ガン
- 大量投与の動物実験で複数の臓器の腫瘍リスクが増えた報告があります。
- ただし、日常的な摂取量は実験の何十分〜何百分の一であり、
「通常の摂取レベルでガンリスクがどの程度上がるか」は、明確なデータがありません。
-
ホルモン・生殖機能
- 一部研究で、生殖器官の発達遅延や精子数への影響などが報告されていますが、
同様に高用量での結果が多く、ヒトへの適用には慎重な解釈が必要です。
- 一部研究で、生殖器官の発達遅延や精子数への影響などが報告されていますが、
-
免疫・炎症
- 免疫細胞への影響や酸化ストレス増加が指摘されており、
アレルギーや慢性炎症との関連も研究が進められています。
- 免疫細胞への影響や酸化ストレス増加が指摘されており、
4-4. 各国の規制状況
-
EU
- 規則(EC)No 1333/2008 に基づき、
- 使用できる食品の種類
- 最大使用量
が詳しく決められており、特に乳児用食品などでは使用禁止。
- 規則(EC)No 1333/2008 に基づき、
-
アメリカ
- 連邦レベルでは、依然として食品添加物としての使用を認めていますが、
- カリフォルニアなど一部の州では、BHAを含む添加物の禁止法案が相次いで提出されており、
大手メーカーが自主的にBHA/BHTフリーへ切り替える動きも拡大しています。
-
日本
- 食品衛生法にもとづき、使用できる食品や上限量を定めた上で使用を認めています。
- ただし、ナチュラル系ブランドでは「BHA・BHT不使用」「ビタミンEで酸化防止」などへの切り替えが進んでいます。
-
中国
- GB 2760 により、使用可能な食品と上限値が規定されています。
- EU・輸出先の企業ニーズもあり、輸出向け商品ではBHA/BHTフリーへの切り替えも増えています。
4-5. 代替成分と選び方のポイント
代替としてよく使われるのは、
- 天然トコフェロール(ビタミンE)
- ローズマリー抽出物
- 緑茶抽出物
- ビタミンC(アスコルビン酸)
- 包装技術(窒素充填・遮光包装)による酸化防止
などです。
買い物のときは、原材料欄で
- 「酸化防止剤(BHA、BHT)」と書かれていないか
- 代わりに「酸化防止剤(ビタミンE)」「ローズマリー抽出物」などと書かれているか
を軽くチェックして、
特に毎日食べるスナックやシリアルは、合成酸化防止剤が少ないもの、あるいは不使用のものを選ぶと安心度が高まります。
5. BVO(臭素化植物油):世界的に「ほぼ終わりかけ」の添加物
5-1. どこに使われてきたの?
BVO(Brominated Vegetable Oil:臭素化植物油)は、
柑橘系フレーバーを均一に分散させるための乳化剤として、
- オレンジソーダ
- レモンライム系炭酸飲料
- 一部のスポーツドリンク
などに使われてきました。
5-2. なぜこんなに強く問題視されているのか
BVOには「臭素(ブロム)」という元素が含まれており、
体内に蓄積すると「ブロミズム」と呼ばれる中毒症状を引き起こします。
報告されている症状には、
- 記憶障害
- 神経症状(震え・協調運動障害)
- 皮膚障害
- 甲状腺機能異常
などがあり、BVOを多く含む飲料を長期に大量摂取していた人から、こうした中毒例が報告されています。
また、臭素は甲状腺ホルモンの代謝を乱す可能性が指摘されており、
内分泌かく乱物質の一種としても懸念されています。
5-3. 世界の規制状況:EU・日本は先に禁止、アメリカもついに追随
-
EU
- すでに2000年代後半から、食品添加物としてのBVO使用を認めていません(事実上の全面禁止)。
-
日本
- 2010年までに食品添加物としての利用を取りやめ、現在はBVOを含む食品は市場からほぼ姿を消しています。
-
中国
- GB 2760のリストにBVOが含まれておらず、食品用途での使用は認められていません(実質禁止)。
-
アメリカ
- かつてはごく低濃度での使用を認めていましたが、
- 2024年7月、FDAがついに「BVOの食品での使用を認可する規則を撤回する最終ルール」を公布。
- 発効日:2024年8月2日
- 企業が製品をリフォームする猶予期間:1年間(2025年8月2日まで)
- これにより、2025年〜2026年にかけて、アメリカ市場からもBVO入り飲料はほぼ消える見込みです。
つまりBVOは、世界的に見て「すでにほぼ終わりかけ」の添加物であり、
今後、新たにBVO入り製品に出会う可能性はかなり低くなっていくと考えられます。
5-4. 代替成分と私たちへの影響
BVOは「技術的に絶対必要」というものではなく、
- ショ糖脂肪酸エステル
- グリセリン脂肪酸エステル
- スクロースアセテートイソブチレート(SAIB)
- エステルガム など
に置き換えることで、同じような機能を実現できます。
私たち消費者としては、
- 海外旅行先で古い製品を見かけたら、念のため原材料に「Brominated Vegetable Oil」「BVO」の表記がないかチェック
- 子どもには、BVOの有無にかかわらず、柑橘系の色付き炭酸飲料自体を「毎日」飲ませない
といった点を意識しておけば十分です。
6. 4つの添加物の世界規制をざっくり比較
細かい例外はありますが、2025年時点のおおまかな状況を、イメージしやすいように表で整理します。
| 添加物 | アメリカ(連邦) | EU | 日本 | 中国 |
|---|---|---|---|---|
| 合成着色料(Red 3など) | 多くは使用可。Red 3は2027年以降禁止予定。州レベルで追加規制も進行中 | 使用可だが一部に注意表示・使用制限。代替として天然色素へのシフトが進む | 使用可(用途・量を規格で制限)。企業の自主的削減あり | 使用可(GB 2760で用途と上限を規定) |
| 酸化チタン(E171) | 使用可。禁止を求める声が強まりつつあるが、現状は容認 | 2022年8月以降、食品添加物として全面禁止 | 使用可(国内データに基づき安全と評価) | 使用可(GB 2760で管理。今後見直しの可能性) |
| BHA/BHT | 使用可だが、州法や消費者圧力でBHA/BHTフリー商品が増加 | 厳格な使用制限。乳児用などは使用禁止 | 使用可(使用食品と上限を規格で制限) | 使用可(GB 2760に従い管理) |
| BVO | 2024年の最終ルールで食品用途を全面禁止(2025年8月までに市場から撤退) | すでに禁止済み | 2010年までに禁止 | GB 2760に記載なし(実質禁止) |
この表からわかるのは、
- BVOのように「世界的にほぼ合意で使わない方向」のもの
- 酸化チタンのように「EUは禁止、日本・アメリカ・中国は継続」という評価の割れるもの
- 合成着色料やBHA/BHTのように、「完全禁止ではないが、制限や自主的削減が進むもの」
など、同じ「体に悪いと言われる添加物」でも立ち位置が微妙に違う、という点です。
7. 日常生活での「現実的なリスクコントロール」
ここからは、特に一般の生活者・保護者の方の視点で、
無理なく取り入れられる“付き合い方のコツ”をまとめます。
7-1. 「ゼロにする」より「頻度と量を下げる」
完全に避けようとすると、
- 外食や旅行でストレスがたまる
- 食事自体がつらく感じる
など、逆に不健康になってしまうこともあります。
おすすめは、
- 毎日ではなく「たまにのお楽しみ」にする
- 1日2〜3回とっていたものを、1回にしてみる
- 子どものおやつは、1日1〜2回まで+できるだけシンプルなものにする
という「頻度と量をコントロールする」発想です。
7-2. 原材料表示を“ながめるだけ習慣”にする
いきなり全部を理解しようとしなくても、
- 「赤色◯号」「黄色◯号」など番号付き色素が多く並んでいないか
- 「酸化チタン」「二酸化チタン」の表記があるか
- 「酸化防止剤(BHA、BHT)」と書かれていないか
- 「Brominated Vegetable Oil」「BVO」の表記がないか(今後はほぼ見なくなります)
などを、さっと眺めるだけでも、意識はだいぶ変わります。
「今日は合成着色料が多めだったから、明日はシンプルなものにしよう」
といった自己調整ができるようになると、とても心強いです。
7-3. 同じジャンルの中で“少しマシ”な選択を
完全にやめるのではなく、「同じカテゴリの中で、添加物が少ないもの」へスライドするイメージです。
- 炭酸飲料
- A社のカラフルなソーダ → 無色透明のレモン炭酸 or 無糖炭酸+レモン
- スナック菓子
- 合成着色料+BHA入りのカラフルスナック → シンプルなポテトチップス(材料がじゃがいも・油・塩だけのもの)
- 子どものラムネ・グミ
- 蛍光色のグミ → フルーツ由来色素のグミ or 果汁100%ゼリー
など、「原材料欄が短くて読めるもの」を一本の目安にしていただくと選びやすいです。
7-4. 特に気をつけたい人
-
妊婦さん・授乳中の方
→ 母乳や胎児への影響が完全にわかっていない添加物(酸化チタンなど)は、毎日大量にとらない方が安心です。 -
小さな子ども
→ 体重あたりの摂取量が大人より多くなりがち。合成着色料やBHA/BHT入りのお菓子は「たまに」に。 -
すでに心血管疾患・ホルモン異常などのリスクが高い方
→ BHA/BHTなどホルモン様作用が疑われるものや、糖質の多い超加工食品全般を控えめにしておくと、長い目で見て安心度が上がります。
8. 食品メーカー・外食産業・給食関係の方へのヒント
もしこの記事を読んでくださっている方の中に、商品開発やメニュー設計をされている方がいらっしゃれば、
少しだけ業界寄りの視点もお伝えしておきます。
-
規制は「EU→州法→アメリカ連邦→その他の国」という順で厳しくなるパターンが増えています
→ すでにEU・一部州で問題になっている添加物は、「いずれ世界的に見直されるかもしれない」と捉えておくと、長期的な開発戦略が立てやすくなります。 -
BVOやE171のように、「必須ではない審美的な添加物」は真っ先に代替・削減候補
→ 「白さ」「鮮やかさ」よりも「原料そのものの色」を活かすコンセプトへシフトすることで、クリーンラベルと両立できます。 -
合成着色料やBHA/BHTを減らすだけでも、「子どもに安心して食べさせられる」というイメージ向上に直結
→ パッケージに「合成着色料・合成酸化防止剤不使用」と明記することで、わかりやすい訴求が可能になります。
世界的に「超加工食品」への批判が強まる中で、
“安全だから使っていい”から一歩進んで、
“わざわざ使わなくてもいいものは減らす”という発想が、ブランド価値を高めてくれる時代になっています。
9. まとめ:恐れすぎず、でも「選ぶ目」を持っておく
最後に、今回の4つの添加物についてのポイントをぎゅっとまとめます。
-
合成着色料
- 子どもの多動性・行動への影響が特に懸念され、一部は発がん性の疑いも
- EUは注意表示や制限、アメリカもRed 3を禁止へ
- 天然色素や無着色の商品も増えているので、特に子ども用はそちらを優先すると安心度アップ
-
酸化チタン(E171)
- 真っ白な見た目のための白色着色料
- EUでは遺伝毒性の懸念から、2022年以降食品で全面禁止
- 日本・アメリカ・中国では使用継続中だが、毎日大量摂取しないよう意識すると安心
-
BHA・BHT
- 油脂の酸化を防ぐ合成酸化防止剤
- 動物実験で発がん性やホルモン撹乱の可能性が指摘され、EUでは特に厳しく制限
- 代わりにビタミンEやローズマリー抽出物などへの置き換えが増えている
-
BVO(臭素化植物油)
- 柑橘系飲料の乳化剤として使われてきたが、神経毒性・甲状腺異常などが問題に
- EU・日本・中国ではすでに禁止、アメリカも2024年の最終ルールで禁止を決定し、2025年以降市場からほぼ消える見込み
そして、私たちが心がけたいのは、
- 「完全ゼロ」を目指して神経質になるのではなく、
「頻度と量を意識しながら、シンプルな食品を少しずつ増やしていく」こと - 特に子ども・妊婦・持病のある方は、カラフルで甘く、添加物が多い“超加工食品”を
「毎日大量に」は摂らないようにすること
だと思っています。
添加物の名前を全部覚える必要はありません。
今日からできるのは、
- 原材料表示をちょっと気にしてみる
- 真っ白・蛍光色・やたらツヤツヤのものを「毎日」にしない
- 水・お茶・素材の味を楽しむ時間を少し増やしてみる
そんな小さな一歩で十分です。
この記事が、「なんとなく怖い」から一歩進んで、
「世界の情報を知ったうえで、落ち着いて選べる自分」になるお手伝いになればうれしいです。
参考文献・情報源(日本語・英語混在)
- European Commission – Re-evaluation of food additives
- SAFE – Titanium Dioxide (E171)
- Swissmedic – Use of titanium dioxide in medicinal products
- Le Monde – Titanium dioxide particles found in human and animal milk
- US FDA – Brominated Vegetable Oil (BVO)
- Federal Register – Revocation of authorization for use of BVO in food
- MSU Extension – FDA bans brominated vegetable oil from food
- California AB418 – Ban on Red 3, BVO, etc.
- DLA Piper – California bans Red Dye 3 and other additives
- CSPI – Red 3: FDA finally bans cancer-causing food dye
- Beveridge & Diamond – FDA post-market chemical review & Red 3
- Eurofins – Unpacking BHA, BHT, TBHQ in processed foods
- GoodRx – American food ingredients banned abroad
- UK FSA – Approved additives and E numbers
- RAPS – Impact of US state law initiatives for food ingredients
