GPT-Image-1.5 と Nano Banana Pro 徹底比較:生成品質・編集力・料金・選び方までやさしく解説
- 写真編集の「狙った変更だけ」を安定させたいなら:GPT-Image-1.5(構図・照明・人物の外見など“守るべき要素”を保った編集を重視)
- インフォグラフィックや文字入りデザインを“調べながら”作りたいなら:Nano Banana Pro(Google 検索のグラウンディングでリアルタイム情報の可視化にも対応)
- 解像度・参照画像・制作ワークフローの相性で決めるのが近道:Nano Banana Pro は 1K/2K/4K と参照画像最大14枚、GPT-Image-1.5 は ChatGPT の Images 体験と API の価格体系が特徴
まず結論:この比較で押さえるべき「軸」は4つです
GPT-Image-1.5 と Nano Banana Pro は、どちらも「画像を生成する」だけでなく、**既存画像を“意図どおりに編集する”**ところに価値があるモデルです。ただし、得意な方向性が少し違います。選ぶときは、次の4軸で考えると迷いにくいです。
1つめは編集の安定性。たとえば人物写真の服だけ変えたいのに顔つきや照明まで変わってしまう、といった“事故”をどこまで抑えられるか。2つめは文字表現(テキストレンダリング)。ポスターやメニュー、説明図の文字が読めるかどうかは、実務ではかなり重要です。3つめは解像度・参照画像・整合性。制作素材として使うなら 2K/4K 出力や、複数参照画像で一貫性を保てるかが効きます。4つめは料金と運用。個人の手作業中心か、API連携で大量生成するかで“効いてくるコスト”が変わります。
このあと、それぞれの公式仕様(提供形態・料金・機能)に基づいて、やさしく整理していきますね。
それぞれの正体:GPT-Image-1.5 と Nano Banana Pro は何者?
GPT-Image-1.5(OpenAI)
GPT-Image-1.5 は、OpenAI が ChatGPT の Images 体験を支えるフラッグシップの画像生成モデルとして公開しているものです。特徴として公式に示されているのは、アップロード画像の編集で「必要な要素を保ちながら、指示したところだけを変える」こと、そして最大4倍の高速化です。さらに、編集だけでなく、合成・変換などを含む幅広い編集操作に強く、テキストレンダリングも改善されたと説明されています。加えて、ChatGPT 側に画像生成用の新しい体験(Images 機能)が用意され、API 側では GPT Image 1.5 として利用できます。
Nano Banana Pro(Google / Gemini)
Nano Banana Pro は、Google が Gemini の画像生成・写真編集の枠組みで提供している高精度版の画像モデルで、モデルとしては Gemini 3 Pro Image(gemini-3-pro-image-preview)に対応します。Gemini の案内では、Nano Banana(高速モード)に対し、Nano Banana Pro は思考モードで、より正確な制御や高度なテキストレンダリング、世界知識の活用、写真の組み合わせ強化などが掲げられています。さらに開発者向けドキュメントでは、Google 検索を使ったグラウンディングや、最大14枚の参照画像を混ぜて最終画像を作るといった、制作現場寄りの機能も明記されています。
ここまでを一言でまとめるなら、GPT-Image-1.5 は「編集の忠実さと手触りの良い制作体験」、Nano Banana Pro は「検索グラウンディングや参照画像など“制作パイプライン”寄りの強さ」が軸になりやすい、という感じです。
比較①:編集の強さ(写真の“ここだけ変えたい”にどこまで応える?)
GPT-Image-1.5:守るものを守って、変えるものだけ変える
OpenAI は GPT-Image-1.5 の編集能力について、照明・構図・人物の外見などを一貫して保ちつつ、意図した変更を小さなディテールまで反映する、と説明しています。実務的に嬉しいのは、たとえば次のような場面です。
- EC用の商品写真で、背景だけを差し替えたい(商品色や陰影は維持したい)
- 人物の髪型・服装の試着イメージを作りたい(顔つきは変えたくない)
- 既存バナーのレイアウトを保ったまま、素材だけ差し替えたい
こうした用途では、「モデルが勝手に全体の雰囲気を変えない」ことが成果物の品質を左右します。GPT-Image-1.5 は、まさにそこを前面に出している印象です。
Nano Banana Pro:細部のコントロールと制作指示の複雑さに寄る
Gemini の案内では Nano Banana Pro は、照明・カメラアングル・アスペクト比などの編集コントロールがより正確になった、とされています。さらに Gemini の開発者向けドキュメントでは、複雑なワークフロー(複数ターンでの作成・修正)に強いことが明記されており、制作指示が長くなりがちな案件、たとえば「商品写真+説明図+注意書き+多言語」などの“要件の多いデザイン”で力が出やすい設計だと読み取れます。
どちらが上かというより、編集の方向性が少し違います。
- “写真を壊さずに最小限で変える”の安定感を重視するなら GPT-Image-1.5
- “要件が多い制作物を、推論込みで組み上げる”ほうに寄せたいなら Nano Banana Pro
この見立てが、判断の出発点として分かりやすいと思います。
比較②:文字入り画像(テキストレンダリング)とデザイン用途
文字入り画像は、生成AIが苦手になりやすいポイントです。読めない文字は、そのまま仕事で使えませんものね。
GPT-Image-1.5:小さく密度の高い文字まで改善
OpenAI は、GPT-Image-1.5 でテキストレンダリングがさらに改善し、より密度が高く小さなテキストも扱えると説明しています。例として、新聞紙面のように文章量が多いレイアウトを“画像として”再現するデモも示されています。つまり「ポスターの一言」だけでなく、情報量の多い紙面風・資料風のビジュアルにも手を伸ばしている、という方向性です。
Nano Banana Pro:インフォグラフィックや図表、メニューなど“実務の文字”に強い設計
Google は Nano Banana Pro(Gemini 3 Pro Image)について、インフォグラフィックや図表など情報の視覚化に向くこと、そして短文から長文までの文字を正確にレンダリングし、読みやすいテキスト入り画像を作るのに最適だと説明しています。さらに、Google 検索の知識ベースと連携して、天気やスポーツなどのリアルタイム情報を可視化できる例も挙げています。
文字表現だけでなく「何を可視化するか」まで含めて、Nano Banana Pro は“情報デザイン”に寄った思想が見えます。社内資料の図解、イベント案内、店頭POP、学習用のまとめ図など、説明するためのビジュアルを作りたい方には相性がよいはずです。
比較③:解像度・参照画像・一貫性(制作素材として使えるか)
Nano Banana Pro:1K/2K/4K と参照画像最大14枚が明記されている
Gemini 3 Pro Image(Nano Banana Pro)について、公式の開発者ドキュメントでは1K/2K/4K の高解像度出力ができることが明記されています。また、最大14枚の参照画像を混ぜて最終画像を作れる仕様があり、その内訳として「高忠実度で取り込むオブジェクト画像は最大6枚」「人物の一貫性維持のための人画像は最大5枚」といった、かなり具体的な目安まで書かれています。
この“参照画像の枚数と役割が明文化されている”のは、制作フローを組むうえで強いです。たとえば次のように使い分けができます。
- 既存の人物写真を複数入れて「同一人物の別カット」や「集合写真の合成」
- 商品写真の複数角度を参照させて、統一感あるキービジュアルを作る
- キャラクターの設定画+衣装+小物を複数参照して一貫性を保つ
GPT-Image-1.5:API価格体系と“編集を壊さない”思想が中心に語られている
GPT-Image-1.5 も画像入力・出力に対応し、ChatGPT 側ではアップロード画像の編集が前提の体験として整理されています。特に「要素を保つ編集」に強いことが繰り返し説明されており、参照画像を積み増して制作物を組み上げるというより、1枚(または少数)の元画像を丁寧に育てていくワークフローで力を出すタイプ、と捉えると理解しやすいです。
どちらも“素材制作”に使えますが、要件として
- 参照画像を大量に使って一貫性を担保したい → Nano Banana Pro
- 元画像の良さを保ったまま確実に編集したい → GPT-Image-1.5
という分岐が、とても実務的だと思います。
比較④:料金と運用(個人利用・チーム利用・API大量生成)
ここは「何をどれだけ作るか」で最適解が変わるので、公式に明記されている範囲で、読みやすく整理しますね。
GPT-Image-1.5(OpenAI API):トークン課金(テキスト・画像それぞれ)
OpenAI のモデルページでは、GPT-Image-1.5 の API 価格が テキストトークンと画像トークンに分かれて提示されています(入力・キャッシュ入力・出力)。具体的には、テキストは入力 $5/1M、キャッシュ入力 $1.25/1M、出力 $10/1M。画像は入力 $8/1M、キャッシュ入力 $2/1M、出力 $32/1M という形です。
大切なのは、1枚いくらという固定ではなく、プロンプト長・画像サイズ・出力条件などで変動する設計だということ。試作段階では、同じテーマで数回回して「どの程度トークンが増えるか」を観察してから、量産設計に移るのが安心です。
Nano Banana Pro(Gemini API):画像出力は“解像度で1枚あたり”が読みやすい
Google の Gemini API 料金ページでは、gemini-3-pro-image-preview(Nano Banana Pro Preview)について、画像出力がかなり分かりやすく示されています。標準(Standard)では、画像出力が 1K/2K で1枚 $0.134、4K で1枚 $0.24。さらに、画像出力トークンの目安として、1K/2K は 1120 トークン、4K は 2000 トークンと説明されています。加えて Batch では、1K/2K が $0.067、4K が $0.12と“半額寄り”の設定になっています。
また、画像入力についても「1枚あたり $0.0011 相当(560トークン)」という目安が明記されています。
このように、Nano Banana Pro は「解像度で1枚単価が見える」ため、**制作本数が読める案件(キャンペーンで何十枚、何百枚)**では見積もりが立てやすいのが魅力です。
ついでに:アプリ内の上限・自動切り替えも確認しておくと安心
Gemini の案内ページでは、Nano Banana Pro の上限に達した場合、自動的に Nano Banana(通常版)へ切り替わる旨が記載されています(ただし Nano Banana 側も上限に達すると利用不可)。個人や小規模チームで「まずアプリで試す」場合、この挙動を知っておくと、出力が急に変わったときに原因を切り分けやすいです。
どんな人にどちらが向く?(利用者像を具体的に)
ここは、読者の方がいちばん知りたいところだと思うので、少し丁寧にいきますね。あなたの立場に近いものを選んで読んでみてください。
GPT-Image-1.5 が向きやすい方
- SNS運用・広報:人物写真やイベント写真を“壊さずに”加工して、短納期で投稿素材を作りたい方。たとえば「背景だけ差し替え」「余計な写り込みだけ削除」「雰囲気は維持して季節感だけ足す」が多い職種に合います。
- EC担当・小規模事業者:商品写真の質感や照明が命で、編集で雰囲気を崩したくない方。試着イメージや色味の調整など、事故が怖い作業ほど効きます。
- デザイナー(試作段階):ラフ案やモックを、対話で素早く詰めたい方。ChatGPT の Images 体験で、アイデア→編集→再編集を回す運用と相性がよいです。
- 開発者(OpenAI基盤で統一したい):既に OpenAI のテキストモデルやワークフローを使っていて、画像も同じ基盤でまとめたい場合に導入が楽です。
Nano Banana Pro が向きやすい方
- 情報デザイン・教材制作:図解・インフォグラフィック・説明資料のビジュアルを作る方。検索グラウンディングでリアルタイム情報の可視化も想定されているため、「調べてまとめる」を画像でやりたい用途と馴染みます。
- ブランド運用・制作会社:参照画像を多く使って一貫性を担保し、複数ターンの修正を前提に量産する現場。最大14枚参照の仕様は、制作管理の設計に直結します。
- 開発者(解像度単価で見積もりたい):1K/2K/4K の 1枚単価が明確なので、広告バナー量産、商品カタログ的な生成などでコスト計算がしやすいです。
- 多言語展開の担当:Google は多言語のテキスト生成やローカライズの可能性にも触れており、複数言語の掲示物・説明図などを作る業務と相性がよいでしょう。
すぐ使えるプロンプト例(用途別サンプル)
「比較」だけだと抽象的になりやすいので、実際に投げやすいサンプルを置いておきます。どちらも、文章は短くても大丈夫です。大事なのは**守りたい条件(変えないもの)**を明確にすることです。
サンプルA:写真の“ここだけ”編集(GPT-Image-1.5向けの考え方)
- 目的:人物写真の背景差し替え+色味統一
- 例:
- 「背景を白いスタジオ背景に変更。人物の顔・髪型・服・照明の方向はそのまま。影は自然に残して。」
ポイントは「そのままにする要素」を先に書くことです。編集が複雑なほど、守る条件が“仕様”になります。
サンプルB:文字入りポスター(両方で試せる/Nano Banana Proが得意寄り)
- 目的:イベント告知ポスター(大きな文字+注意事項の小さな文字)
- 例:
- 「A4縦のポスター。上部に『冬の読書フェア』、中央に本のイラスト。下部に日時・場所・参加費を読みやすく。余白多めで、落ち着いた配色。」
文字量が多いときは、見出し・本文・注釈の“階層”を指定すると破綻しにくいです。
サンプルC:インフォグラフィック(Nano Banana Proの強みを活かす)
- 目的:手順説明を図解
- 例:
- 「4ステップの手順をインフォグラフィック化。各ステップに番号、アイコン、短い説明文。配色は2色、読みやすさ優先。」
Nano Banana Pro はインフォグラフィック用途を強く意識した説明がされているので、こうした“説明するための絵”はまず試す価値があります。
サンプルD:参照画像を使った一貫性(Nano Banana Proの仕様を活かす)
- 目的:同一人物の複数カットを同じ雰囲気で制作
- 例:
- 「この人物の参照画像を使って、同じ服装・同じ髪型で、正面・横顔・3/4 の3カットを作成。背景は白。照明は柔らかいスタジオ光。」
参照画像の枚数に余裕があるので、「人物+衣装+小物」など分解して参照させる設計もできます。
迷ったときの選び方チェックリスト(やさしく最短ルート)
最後に、現場で迷いやすいポイントを“質問”の形でまとめますね。上から順に答えると、自然に候補が絞れます。
- 元写真の雰囲気を絶対に崩したくない?
はい → GPT-Image-1.5 を優先 - インフォグラフィックや図表など“説明する画像”が多い?
はい → Nano Banana Pro を優先 - 4K出力の単価を見積もって量産する必要がある?
はい → Nano Banana Pro(4K 1枚単価が明記) - 参照画像を多数使って一貫性を担保したい?
はい → Nano Banana Pro(最大14枚の仕様が明記) - ChatGPT の中で対話しながら試作→修正を回したい?
はい → GPT-Image-1.5(Images 体験が用意)
どちらか一方に決め切らない運用も、もちろん現実的です。たとえば「情報図解は Nano Banana Pro、写真編集は GPT-Image-1.5」といった分業は、成果物の品質が上がりやすい“素直な使い方”だと思います。
まとめ:両者はライバルだけれど、強みの置き方が違います
GPT-Image-1.5 と Nano Banana Pro は、どちらも“実務で使える画像生成・編集”を強く意識したモデルです。ただ、GPT-Image-1.5 は編集で守るべき要素を保つことと、ChatGPT の Images 体験を含む制作の手触りに軸があり、Nano Banana Pro は 検索グラウンディング・参照画像・解像度単価など、制作パイプラインの設計に効く仕様が前に出ています。
もし今日から選ぶなら、あなたの作りたいものが
- “写真や既存素材の編集中心”なら GPT-Image-1.5
- “情報デザインや量産・参照画像活用中心”なら Nano Banana Pro
この整理でまず外しにくいはずです。必要なら、同じ題材で両方に3回ずつ投げて、**「事故の種類」と「修正のしやすさ」**を見比べると、あなたの現場に合う答えがきれいに出ますよ。
